今月の額面広告に掲載されている問題はこれだ!
自修館中等教育学校
2018年07月掲載
2018年 自修館中等教育学校入試問題より
- 問題文のテキストを表示する
使用済(ず)みのペットボトル(容器)の多くは、自治体が資源ごみとして回収したり、スーパーマーケットやコンビニエンスストアをはじめとする事業者が回収したりします。次のグラフはペットボトルの販売量(はんばいりょう)と回収量を年度ごとにまとめたものです。このとき、次の各問いに答えなさい。
(問1)回収され、リサイクルに回されたペットボトルは一度細かくくだいてから、さまざまなものに再加工され、商品化されます。リサイクルに回された量のうち、15%がまたペットボトルとして商品化されます。2013年度に再度ペットボトルとして商品化された量は何tになるか答えなさい。
(問2)前の年度に比べて、回収量が減っても、回収率は上がることがあります。それはどういうときか説明しなさい。
中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには各中学の「こんなチカラを持った子どもを育てたい」というメッセージが込められています。
では、この自修館中等教育学校の算数の入試問題には、どういうメッセージが込められていたのか、解答・解説と、日能研がこの問題を選んだ理由を見てみましょう。(出題意図とインタビューの公開日については更新情報をご確認ください。)
解答と解説
日能研による解答と解説
解答
(問1)74691(t)
(問2)(例)ペットボトルの販売量の減り具合が、回収量の減り具合よりも大きいとき
解説
(問1)579000×0.86=497940(t)・・・2013年度のリサイクルされたペットボトルの量
497940×0.15=74691(t)
(問2)ペットボトルの販売量が減れば、回収量が減っても、回収率は上がることがあります。
実際に、表の中から「他の年度に比べて回収量が減っても、回収率が上がっている」年度を探すと、2012年度(あるいは2013年度)と2015年度が条件を満たしていることがわかります。2015年度の販売量を見ると、2012年度(あるいは2013年度)よりも減っていることが確かめられます。
(参考)
この問題で考えた「割合」は、私たちのくらしの中にあるさまざまな場面で用いられています。たとえば、消費税、降水確率、野球のバッターの打率などがあります。
割合を使うことにはどのようなよさがあるのでしょうか。
割合を使うことのよさの1つに“とらえやすさ”があります。次のAとBを見比べてみましょう。
A:全校生徒524人のうち、男子が262人だ。
B:全校生徒のうち、男子は50%だ。
割合を用いたBの方が、「全体のうちどれくらいなのか」をイメージしてとらえやすくなっています。ただし、Bには「実際に何人なのか」がわからないという弱点もあります。状況によって、具体的な数を用いるのか、割合を用いるのかの使い分けが大切です。
割合を使うことのよさは、ほかにもあります。消費税を例に考えてみましょう。
消費税は税金の一つで、その品物の値段の8%の金額を国に納めます。どのような値段であっても消費税は8%分なので、たとえば品物が100円なら消費税は8円ですし、品物が10000円なら消費税は800円です。「この商品の消費税は8円!」「この商品の消費税は800円!」というようにすべての商品の消費税が何円かを具体的に決めておかなくても、「消費税は8%」と決めておくだけで、どのような値段の商品に対しても消費税を求めることができるのです。この「すべてにあてはまる」というのも割合を使うことのよさです。
- 日能研がこの問題を選んだ理由
今回紹介した問題では、問題文だけでなく、グラフと表も合わせて示されています。ペットボトルのリサイクルという実際の社会のできごとを取り扱っていることもあり、まるで社会科の問題のようです。しかし、いざ取り組んでみると、「情報を読み取る力」や「割合の理解」という算数の力が問われています。
この問題は、「私たちのくらしをとらえるときに、算数で学んだことがどのように役立つのか」を考える機会を私達に提供してくれています。
世の中で生きていく上で、算数で学んだことをどのように役立てられそうか?
この問題から、「そんな問いを子ども達が立ててくれたら…」という先生達の想いが伝わってきました。
問いを立てる。そして、探求する。
自修館中等教育学校が大切にする「探求する」という姿勢と結びついた問題です。このような理由から、日能研ではこの問題を□○シリーズに選ぶことに致しました。
SDGs17のゴールとのつながりについて
グラフや表を見て、情報を読み取り、自分の手で「数字」を触りながら、資源問題や持続可能な未来づくりについて実感していく。学びとSDGs(持続可能な開発目標)の目標12「持続可能な消費と生産のパターンを確保する」とのつながりが感じられる問題です。算数の「割合」というテーマが、「ペットボトルの回収・リサイクル」という、私たちにとって身近な生活や社会のテーマと結びついていると知ったら、学び方も変化するのではないでしょうか?
私学とSDGsのつながりについて詳しくはこちらから
日能研は、SDGs をツールとして使い、私学の活動と入試問題に光を当てた冊子をつくりました。
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