出題校にインタビュー!
カリタス女子中学校
2018年06月掲載
カリタス女子中学校の国語におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。
3. 多面的な見方・考え方を自分のものにする
インタビュー3/3
豊富な読書体験は作品を味わう鑑賞力の土台になる
法土先生 かつては物語的な文章が得意な受験生が多かったのですが、最近は圧倒的にできる受験生は少なくなりました。
昨今は読書に代わる娯楽がとても多くなり、中高生の様子からも「読書離れ」を感じます。小学生が手に取る本は物語や小説が圧倒的に多いでしょうが、受験生の答案を見ると、小学校時代にどれだけの読書体験をしているのかとても気になります。
読書は、他者に教えてもらうのではなく、自分で書き手の意図を読み取り味わうものだと思います。この時期の読書体験は、中学・高校時代の読解力にも関わってきますから、読書体験が豊富なお子さんが入学してくださるとうれしいですね。
国語科/法土 明子先生
「読書マラソン」で目指せ100冊読破!
水野先生 生徒に読書に慣れ親しんでもらおうと、国語科では10年以上前から、「読書マラソン」への参加を呼びかけています。本を読んで、書名、著者、読み終わった日、心に残った場面・ことば・人物、感想などを記録し、教員に提出します。
5冊、10冊と読んだ本の冊数によってカリタス特製グッズがもらえます。目標は100冊読破です。きっかけはグッズほしさでも構いません。読み続ける中でよい本と出会い、読書が楽しくなって主体的に読むようになってくれたらと思います。
多様な立場から戦争を見つめる「学芸コンクール」
水野先生 国語科の特色ある取り組みの一つに「学芸コンクール」があります。中1から高3まで全学年が参加し、2018年度で39回目を数えます。
中学生は一貫して「戦争」というテーマに向き合います。中1が「戦争と子どもたち」、中2は「戦う人々」、そして中3は「終わらない戦争」という視点で選んだ指定図書から1冊以上を読んで感想文を書きます。
3年間通して戦争をテーマにした本を読むことで、戦争を多視的にとらえる力を培うのがねらいです。ひいては、物事を一面的ではなく多面的にとらえられるようになってもらいたいと思っています。
戦争の加害者・被害者、子ども、日本人・外国人など、異なる立場でとらえた戦争がどのように描かれているか。立場が違う人が見ると、白いものが黒く見えたり、グレーに見えたりすることに気づき、理解しようとする姿勢を育てます。
作品を審査して、最優秀賞1名、優秀賞4名程度を表彰します。作品は次年度の『生徒作品集』に掲載され、生徒全員に配布します。
優秀な作品は自分の体験と、あるいは他の読書と結びつけて論じることができていて、感想に厚みがあり、持論にも説得力があります。そうした生徒は、他者の気持ちを汲み取ることもできます。字がきれいなのも優秀作品の共通点です。
中学生はオプションとして「創作部門」も設けています。童話・小説・戯曲・随筆・評論・短歌など、文学であればジャンルは問いません。応募者は多くはありませんが、小説を書いてくる意欲的な生徒もいます。
カリタス女子中学校/学芸コンクール
作品にじっくり向き合い作家論・作品論を展開
水野先生 高校生の学芸コンクールの課題は、一つが「現代文部門」の作品論・作家論です。高3も受験生だからと手加減しません。
高1は芥川龍之介、高2は夏目漱石または森鴎外という明治・大正の文豪が対象です(1200字以上)。
高3は、昭和に活躍した川端康成『山の音』『古都』、三島由紀夫『金閣寺』、太宰治『斜陽』『人間失格』、あるいは平成の現代でも活躍している村上春樹『海辺のカフカ 上・下』、吉本ばなな『スウィート・ヒアアフター』の中から一冊選び、作家論・作品論を作成します(夏休み明けに提出、800字以上)。
作品集の生徒さんの論述を読ませていただきました。芥川龍之介の『鼻』を、現代の事柄に置き換えて考察していますね。どんなアドバイスをされているのですか。
水野先生 作家論・作品論は普遍的な事実に基づく主張、客観的な証拠と論理的な推論を展開します。
授業では単元が終わったときに、作品の疑問点を挙げて論じる練習をします。読み終わって、何か気になるところ、引っかかるところがあるはずです。例えば『山月記』なら、李徴はなぜ虎になったのか、なぜ虎なのかなど、作家の主張に関わる疑問を掘り下げて考えます。
事前指導として、何について、どのような論点で作成するか、あらかじめ提出してもらうこともあります。それでも主観的な読書感想文・随筆文になっている場合は、やり直しさせます。
カリタス女子中学校/作品集
「こんな解釈も」創作活動が楽しい古典の現代文訳
水野先生 高1・高2はもう一つ、古典作品を現代文にする「古典部門」の課題にも取り組みます。高1は授業で扱った古文・漢文から、高2は『枕草子』『大鏡』『宇治拾遺物語』『徒然草』の中から一作選びます。古典部門は原作を自分なりに意訳して話を膨らませるので、より文学的な作業かもしれません。
作品集を見ると原文の5倍もの文字数になっています。作品の時代に思いをはせて、「こんなふうにも解釈もできる」と創造するのは楽しいでしょうね。
カリタス女子中学校/図書館
「杉原千畝」を共通テーマに教科横断型の授業も
水野先生 数年前から、同じテーマを複数の教科で取り組む試みも始めています。
2017年度のクリスマス会で、「東洋のシンドラー」と呼ばれる杉原千畝氏の生涯を題材とした一人芝居「決断命のビザ」を鑑賞することになり、事前に各教科で「杉原千畝」を取り上げ、戦争と平和について改めて考える機会を設けました。
英語科の授業では外交官だった杉原千畝氏の偉業についての英文を読み、社会科では第二次世界大戦中のユダヤ人迫害などの歴史的事実や時代背景を調べ、国語科は中学で扱った戦争関連の作品を読み返しました。また、横浜市歴史博物館のご協力を得て、校内に杉原千畝氏に関する写真を展示しました。公演のあとには、リトアニア公演の映像を交えながら、講演もしていただきました。
このように、各教科で学んだことに横串を通すと学びが深まり、物事を多面的にとらえられるようになります。教科横断の成果はまだ未知数ですが、今後も機会を見つけて取り組んでいくつもりです。
インタビュー3/3