シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

市川中学校

2018年06月掲載

市川中学校の理科におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

3.中学修学旅行をステップに、それぞれが自分の興味ある道を歩み始める

インタビュー3/3

取材したことを英語で発表する中3シンガポール修学旅行

英語で発表する機会もありますか。

大塚先生 SSHでは年度末の報告会に向けて英語での論文を作りますし、中学校の修学旅行(シンガポール)が中3の11月にあります。そこではシンガポール大学の学生と2日間、グループワークをします。テーマを決めて取材を行い、報告会を現地で行います。それはすべて英語です。帰国生もいれば、中1で初めて習った生徒もいますので英語力には幅がありますが、ジグソー法で行うので逃げられません。1人ひとりがもれなく発表します。

6、7名のグループで取材を行いますが、その後グループを解体して、発表用のグループに再編成します。発表のグループには取材のグループで一緒だった子はいません。1テーマにつき1名しかいないので、自ずと自分が中心になってやることになります。最終日の午後にそういう発表の場が設けられますので、観光を中心とした修学旅行とはひと味違う光景があります。

市川中学校/敷地内

市川中学校/敷地内

シンガポール大学の学生と協働作業

どんなテーマで取材活動をするのですか。

大塚先生 例えばシンガポールは緑豊かな景観ですが、最初からそういう状況ではなかったので、どういう背景で公園のような緑地が形成されたのか。それをどう維持しているのか。そういうことを取材しながらまとめるグループもあれば、市民の生活に目を向けて、生活サイクルを取材しながらまとめるグループもあります。大学生からアドバイスをもらいながら、テーマを見つけ出すところから始めて、取材し、その成果をもとに英語でまとめてスピーチします。シンガポール大学の学生は、日本のように同じような年頃の人ばかりではありません。20代前半から後半までいますし、学部がそれぞれ違うので、いろいろなアドバイスをいただけます。それもこの取り組みのおもしろいところです。

中3の学びの集大成として、修学旅行でそのような探求活動を行うと、高校でも自分の興味関心を深めることに貪欲になりますね。

大塚先生 6年間を通して、体系的に刺激を与えることができていると思います。それに加えて、先輩から後輩へ活動を伝える場が設けられ、背中を押される流れができてきていることが、より多くの生徒の参加につながっていると思います。

市川中学校/理科実験室

市川中学校/理科実験室

素朴な疑問を起点に掘り下げていく所作をおろそかにしない

入試問題や入学後の学習を踏まえて、小学生に向けた学習方法のアドバイスをお願いできますか。

大塚先生 「何事も勉強だよ」「日常生活のいろいろなことに興味関心をもってね」ということだと思います。これは受験に関係するから、しないから、ということではなくて、日頃からいろいろなことに興味をもって吸収して、想像するということを大切にしてほしいと思います。

また、「なぜだろう」という素朴な疑問を起点に、深く掘り下げていく所作をおろそかにしない、ということも心がけてほしいことの一つです。そのつどそのつど疑問を解きほぐす作業を避けずに行っていけば、自然と今回のような問題にも対応できる力がつくと思います。作問をする側も、そういう思考を大事にしている子ならポイントをつかんでいけるであろうと考えて問題を作成しています。

市川中学校/第三教育センター

市川中学校/第三教育センター

読書は疑問の解きほぐす術になる

大塚先生 本校の教育理念の三本柱の一つに「第三教育」(学ぶ喜びと生きる力を大切にする教育)という言葉がありますが、自ら学ぶ原点は読書です。いろいろな書物を読むことは、疑問を解きほぐしていく術にもなります。本を読んでいる中でわからないことと出会ったら、別の本で補っていくというように連鎖が生まれれば恐いものなしです。

本校では図書館を「第三教育センター」と呼んで、昇降口の一番近いところに設けています。一日の学びを読書から始めてもらいたいという思いで、朝7時に開けています(閉館は19時)。中学生の始業は8時10分です。その時間から朝読書が始まるので、開館と同時に入れば1時間以上、ここで読書したり勉強したりできるので、それを目当てに7時に登校する生徒もいます。

