シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

今月の額面広告に掲載されている問題はこれだ!

明治大学付属明治中学校

2018年07月掲載

明治大学付属明治中学校【社会】

2018年 明治大学付属明治中学校入試問題より

次の憲法に関する文章を読んで、あとの問いに答えなさい。

2017年5月、日本国憲法は施行されてから一度も改正されることなく、70年という節目の年を迎えました。
(中略)
憲法を時代に合ったものに変えていくべきなのか、今の社会を憲法が目指すかたちに近付けるのか、最終的に判断するのは国民投票を行う国民ですから、関心を持ってニュースを読み解くことが大切です。

(問)下線部について、
(A)「憲法を時代に合ったものに変えていく」か、
(B)「今の社会を憲法が目指してきたかたちに近付ける」か、
あなたの考えはどちらの意見により近いですか。
(A)・(B)どちらかに○印を付け、その理由を説明しなさい。

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには各中学の「こんなチカラを持った子どもを育てたい」というメッセージが込められています。
では、この明治大学付属明治中学校の社会の入試問題には、どういうメッセージが込められていたのか、解答・解説と、日能研がこの問題を選んだ理由を見てみましょう。(出題意図とインタビューの公開日については更新情報をご確認ください。)

解答と解説

日能研による解答と解説

解答例

(A)「憲法を時代に合ったものに変えていく」に○を付けた場合
理由:今の憲法に「新しい人権」を明記することで、今まで以上に人々の権利を保障することにつながると思うから。

(B)「今の社会を憲法が目指してきたかたちに近付ける」に○を付けた場合
理由:今の憲法があることで、日本の平和や安全が保たれてきた側面があると思うから。

解説

(A)「憲法を時代に合ったものに変えていく」・(B)「今の社会を憲法が目指してきたかたちに近付ける」どちらの意見を選んでもかまいません。日本国憲法について学んできたことと日々の新聞やニュースで見聞きしたことなどを結びつけて、あなた自身(個人)が考えたことを、できるだけ具体的に書くことが大切です。

日能研がこの問題を選んだ理由

2017年は日本国憲法施行から70年という節目の年であったため、2018年度の中学入試問題全体では、大日本帝国憲法と比較した際の日本国憲法の特徴や、日本国憲法の条文内容(国民主権や基本的人権など)を問う問題など、「基本事項」を確認するものが多く見られました。そのような中で、明治大学付属明治中の問題は、憲法改正に対する意見として(A)「憲法を時代に合ったものに変えていく」と(B)「今の社会を憲法が目指してきたかたちに近付ける」の2つを提示し、子どもたちの考えがどちらの意見に近いかを問うという点で、これまでより一歩踏み込んだものとなっています。(A)と(B)の意見がていねいに提示されていることによって、子どもたちは、単純に憲法改正に賛成か反対かではなく、双方の立場がどのようなものなのかを明確にできるとともに、その背景には何があるのかも考えやすくなったのではないでしょうか。
また、学校の先生方が、入試問題を通して受験生に強いメッセージを発信していることも特筆すべき点だと考えます。問題文の最後にある「憲法を時代に合ったものに変えていくべきなのか、今の社会を憲法が目指すかたちに近付けるのか、最終的に判断するのは国民投票を行う国民ですから、関心を持ってニュースを読み解くことが大切です」という部分は、教科学習で得たことを「理解した/学んだ」で終わらせるのではなく、自分のこととして考える力をつけてほしいというメッセージでもあるでしょう。この、自分のこととして考える(≒当事者性)というのは、これからの子どもたちの学びを考える上で、ひとつのキーワードになっていくのではないでしょうか。

このような理由から、日能研ではこの問題を□○シリーズに選ぶことにいたしました。