出題校にインタビュー!
明治大学付属明治中学校
2018年07月掲載
明治大学付属明治中学校の社会におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。
1.小学生なりに「憲法改正問題」と向き合う
インタビュー1/3
小学6年生が抱く「憲法観」とは?
宮下先生 2017年は「日本国憲法施行70年」という大きな節目でした。憲法改正に賛成か反対か、国民の間でもさまざまな意見がありますが、受験生も他人事ではなく、自分に引きつけて考えてもらいたいと思いました。
受験生が取り組みやすいように「立場」を明らかにすることにしましたが、単に改憲に賛成か・反対かを聞いて、表面的な意見で終わらせたくはありませんでした。
戦争は多くの尊い人命を奪い去ります。日本国憲法は、「二度と戦争を起こさない」という固い決意をもって作られました。では、日本は日本国憲法の下、「平和な社会」を本当に実現してきたと言えるでしょうか。一方で、戦後、日本の世の中は大きく変わりましたが、時代が変わったからという理由で憲法を変える必要があるのでしょうか。
受験生がこれまでに学習した憲法の知識や見聞きしたニュースから、小学6年生の現段階でどのような「憲法観」を抱いているか、聞いてみることにしました。
社会科/宮下 崇先生
当事者意識を持って世の中の問題を考える
この問題は、貴校に入学するとどんなことを学ぶのかが見えてくるようです。
宮下先生 本校の社会科では、世の中で起こっている問題を自分の問題として引き受けられる、すなわち、当事者意識を持って考えられる力を育てたいと思っています。この問題はその入口でもあります。
リード文でも触れていますが、戦争については、「最大の人権侵害である」という観点でも教えています。「権利自由」は、1881年創立の明治大学の建学の精神です。その人権尊重の精神は、直系付属校の本校もしっかり受け継いでいるものだと思います。
護憲の立場の方が考えようとする意欲を感じた
受験生の解答状況はいかがでしたか。
宮下先生 どちらの立場を選んだかというと、Aの改憲の立場が多かったと思います。選んだ立場で得点率に差はありませんでした。
理由が書きやすいのはAだと思いますが、どちらかというと、Bの護憲の立場を選んだ受験生の方が「考えよう」という意欲を感じましたし、その先をもう少し聞いてみたいと思わせる解答がいくつかありました。
確かに、Bはしっかり考えないとまとまらず、自分の言葉で表現するのが難しそうです。
河村先生 この問題は最後の問題でした。無答や走り書きがあったのは、じっくりと考える時間が試験のなかでは足りなかったからかもしれません。入試の枠にとらわれず、明治中学校や他の中学校で、あるいは各ご家庭で、考えを深めてほしいと願っています。
明治大学付属明治中学校/校門
70年経つとどんな不都合が生じるか考えを巡らせる
この問題の評価のポイントを教えていただけますか。
宮下先生 重視したのは、選んだ立場の理由を具体的に書けているかどうかです。
Aの場合、単に「年数が経ったから」「古くなったから」では具体性がなく、ほとんど点数がつきません。年数が経つとどんな不都合が生じるのか、もう一歩踏み込んで考えてくれると、ある程度の点数をつけられます。
Aの理由としては、「新しい人権」(プライバシー権や知る権利・アクセス権など)や「自衛隊」に触れた解答が多く見られました。この2つについては、リード文や設問で触れているので、それらをヒントに考えたかもしれません。
「憲法は変えてはいけない」固定観念から抜け出す
宮下先生 Bの理由はというと、日本国憲法施行後、「平和が保たれている」「戦争を一度もやっていない」など、「平和」を挙げた意見が多かったです。
満点はつけられませんが、「新しい人権については法律を作ればよく、憲法を変える必要はない」という解答は、勉強したことを生かそうと憲法と法律の違いから考えたとわかります。
「憲法を変えてはいけない」というニュアンスしか伝わらず、なぜ変えてはいけないのかわからない解答には、点数はあまりあげられません。
憲法第96条(憲法改正の手続きについて定めた条項)を知っていれば、出てこないはずの理由ですね。
宮下先生 「今のままで十分だから」という答えも具体性がありません。もう一掘り、二掘りしてもらいたいところです。
理由が伴っていないと「意見」ではなく「感想」になってしまいます。しっかり考えないと説得力のある理由は出てきませんね。
明治大学付属明治中学校/図書館
インタビュー1/3