多種多様な生徒、1人ひとりに光を当てていきたい

大塚先生 ここに古典のテキストが並んでいますが、これは「古典を読んで、いろいろなことを学んでいこう」というテーマで企画した、高2対象の放課後の学習で使用しています。その講習には文系志望の生徒だけでなく、理系志望の生徒も参加しています。そういう土壌なので、生徒は楽しく学園生活を過ごしています。

生徒たちが興味関心をもつきっかけは理科に限らず、こちらでいろいろと用意しています。多種多様な生徒、1人ひとりに光を当てていきたいと思っているからです。私たちの学生時代は部活動に熱中する時代。それはそれでよかったですが、今の生徒には部活動だけでなくいろいろな機会が用意されているので、うらやましく思っています。

市川中学校/スクールバス

市川中学校/スクールバス

女子の力が学校の活性化につながっている

先生は男子校時代から教鞭を取られているのですか。

大塚先生 そうです。共学になって、生徒の学びにおいては男子校時代とは違う刺激を受けています。研究活動を進めていくということでは、男子校時代から「我らの研究」が何十年と続いていましたので、大もとはそこにあるのかなと思いますが、多種多様化していくスピードや広がりは男子校時代とは違います。女子生徒が入ってきたことにより、加速していると思います。女子生徒のパワーや行動力は素晴らしい。海外研修などでも大いに発揮されていて、男子生徒も少なからず影響を受けているので、これからがますます楽しみです。

インタビュー3/3

市川中学校
市川中学校1937(昭和12)年、市川中学校として開校。47年、学制改革により新制市川中学校となる。翌年には市川高等学校を設置。2003(平成15)年には中学で女子の募集を開始し、共学校として新たにスタート。同時に新校舎も完成させた。女子の1期生が高校へ進学する06年には高校でも女子の募集を開始。昨年4月には校舎の隣に新グラウンドが完成。2017年には創立80周年を迎えます。
創立以来、本来、人間とはかけがえのないものだという価値観「独自無双の人間観」、一人ひとりの個性を発掘し、それを存分に伸ばす「よく見れば精神」、親・学校以外に自分自身による教育を重視する「第三教育」を3本柱とする教育方針のもとで、真の学力・教養力・人間力・サイエンス力・グローバル力の向上に努めている。
効率よく、密度の濃い独自のカリキュラムで、先取り学習を行っていく。朝の10分間読書や朝7時から開館し、12万蔵書がある第三教育センター(図書館)の利用などの取り組みが連携し、総合して高い学力が身につくよう指導している。中学の総合学習はネイティブ教師の英会話授業。2009年度より、SSH(スーパーサイエンスハイスクール)指定校となる。授業は6日制で、中1、中2の英語7時間、中3数学7時間など主要科目の時間数を増やす。ほかに夏期講習もあり、中1・中2は英・数・国総合型講習を実施。高校では、高2で理文分けし、高3ではさらに細かく選択科目等でコースに分かれて学ぶ。授業の特徴としては、インプット型の学習で基礎力を育成するともに、SSHの取り組みとして、研究発表、英語プレゼンなどを行う「市川サイエンス」、対話型のセミナーである「市川アカデメイア」、文系選択ゼミの「リベラルアーツゼミ」といった発表重視のアウトプット型の授業展開を実施している。自らの考えを相手に伝える表現力を、論理的に考え、それを伝わりやすい文章で表現するスキルとしてアカデミック・ライティングといい、「読めて、書ける」を目指し「課題を設定する力」、「情報を正確に受け取る力」、「それを解釈・分析する力」、「自分の考えをまとめ・伝える力」を育てる。
高1の各クラスごとに3泊するクラス入寮は創立当時から続く伝統行事。クラブは中高合同で活動する。行事は体育祭、文化祭のほか、自然観察会、合唱祭、ボキャブラリーコンテストなどもある。夏休みには中1、中2で夏期学校も実施。中3でシンガポールへの修学旅行を実施。また、希望者を対象にカナダ海外研修(中3)、イギリス海外研修(ケンブリッジ大学、オックスフォード大学中3・高1)、ニュージーランド海外研修(中3・高1)、アメリカ海外研修(ボストン・ダートマス高1・高2)が実施されている。生徒のふれあいを大切にしているが、カウンセラー制度も設けて生徒を支えている。