シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

春日部共栄中学校

2018年04月掲載

春日部共栄中学校の理科におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

2.現象を自分の目で見て理解してもらい、レポートを書くことを通じて「論理的な生徒」に

インタビュー2/3

とにかく理科の面白さを知ってもらう

入試問題を通して事柄に興味関心を持った生徒に対し、学校側からサポートはあるのですか?

市石先生 まず視覚的に訴えかけることで理科って面白いと思ってもらいたい、なるべく理科嫌いになってほしくないという気持ちで普段の授業も行っています。入試問題の素材研究をする際は、高校生が解く大学入試レベルのものをアレンジし、まず小学生でも読めるレベルで「どういう現象が起きているか?」を理解することからスタートすることがあります。それをスタート地点とし、6年間かけて大学入試、さらにはその先に向けて、「どうやって新しいものに立ち向かっていくのか?」「どういう風に物事を見ていくか」を理科として常に考えてほしいと思っています。

たとえば高校生物だと、大学で学ぶ学問の前段階の領域ということもあり、あまり面白くないものというイメージがあります。本当に面白いことがやれるのは大学に入ってからなのかな?とは思いますが、関心を持って上につなげていくのにどのように取り組まれていますか?

市石先生 理科の面白さは「現象をまず自分の目で見て理解すること」にあると思います。そこには常に「なぜこういうことが起きるのか?」が付いてきます。例えば高校生物の中の「植物の環境応答」という単元は、ホルモンの各称をはじめ覚える項目が多く学習が大変な単元ですが、「ホルモンがあるから花が咲くのだ」ではなく、「花が咲くのはなぜだろう?」から入ることができれば、おもしろいですよね。そこの領域まで踏み込ませるような授業を作ることを常に心がけていますね。

牟田先生 春日部共栄中学校のスタンスとして、本物に触れさせるという考えを持ってカリキュラムを組んでおります。
その一つに「リーダーズプログラム」というものがありまして、年6~8回ほど外部の方をお招きした講演会を開いております。過去にはノーベル化学賞を受賞された白川英樹先生や、脳科学者の茂木健一郎先生(春日部出身)などにご登壇いただきました。

また「クラリカ(蔵前実験教室)」という東工大OBの先生をお招きした実験教室を開いています。ここでは教科書に出てこないような実験などを通し、生徒に理科への幅広い関心や興味を持たせることも行っています。

中学入試担当委員長/牟田 泰浩先生

中学入試担当委員長/牟田 泰浩先生

レポートを通して論理的な人間形成を

牟田先生 本校では理科に限らず、中学生のうちからレポートを書かせておりまして、事前に調査した内容を持って講演を聞いたり、その後復習にレポートを使ったり、といった先々の大学につながるような取り組みを行っています。これは学校長が常日頃「大学までの人でなく大学からの人に」と申しておりますように、普通の大学受験勉強では体得できないものだと実感しています。

実際に目で見て触れてみてといった体験をした後子供たちは前と後でどのような変化がみられますか?

市石先生 レポートとしてまとめていくことにより、ただ「面白かった」で終わってしまわないようになっていきます。たとえば「自分は何をわからなくて何が理解できたのか」や、「どういう現象がどういう結果だったのか」を自分自身で分析することができるようになりますね。

牟田先生 それに加え、生徒がとても「論理的」になっていくのを感じます。たとえば、理科の実験の後レポートを書いて復習をしっかりすることを通して今まで理科が嫌いだった子がまじめになったとよく聞きます。生徒が書いた日誌などを見ていますと、どれだけ面白かったのかを一生懸命書いているのですね。そのことがはげみになり次につながっていけば、という想いから、学校としても次々本物に触れさせる機会を作っているといった具合ですね。

実際実験できないものに関しては動画の利用があったりしますか?

市石先生 普段電子黒板を使って理科の授業をやっていますので、動画や図を見せたりしながら、すべてできるわけではないものに関しては「実際やったらこうなるのは想像つくでしょう」という感じで使ったりはあります。

春日部共栄中学校 理科室

春日部共栄中学校 理科室

自分達で結論を導き出す力を身に付けさせる

アクティブラーニングはどのようにされていますか?

牟田先生 もちろん取り組みとして日常の授業の中に入れています。たとえば実験をやってみて、レポートを書く前段階で子供たちが集まって喧々諤々議論する。何が起きたかといった根幹の部分だけを教員が「こうなんじゃないの?」と伝えきっかけを与えてあげる。そうすると単純な知識を入れるだけの授業だけでなく、自分達で導いた結論だという意識が強く生まれてきます。そういう意識が芽生えた中でレポートを書いてもらうと、とてもいい内容のものが出来上がったり、文量がたくさんのレポートを書いてくれたりといったことがあります。

他には6年間通してのスパイラル学習を通じ、同じような系統の問題を、難度を上げていきながら解かせていくということも行っています。

月1でレポートを提出する他、ワールドビューで文章力を鍛える

レポートについてもう少し詳しく教えてください。

市石先生 「まとまった形で他人に見せる文章はこういうものだよ」と教えるところから始めます。スタートは形からなので、目次を付け、調べるきっかけ、考察、意見、感想、参考文献などを盛り込み、レポートとしての体裁を整えるようにしていきます。レポート枚数は大体3枚ぐらいと量はそれほど多くはないものの、図や写真を入れ込んでいるので、ある程度形になっていきますね。

牟田先生 文章の体裁についてですが、生徒の中には、内容を調べるにあたってインターネットから始めると「ここいいな」というものをとりあえずつなげてくるようなものもあります。そのため、最初に言っていたことと結論が違っているようなレポートも中にはありますが、書かないより書くことで経験値は確実に上がっていくので、成長とともにそれなりのものになっているのは感じます。

本校では月1ぐらいの頻度で何かしらのレポート提出がありますが、他にもレポートの前段階でワールドビュー(新聞の切り抜き)というものがあります。これは十数年前から行っているのですが、新聞を切り抜いたものについての要約、感想、自分の意見、提案を出すということ日頃からやっています。
このようなものを経験していくことで、高校三年時には国語の文章を読む速度は非常に速くなっていますし、また新聞の切り抜きを題材にしているので、社会や理科といった様々な分野のものをバランスよく学べますし、教科横断型の取り組みができているのではないでしょうか。

春日部共栄中学校 掲示物

春日部共栄中学校 掲示物

インタビュー2/3

春日部共栄中学校
春日部共栄中学校2003年に中学を開校し、中高一貫校となった。「この国で、世界のリーダーを育てたい」を目標に、一貫生は「グローバルエリートクラス」にすべての生徒が所属する。高校の開校は1980年。
野球、バレーボール、水泳、吹奏楽など全国レベルの部活動も多く、「文武両道」で知られている。しかし、春日部共栄の「文武両道」は、運動ができる生徒と勉強ができる生徒が別々にいるということではない。すべての生徒一人一人が「文武両道」であるという教育方針が特徴である。
本物に触れることを重要と考え、自学力を育てる「グローバルリーダーズプログラム」を設定している。第一人者による講演会、英語は毎朝のリスニングや英語検定、国語は文学散歩や文章検定、数学は数学オリンピックや数学検定など、通常の授業以外のプログラムも充実。
中3では、サマーイングリッシュプログラムと、約1カ月にわたる希望制のバンクーバー語学研修を実施している。現地大学の寮に宿泊しながらのESLとホームステイが体験できる。
中学独立棟は卒業生の設計。大きく翼を拡げる取りをかたどった外観で、「世界にはばたけ」をコンセプトにしている。