出題校にインタビュー!
自修館中等教育学校
2018年07月掲載
自修館中等教育学校の算数におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。
1.算数は机上の学習ではない。実生活に役立てられている!
インタビュー1/3
割合に焦点を当てた
出題意図からお話いただけますか。
村田先生 算数の問題を作成するにあたり、「作業から発見する」ということをテーマに掲げており、学校説明会でもそのようにお伝えしています。その上で、入試の典型的な問題、実力で解ける問題というよりも、その場で問題文を読んで、考えて、解答を導き出す問題を毎年出しています。近年は実社会で役立つものを、ということで、「割合」に焦点を当てました。割合が苦手という受験生は少なくないのですが、実社会ではこういうふうに利用されているということを知ってもらい、興味をもってもらいたいというメッセージを込めて問題を作成しました。
数学科主任/村田 靖治先生
割合を視点に考えてほしかった
どのような解答が多かったですか。
村田先生 「回収量が減っても回収率が上がるのは、販売量が減ったから」という解答が多かったです。単純に販売量が減っただけでは、回収率が上がるとは言えない部分があります。算数の見方(割合)を問うているので、「回収量が減る割合よりも、販売量が減る割合のほうが大きかった」と答えてほしかったです。
「販売量が減ったから」という解答は、不正解になるのでしょうか。
村田先生 もう少し突っ込んでくれていれば部分点を上げられるのですが、今回は「販売量が減ったから」という答えだけでは不正解にしました。
この問題で満点を取った受験生は全体の約5%
満点をもらえた受験生はどのくらいいましたか。
村田先生 全体で5%くらいでした。こちらが求めている答えを書いてくれる受験生は少なかったです。「別解もあるのでは?」と考えましたし、解答に対してもそういう視点をもって採点しましたが、(別解は)見られなかったです。
この問題は最後の問題でしたので、時間が足りなかった受験生もいたと思います。無回答は3割程度でしたが、近年、書こうとする受験生が増えている気がしていて嬉しく思っています。計算問題は、何十万という単位でパーセントを計算しますので、難しいと感じて飛ばしていても、文章を書く問題にはなにかしら書こうという意欲を感じました。
自修館中等教育学校/教室
データに興味をもつ子がいると嬉しい
村田先生 この問題を作成するにあたり、「年々、販売量が減っています。それはなぜですか」という問題も出したいと考えました。売上が減っているわけではありません。最近のペットボトルは軽量化が進んでいて、“いろはす”のようなクシャッと手で簡単につぶせる容器が増えています。この表の販売量は重さなので、「容器が軽くなっているから」という答えになるのですが、科内で検討した結果、「算数の入試で世の中の流れを聞くのはどうか。趣旨が違うのではないか」ということで、今回は断念しました。
入試で聞くことはできなかったのですが、このデータを見てそういうところに疑問をもってくれる子がいたら嬉しいです。なぜなら、本校では開校当初から総合学習の一環として「探究」という授業を行っており、大きな特色として根付いているからです。1年次はグループで伊勢原市について調べ、課題を見つけて、考えを発表する学習に取り組みます。伊勢原の自然や地域開発など、さまざまなテーマがある中で、「ゴミのリサイクル」も環境問題の1つとしてその中に入ってきます。ここ数年、秦野のクリーンセンターに行き、ゴミ処理の現場を取材しています。入学後のそういう取り組みにもつながっていけばいい、という思いもありました。
数学の疑問を探究のテーマに選ぶ生徒も
村田先生 探究では、2年生になると各自が好きなテーマで探究活動を行います。
例えばどのようなテーマがありますか。
村田先生 宇宙、電車など、もともと興味のあるものをテーマに探究する子もいれば、地球温暖化について調べたり、パズルと数学を結びつけてどう違うのかを考えたり、円周率のπに興味をもって調べる子もいます。
除村先生 私はつい最近まで宇宙のゼミを担当していました。ある本を読み、「宇宙が終わったり始まったりすることが、これまでに50回以上起きている」ということを知ると、「それ、本当なのかな」と、2、3週間かけて自分で計算した子がいました。
πを研究した子はどのようなところに興味を持ったのですか。
村田先生 どのような計算により3.14が算出されたのか、ということですね。小学校の教科書にも、円を小さい三角形で細かく切ると円周の長さが長方形になって…というようなことが載ってはいるのですが、受験勉強をして、入学してきた生徒に「なぜだと思う」と聞くと、答えられない子がほとんどです。ただ、教わるだけでは身につかないので、なぜ、そうなるのか、というところに着目し、考えることをしてきてほしいと思います。ちょっとした疑問も素通りしないで確かめるという習慣が身につけば、理解が深まると思います。
自修館中等教育学校/探究修論集
2019年入試から探究入試をスタート
村田先生 実は2019年入試から、「探究入試」を導入しようと考えています。
佐藤先生 いわゆる適性検査型の入試です。2月1日は2科、4科、探究から選択できます。
村田先生 探究入試では教科横断型の出題ができるので楽しみです。
探究入試の問題は4科目の先生が集まって問題を作るのですか。
佐藤先生 そうです。
除村先生 他教科の先生とも話をすると、今回の問題もそうですが、「そういう視点もあるよね」という話になり、視野が広がります。開校以来、ずっと探究を柱に取り組んできたので、念願の探究入試もできて感無量です。
佐藤先生 探究力をもつ子がたくさん入って来てくれるといいなと思いながら準備しています。
探究を6年間、行える環境が整った
除村先生 これまで探究は4年生(高1)で終わっていましたが、今年から6年生(高3)まで取り組めるようになりました。カリキュラム変更をし、探究を続けたい子は選択授業で卒業までずっと取り組めます。
探究活動をまとめた2万字の修論はこれまでどおり高1で提出しますが、その後も続ける環境が整ったということです。選択授業のほうでは、大学の研究室や研究機関と連携して、より専門的なところまで踏み込めるようにしていきたいと考えています。
入試では受験生の考えを聞きたい
算数の入試に関して、変更点などはありますか。
村田先生 変更はありません。今後も資料やグラフから読み取れることを題材にした問題を出していきたいと考えています。算数というと、答えを出せばいいと考えている子も多いと思いますが、本校では答えを導き出すまでの、思考の過程を大事にしていますので、なるべく記述式の問題を出して受験生の考えを聞いていきたいとも思っています。
自修館中等教育学校/校歌
インタビュー1/3