シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

恵泉女学園中学校

2018年05月掲載

恵泉女学園中学校の社会におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

2.大事なことは覚えることより理解すること

インタビュー2/3

漢字指定は知識を正確に習得するための一環

社会科では入試でどのような力を試そうとしていますか。

服部先生 最終的には思考力を見たいと思っていますが、考えるにはある程度の知識量が必要です。地道に習得してほしいのはもちろん、うまく活用できるように正確に覚えるようにしましょう。地名や人名などの用語の漢字指定は知識習得の一環でもあります。
漢字指定は教科書に載っている用語に限定しています。漢字を正しく書けるということはそれだけ努力してきた証でもあるので、評価してあげたいと思います。

知識を活用してその場で考える問題としては、横浜の歴史にまつわる大問のうち、「横浜が日本での発祥地となっていないもの」を選ぶ問題が当てはまりますね。

服部先生 選択肢を眺めて、「そんなの知らない」と思うかもしれません。でも、キリスト教伝来の知識(ザビエルが上陸したのは鹿児島)があれば、「キリスト教の教会」をすんなり選べます。選択肢すべての知識がなくても解ける問題です。

恵泉女学園中学校/校舎

恵泉女学園中学校/校舎

誰が読んでも何を聞いているかわかる問い方をする

服部先生 歴史分野は起きた順に出来事を並べ替える問題を出します。因果関係を押さえて時代の流れをとらえましょう。
また資料を読み取る力を試します。入試では、初見の資料でも持っている知識を使って判断できるものを取り上げているつもりです。普段から資料を眺めるようにしましょう。

公民分野は政治と経済の仕組みを大まかに理解しましょう。経済については、例えば「インフレーション」とはどういう状況を指すのか、生活に落とし込んで現象を考えてみましょう。
時事問題も出題しているので、ニュースに関心を持ってほしいですね。新聞の1面を眺める習慣があるとなおよいです。

作問にあたっては、問い方が傲慢にならないように気をつけています。「こう聞いたから、答えはこれしかないでしょう」と勝手な思い込みをせず、何を聞いているか、誰が読んでも伝わる表現を心がけています。

恵泉女学園中学校/メディアセンター

恵泉女学園中学校/メディアセンター

歴史の並べ替えが苦手なのは丸暗記に頼るから

服部先生 歴史の並べ替えが苦手なのは昔も今も変わりません。出来事を「点」でとらえているからで、機械的に覚えている姿が目に浮かびます。
中1を見ると、重要用語を暗記用ペンで引き、赤シートで隠して暗記できたかどうかをチェックする学習法が染みついているので、真っ先に「その覚え方は、もうやめよう」と言います。

そうやって覚えた知識はすぐに忘れてしまいますよね。

服部先生 マーカー部分だけを見て思考が伴っていないので、用語は覚えても内容の理解が伴っていません。
それに、暗記用のペンは色が濃く、教科書の文字が見にくくなります。マーカーを引けば引くほど教科書が汚くなり、教科書を開こう、勉強しようとやる気にならないと思います。
「これしか覚える方法がない」と後ろ向きの生徒もいますが、「大事なことは、覚えることより疑問を持つこと、理解することだよ」と言い聞かせます。中1の1年間だけでは抜けきらないほど頑固に染みついているので、根気強く指導します。

恵泉女学園中学校/展示物

恵泉女学園中学校/展示物

「隠さないで、まず理解」が脱・丸暗記のポイント

服部先生 高校では丸暗記の学習ではとても太刀打ちできません。「中学生のうちに丸暗記の学習法から“卒業”しよう」と、「自分なりの教科書づくり」を勧めます。
まず暗記用ペンで用語を「隠さない」ことを強調します。私は「重要なところは、自分が好きな、きれいな色のチェックペンで線を引いて」と言います。教科書を開くと、重要なところが好きな色とともに目に飛び込んできます。視覚的にわかりやすいので、実際にやってみると納得してくれます。

もう1つは、「すぐに覚えようとしないで」と繰り返し言います。覚える前に、理解すること。それには教科書を読んだり、疑問点を調べることを怠ってはいけません。学習時間のほとんどをマーカー引きと暗記に費やしているので、少なくとも学習時間の半分を理解することに充てて、その後で覚えるようにします。トータルの学習時間は同じでも、理解先行型の方が知識の定着率はよいはずです。

インタビュー2/3

恵泉女学園中学校
恵泉女学園中学校1929年、第一次世界大戦を経験したクリスチャン・河井 道が、「広く世界に向かって心の開かれた女性を育てなければ戦争はなくならない」と考えて創立した。創立当初より聖書・国際・園芸を教育の柱に据え、生徒の知性・感性・社会性を育てている。この伝統は今に受け継がれ、様々な分野で活躍する女性を輩出し続けている。
現在の校舎は創立者の言葉を刻んだ「泉」のある中庭を囲んで配置され、木材を多用し、明るく広々とした雰囲気。また、HR教室24教室分の広さと9万冊の蔵書を誇るメディアセンターをはじめ、生徒の自立的学習を支援する施設が備えられている。
恵泉の朝は、25分間の礼拝から始まる。聖書や感話の中で語られる、人それぞれの生きる営み。様々な生き方を知り、「自分とは何者か」「自分はいかに生きるべきか」、思索を深めていく。恵泉教育の特徴のひとつである「感話」は、日頃感じたり考えたりしたことをまとめたもので、礼拝の中で他の生徒の前で述べる。神との対話、理想とする生き方、友人とのトラブル、留学から学んだこと、哲学や芸術について……多感な時期に感話を書き、また聞き続けることで、誠実に人生に向き合うことを学ぶ。
英語は少人数制と豊富な選択授業により、Reading, Writing, Listening, Speakingの4技能をバランスよく伸ばし、コミュニケーションツールとしての英語を身につけることを目標としている。中学生は英検各級の満点合格者が多数。5年生の54%が2級以上を取得。準1級取得者は12名。また、TOEICでは海外経験がなくてもスコア800以上をとる生徒もいる。
多くの生徒がスポーツ系、文化系の21のクラブで活動している。茶道やオーケストラやサイエンス・アドベンチャーなどの課外活動では、専門の指導者による学年の枠をこえた授業を行っている。また、クラブ活動のほかに学校生活を豊かにするための委員会活動などもある。