シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

今月の額面広告に掲載されている問題はこれだ!

市川中学校

2018年06月掲載

市川中学校【理科】

2018年 市川中学校入試問題より

市川さんと友人は夏休みの自由研究で、身近な野菜としてダイコンについて調べました。

友人「ダイコンは、煮物(にもの)や漬物(つけもの)、薬味としてもおなじみで、和食には欠かせない野菜の1つだね。千葉県はダイコンの都道府県別の収穫(しゅうかく)量ではトップ3に入るんだね。」

市川さん「身近な野菜だけど、実は、ダイコンについてあまり知らないね。」

友人「私たちがふだん食べている野菜には、食物の消化を助ける成分を含むものが多くあるようだよ。ダイコンにも胃腸のはたらきを助け、消化不良を解消する成分が含まれているようだよ。」

市川さん「胃の調子が悪いときには『ダイコンおろしを食べると良い』と言うね。」

友人「ところで、ダイコンと同じくアブラナ科の野菜で、カブもよく食べるね。2種類の野菜を比べると、ダイコンの表面には小さなくぼみがあり、細い根が出ているところもあるけれど(図1)、カブの表面にはくぼみがなくなめらかだね。」

市川さん「どうしてこのように違うの?よく見るとカブの先端(せんたん)からのびている根から、さらに細い根が出ているね。」

友人「ダイコンは、漢字で大きな根と書くけれど、あの太い部分はすべてが根ではないんだよ。ダイコンの上部は、日光に当たると緑色になるよね。」

市川さん「ジャガイモも日なたに出しておくと緑色にかわるね。でも、サツマイモ、ゴボウ、ニンジンは、日なたに出しておいても緑色にならないね。」

友人「そうだね。私たちがふだん食べている野菜は、植物のどの部分なのか意外と知らないことが多いね。さらにいろいろな野菜について調べてみよう。」

(問)私たちがふだん食べている野菜は、種類によって実、葉、茎(くき)、根など、食べている部分が違います。下線部と同様の部分を食べている野菜をすべて選びなさい。

  • (ア)カブ
  • (イ)ジャガイモ
  • (ウ)サツマイモ
  • (エ)ゴボウ
  • (オ)ニンジン

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには各中学の「こんなチカラを持った子どもを育てたい」というメッセージが込められています。
では、この市川中学校の理科の入試問題には、どういうメッセージが込められていたのか、解答・解説と、日能研がこの問題を選んだ理由を見てみましょう。(出題意図とインタビューの公開日については更新情報をご確認ください。)

解答と解説

日能研による解答と解説

解答

ウ、エ、オ

解説

会話文の中で、ダイコンとカブのちがいが示されています。ダイコンは、「表面には小さなくぼみがあり、細い根が出ているところもある」という特徴が見られ、カブは「表面にはくぼみがなくなめらか」で、「先端からのびている根から、さらに細い根が出ている」という特徴が見られることが読み取れます。これらのことから、ダイコンは根の主根の部分がおもに食べている部分で、その表面に側根が見られると考えられます。一方、カブは主根と側根よりも上の部分がおもに食べている部分であると考えられます。

また、会話文の中で、ジャガイモは日なたに出しておくと緑色に変わり、サツマイモ、ゴボウ、ニンジンは、日なたに出しておいても緑色にならないという情報が示されています。緑色であるということは、その部分に葉緑体があり、光合成を行うことができるということになります。これらのことから、日なたに出しておいても緑色にならない、サツマイモ、ゴボウ、ニンジンが、ダイコンと同様に、おもに根の部分を食べている野菜であると考えられます。

日能研がこの問題を選んだ理由

植物の体のつくりに目を向け、下線部で示されたダイコンの部分と同じ部分を食べている野菜を選ぶ問題です。

ふだん、子ども達が野菜を食べるときには、さまざまな形に切られていたり、調理されていたりするため、野菜を植物としてとらえ、そのつくりを観察する機会は少ないのではないでしょうか。しかし、会話文を読み進めることで、野菜を観察したときに見られる特徴が明らかになっていきます。

この問題は、野菜のつくりを観察したときのさまざまな特徴と、理科での学びで目を向ける植物の体のつくりに関する知識を結び付けることで、ふだん食べている野菜が、実、葉、茎、根のうちのどの部分にあたるのかという分類を行う視点につながっていきます。

この問題がきっかけとなり、これまで学んできたことと身のまわりにあるものを結び付けていく過程を楽しんだり、結び付いたときに新たなネットワークが構築されたりすることでしょう。

このような理由から、日能研では、この問題を□○シリーズに選ぶことにいたしました。