シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

今月の額面広告に掲載されている問題はこれだ!

カリタス女子中学校

2018年06月掲載

カリタス女子中学校【国語】

2018年 カリタス女子中学校入試問題より

次の文章を読んで、次の問いに答えなさい。

※のついた言葉には、文章の最後に注をつけてあります。

 (略)

最近、草地を資源として見直そうという機運が生まれている。草は成長スピードが速く、刈ってもすぐに回復する「減らない資源」 だからである。西日本のススキ原では、1ヘクタール(百メートル四方の面積)で年間に10トンもの乾物(かんぶつ)が生産されるという。シカが増えて森の中の食べ物がなくなっても、森の外にはほぼ無尽蔵(むじんぞう)に餌となる草があり、いっこうに数が減らないのも頷(うなず)ける。

資源としての使い道は、バイオ燃料や家畜の飼料などである。バイオ燃料は、石油などの化石燃料と違い、二酸化炭素をリアルタイムで吸収して造られた光合成産物である。だから、バイオ燃料を燃やして発生した二酸化炭素は、新たな負荷(ふか)にはならず、温暖化の防止に一役買うことができる。カーボン・ニュートラルと呼ばれる所以(ゆえん)である。

だが、通常のバイオ燃料はトウモロコシ、サトウキビ、油ヤシが原料なので、森林や農地をつぶして作られることが多い。だから、決して生態系に優しいとは言えないし、食料生産とのバッティングも問題になる。ところが、日本の草地の多くは 放棄されたままの農地や荒(あ)れ地であり、それを有効活用するのだから、そうした問題もない。また、家畜の飼料としては昔から使われてきた実績がある。さらに最近では、栄養学的な面から、ススキなどは外来牧草よりもバランス面で優れた飼料であることがわかってきた。

バイオ燃料は、再生可能エネルギーであり、温暖化防止にも役立ち、さらに地域社会を支える農業の振興(しんこう)にもつながると言われている。 だが、生物多様性の観点からは更(さら)なるメリットがある。絶滅危惧種を含む草原性の生物の保全に役立ち、またシカなど野生動物の増加の温床(おんしょう)である放棄地を整備することにもつながる。まさに、「一石五鳥」のご利益(りやく)があると言えよう。(略)

(宮下直『生物多様性のしくみを解く』工作舎より)

【語注】※無尽蔵・・・いくら取ってもなくならないこと。
※バッティング・・・物事が競合すること。

(問)「一石五鳥」とは「一石二鳥」ということわざをもじったものです。「一石」にあたるのは「草地を資源として見直すこと」ですが、「五鳥」にあたるのは何ですか。答えなさい。

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには各中学の「こんなチカラを持った子どもを育てたい」というメッセージが込められています。
では、このカリタス女子中学校の国語の入試問題には、どういうメッセージが込められていたのか、解答・解説と、日能研がこの問題を選んだ理由を見てみましょう。(出題意図とインタビューの公開日については更新情報をご確認ください。)

解答と解説

日能研による解答と解説

解答
  • バイオ燃料による温暖化防止に役立つ。
  • バイオ燃料による農業の振興につながる。
  • ススキが栄養学的に優れた飼料として活用できる。
  • 絶滅危惧種を含む草原性の生物の保全に役立つ。
  • 野生生物の増加を防ぐ。
解説

最初に、問題にある「一石二鳥」の意味を確認しましょう。「一石二鳥」とは、「一つのことで、二つの利益や効果を挙げること」という意味です。この問題では、「一石」が「草地を資源として見直すこと」を指していますので、「草地を資源として見直す」ことによってうまれる「利益や効果」を文章の中からさがし、まとめましょう。今回は、「一石二鳥」という四字熟語があえて「一石五鳥」と言葉が変えられていますので、筆者がこのような工夫した表現にした意図を確認すると、答えにふくめる要素がいくつあるのかという点を見出す手がかりにもなるはずです。

日能研がこの問題を選んだ理由

この問題が出されている素材文では、私たちが暮らす日本の環境問題に関わりのある、バイオ燃料が話題として扱われています。

文章の中にある「一石五鳥」という、筆者の工夫が凝らされた表現が、子どもたちの文章に対する興味や関心を深め、文章に書かれている中心へと目を向けていくきっかけになるといえます。また、答えを導き出すための手がかりを探すという行為を通して、自分たちの身の回りで起きている環境問題に子ども自身が目を向けることもできる問題だったと考えられます。

今回は、受験生が環境問題に目を向けたり、日頃、無意識に使ってしまいがちなエネルギーについて考えたりするきっかけとなる文章を選ばれた意図、また、受験生が問題に取り組むことを通して、すべての人が安全な環境のもと、地球や自然に対してやさしく暮らすための考えを構築させるために必要な見解を得ることができるような問題を出された意図をぜひ伺ってみたいと考えました。

以上のことから、日能研ではこの問題を□○シリーズに選ばせていただきました。

SDGs17のゴールとのつながりについて

  • 18 SUSTAINABLE DEVELOPMENT GOALS
  • 7 エネルギーをみんなに そしてクリーンに
  • 15 陸の豊かさも守ろう

国立環境研究所が最近の衛星データを調べた結果、草原(草地)の面積は世界陸地の24%を占めています。そのほとんどはアジア・アフリカ・南アメリカの発展途上の地域に集中しています。この地域では人口増加が深刻な問題であり、食糧をいかに安定して供給するかが世界的な課題になっています。また、これらの草原を中心として世界で毎年600万haの土地が砂漠化し、穀物の作付面積も減少の一途をたどっています。草原は、食糧供給資源と地球環境保全の両方の点から、適切な管理や利用方法を確立することが重要です。

草地を資源として見直すことについて書かれた問題文を読み、資源問題やエネルギー問題、持続可能な未来づくりについて考えることで、SDGs(持続可能な開発目標)の目標7「すべての人々に手ごろで信頼でき、持続可能かつ近代的なエネルギーへのアクセスを確保する」や目標15「陸上生態系の保護、回復および持続可能な利用の推進、森林の持続可能な管理、砂漠化への対処、土地劣化の阻止および逆転、ならびに生物多様性損失の阻止を図る」などにも目を向け、どのような働きかけをすることができるかを話し合うこともできそうです。あなたはどのように考えますか?

私学とSDGsのつながりについて詳しくはこちらから

日能研は、SDGs をツールとして使い、私学の活動と入試問題に光を当てた冊子をつくりました。
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