シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

市川中学校

2018年06月掲載

市川中学校の理科におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

1.机上の学習にとどまらず、日常生活の中の疑問と結んで考えよう。

インタビュー1/3

日頃から興味関心をもって学ぶことが大切

出題意図を教えてください。

大塚先生 毎年、市川さんと友人との自由研究を題材にした会話文の問題を作らせていただいています。身の回りの自然現象に、日頃からどれだけ興味関心を持っているか、ということを大事にしているからです。今回、採用した大根やかぶはよく食卓にあがる野菜です。お味噌汁やつけものなど加工した状態で出てくるわけですが、実は実・葉・茎・根のどこの部分を食べているのだろうか。そういうところにも興味関心をもって学んでいる姿を想像して問題を作りました。

会話文の問題は、問題文の中にいろいろな情報が含まれています。時にはデータや表、グラフなども入ることがありますので、それらを読み取り、必要な情報をつなげて解答できる力を問いたいというのが出題の意図です。今年の文科省の全国学力テストでも、意識して生活しているかを問う問題が出題されました。その割合は小6では大問全部、中3では大問の6割でした。そういうことからも、日頃から自然現象を極めることがこれからは大事になると思います。

副校長・生物科/大塚 英樹先生

副校長・生物科/大塚 英樹先生

日常生活の中の興味関心と勉強とを照らし合わせる

大塚先生 大根は根と茎の間、茎の延長です。青かぶという石川県など日本海側の特産物もあるように、光を当てると青くなります。それは茎に近い性質です。光を当てても青くならないのは根です。

おそらくそういう知識を持たない子もいたと思いますが、試験を受けた後に「こんなおもしろい問題が出た!」と歓喜したり、「調べてみよう」と考え続けることができたりした問題だったと思います。

大塚先生 試験を通して、興味関心が深まるきっかけになれば嬉しいですね。大根は表面にぶつぶつがあり、ところどころに糸のような細いものが出ています。それに対してかぶは表面がツルツルしていて、先の細いところからしか根が出ていません。そういうところに興味をもって日頃の勉強と照らし合わせていけば、「なるほど」と腑に落ちると思います。

この問題には「お母さんと一緒に、スーパーや八百屋さんに買い物に行って、加工する前の形状を見ることも大事だよ」というメッセージと、小学校の理科の授業で行う実験数がまだまだ少ないと聞いていますので、「もう少し充実させてほしい」というメッセージを含めています。

市川中学校/校舎

市川中学校/校舎

予想を超える出来に、入学後が楽しみ

出来はいかがでしたか。

大塚先生 予想以上にできていました。本校では実験・観察中心の理科を展開していますので鍛えがいがあるなと思っています。

この問題では、根と茎を区別するポイントを見落とさないということが大事でした。区別する能力は、入学後、理科だけでなく他の教科でも必要としますので、しっかり身につけてきてほしいです。また、理科は自然界の真理を探究する学問です。資料、データの読み取りや分析も大事になります。大学入試でも、リード文をしっかり読んで考えを深めていけば解答にたどりつくことができます。それと同じように、小学生のうちから考えることをおっくうがらずに勉強してきてほしいです。

こうした問題形式が生物以外の分野にも広がっていく可能性はありますか。

大塚先生 そうですね。そのスタンスは大事だと思います。こうした問題形式というのは、物化生地、単独に存在するものではなく、4分野が深くつながりをもっています。理科に限らず、どの教科、科目に関してもクロスオーバーしながら出題されていくと思います。

市川中学校/第三教育センター

市川中学校/第三教育センター

受験生は試験時間を目一杯使って一生懸命取り組んでいる

貴校の入試問題は大設問数が多いですが、そこにはどういう意図があるのでしょうか。

大塚先生 各科目1、2題出題しています。物化生地が偏らないように、公平を喫して問題を出すと必然的にそうなるのかなと思います。

それぞれ専門の先生方が作問しているのですか。

大塚先生 そうです。

入試の日は会場に行きますか。

大塚先生 行きます。会場を回って受験生の様子を見ています。

気づかれたことはありますか。

大塚先生 どのお子さんも試験時間を目一杯使って一生懸命取り組んでいます。それだけに、入ってからそれぞれのお子さんの持ち味を生かして、さらに伸ばしていく責任があると感じております。

市川中学校/校歌

市川中学校/校歌

インタビュー1/3

市川中学校
市川中学校1937(昭和12)年、市川中学校として開校。47年、学制改革により新制市川中学校となる。翌年には市川高等学校を設置。2003(平成15)年には中学で女子の募集を開始し、共学校として新たにスタート。同時に新校舎も完成させた。女子の1期生が高校へ進学する06年には高校でも女子の募集を開始。昨年4月には校舎の隣に新グラウンドが完成。2017年には創立80周年を迎えます。
創立以来、本来、人間とはかけがえのないものだという価値観「独自無双の人間観」、一人ひとりの個性を発掘し、それを存分に伸ばす「よく見れば精神」、親・学校以外に自分自身による教育を重視する「第三教育」を3本柱とする教育方針のもとで、真の学力・教養力・人間力・サイエンス力・グローバル力の向上に努めている。
効率よく、密度の濃い独自のカリキュラムで、先取り学習を行っていく。朝の10分間読書や朝7時から開館し、12万蔵書がある第三教育センター(図書館)の利用などの取り組みが連携し、総合して高い学力が身につくよう指導している。中学の総合学習はネイティブ教師の英会話授業。2009年度より、SSH(スーパーサイエンスハイスクール)指定校となる。授業は6日制で、中1、中2の英語7時間、中3数学7時間など主要科目の時間数を増やす。ほかに夏期講習もあり、中1・中2は英・数・国総合型講習を実施。高校では、高2で理文分けし、高3ではさらに細かく選択科目等でコースに分かれて学ぶ。授業の特徴としては、インプット型の学習で基礎力を育成するともに、SSHの取り組みとして、研究発表、英語プレゼンなどを行う「市川サイエンス」、対話型のセミナーである「市川アカデメイア」、文系選択ゼミの「リベラルアーツゼミ」といった発表重視のアウトプット型の授業展開を実施している。自らの考えを相手に伝える表現力を、論理的に考え、それを伝わりやすい文章で表現するスキルとしてアカデミック・ライティングといい、「読めて、書ける」を目指し「課題を設定する力」、「情報を正確に受け取る力」、「それを解釈・分析する力」、「自分の考えをまとめ・伝える力」を育てる。
高1の各クラスごとに3泊するクラス入寮は創立当時から続く伝統行事。クラブは中高合同で活動する。行事は体育祭、文化祭のほか、自然観察会、合唱祭、ボキャブラリーコンテストなどもある。夏休みには中1、中2で夏期学校も実施。中3でシンガポールへの修学旅行を実施。また、希望者を対象にカナダ海外研修(中3)、イギリス海外研修(ケンブリッジ大学、オックスフォード大学中3・高1)、ニュージーランド海外研修(中3・高1)、アメリカ海外研修(ボストン・ダートマス高1・高2)が実施されている。生徒のふれあいを大切にしているが、カウンセラー制度も設けて生徒を支えている。