出題校にインタビュー!
恵泉女学園中学校
2018年05月掲載
恵泉女学園中学校の社会におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。
1.自由度の高い文章記述問題にチャレンジ
インタビュー1/3
「世界に目を向け平和を願う」創立者の思い
服部先生 この問題で取り上げた「子どもの権利条約」は、ユニセフが要約した条文です。小学校の教科書にも載っており、ぜひ入試問題に使いたいと思っていました。
文章記述問題は毎年出題していますが、資料から読み取ったことをまとめたり、事実を正確に説明する問題でした。受験生の意見を聞くスタイルで、これだけ自由度の高い問題は近年出題しておらず、本校としても新たなチャレンジでした。
この問題は貴校のアドミッションポリシーに通じるのではないでしょうか。
服部先生 「世界に目を向け、平和を実現する女性の育成」という創立者・河井道先生の思いは、いつも頭の片隅に置いています。特別意識して作問したわけではありませんが、創立者の思いを受け取ってくれたらうれしいです。
また、この問題が中1の社会科のスタートにつながればという思いもあります。中1はまず世界地理を学びます。小学校ではあまり取り上げない、みんなが同じスタートラインに立てる世界地理で、児童労働など世界の問題をいろいろな角度からとらえます。
社会科/服部 聡子先生
肩ひじ張らずに小学生の実感の伴った発想を期待
「小さな一歩はふみだせるはずです」など、設問文から受験生の考えを促そうという配慮がうかがえます。
服部先生 受験生には、身の丈に合った素直で柔軟な発想をしてもらいたいと思いました。聞いているテーマが受験生にとってあまりに大きいので、思考が止まったり手が動かないということがないように、設問文の推敲を重ねました。
解答欄も「肩ひじ張らずに書いて」と伝えようと、あえて一行(20字程度)にしました。受験生が思いきって書いてくれて安堵しました。最後の問題なので時間がなかったと思われるものもありましたが、だからといって諦めたような印象は受けませんでした。
恵泉女学園中学校/校門
「募金活動」など実体験に基づく解答が多かった
受験生はどのような解決策を挙げていましたか。
服部先生 答案を見て、小学生は実体験を書くのだという印象を強く持ちました。最も多かったのは「ユニセフの募金に参加する」という解答です。公立小学校が取り組む国際理解・国際援助としては、募金活動が第一歩だろうと思います。
「着なくなった衣服を集めているところに持って行き送ってもらう」「ペットボトルのキャップを集めてワクチンを買って届けてくれるところに協力する」という解答も、経験に基づいたものでしょう。
また、「多くの人に伝える」「賛同者を募る」手段として、「インターネット」を利用する答案が多く、いまどきの子どもらしいと思いました。
簡単でいいので「どのように」を具体的に書く
服部先生 自由度が高い問題を出すにあたり、配点は「1点」としました。自分に引きつけて考えていること、それが実現可能であると判断した解答は、誤字脱字があっても表現がつたなくても正解にしました。
「具体的に」と指定しているので、「どのように」という解決方法も重視しました。たとえ相手が首相や大統領であっても、小学生ができるものであれば正解になります。
例えば、首相に「手紙を出す」ことは小学生でもできそうですね。
服部先生 ええ。そうした答えも想定していましたが、実際はありませんでした。
「説得する」だけでは漠然としているので点数はあげられません。「戦争はダメだと言う」といった意見も、何をしたいのか説明不足です。「募金活動をする」というと大雑把な解答ではありますが、「小学生ができること」「方法・手段が具体的」という正解の基準は満たしています。
恵泉女学園中学校/メディアセンター
受験生の答案を統合すると問題解決の道筋が見えた
服部先生 8割程度が得点できていたことから、「考えてみよう」という学校のメッセージは受験生に伝わったように思います。初めての試みとしては、出題してよかったと手応えを感じています。
採点して気づいたことがありました。受験生の答案をすべて合わせると、社会科が大事にしていることが網羅されたのです。「現状を知ること」に着目した受験生もいれば、「学ぶこと」「伝えること」「合意を得ること」といったことが挙げられました。個人が挙げたポイントはそれぞれ異なりますが、これらの意見を集約すると、知る・学ぶ・伝える・話し合うという問題解決に必要なアクションが一通り揃っていて、興味深く感じました。
「誰かのために」奉仕の精神が育まれる学園風土
服部先生 「献金をまめにする」という受験生も、5名程度いました。
募金が「お金を集める」ことなのに対し、「お金を差し出す」献金は、「奉仕」する感覚です。献金は聖書の「自分の糧の十分の一を捧げなさい」に由来する行為です。本校では献金の機会が月1回、礼拝のときにあります。礼拝のときに献金のかごが回ってくるのですが、強制ではありませんし、金額の大小も問いません。始めのうちは場の雰囲気に流されているかもしれませんが、献金がどのように使われるのか説明を受けるうちに、「誰かのために」という奉仕の心が育まれます。
本校で学んだことが目に見えて現れるのが「誰かのために」という精神で、困っている人に手を差し伸べる生徒が多いと思います。
恵泉女学園中学校/フェロシップホール(講堂)
インタビュー1/3