シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

春日部共栄中学校

2018年04月掲載

春日部共栄中学校の理科におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

1.生物に関する広い知識を持ち、ニュースやトピックに敏感なアンテナを有してもらいたい、という想い

インタビュー1/3

自分達だけが被害者ではないという視点を持つ

今回は外来種、在来種について取り扱った問題ですが、作成された意図を教えてください。

市石先生 きっかけとしましては、最近話題のテレビ番組、テレビ東京の「池の水ぜんぶ抜く」という番組で「在来種」「外来種」という言葉がよく出てきていたこと、また昨年「ヒアリ」は非常に話題になったテーマでもありましたので、このトピックで問題を作成しました。

外来種というと「日本国内に国外の生き物が入ってくる」部分がクローズアップされがちなのですが、当然のことながら日本国内の生き物も国外に流出しています。たとえば日本ではあまりニュースで取り上げられないもので、アメリカにおいて日本産のマメコガネが「Japanese Beetle」という通名で、農業害虫として問題になっています。「自国の生き物も他国で悪さをする可能性があることを理解してもらいたい」という意味を込めて、「在来種」「外来種」という言葉をどれくらい理解しているかを図る問題として出題させてもらいました。

理科/市石 航先生

理科/市石 航先生

受験問題にとらわれない広い視野を

食べる、食べられるという関係で語られること、つまり「食物連鎖の関係の中で外来種が入ってくると生態バランスがくずれる」といったことが入試問題で出題されることは多いのですが、この問題は食べる以外のこととして語句を提示し考えさせています。その意図とはどういったところにありますか?

市石先生 被食・捕食(食う・食われる)の関係がメジャーなことはもちろんなのですが、かなりどう猛な生き物であるヒアリが他の生き物を食べるか?というと単純にそこだけの問題にしてしまいたくなかったというのもあります。

外来種を問題とする際、「細菌類」等の人間の目に見えない生き物たちも外来種として考えます。問題文の最終部分にも「どんな影響がでるかわからない」と付け加えさせてもらいましたが、単純に「何かを食べるから外来種はだめである」という話ではないということです。出題においては、ニュースになるような事柄を使うことで、受験勉強としてというよりも生活におけるすべての中でも広い視野を持ってもらいたいという意味合いも含まれています。

外来種についてくる病原菌については日頃触れる機会がないこともあり、問題を通して「そんな考え方があるんだ」と気づくことがあるように感じました。たとえば外来種や細菌について、小学校の社会では世界自然遺産での努力としての紹介の一部として少しだけ触れる程度です。理科では、外来種だと「食う・食われる」が中心で、細菌についてはあまり触れられません。
このような形で堂々と取り上げられることによって、子供たちは新しい発見を得られますね。

春日部共栄中学校 中学棟

春日部共栄中学校 中学棟

設問をきちんと読めば解ける問題

正答率は比較的高かったですか?

市石先生 今回、せっかく頑張って書いてくれたものをむやみに不正解にせずできるだけ点数をあげたいと思いまして、解答には部分点を付けております。部分点込みで正答率は84.2%、そのうち満点回答は半分ぐらいだったでしょうか。非常に正答率が高く、きちんと文章を読んでいるという印象を受けました。使っている語句も順番通りに記述されているものがほとんどでしたね。

部分点になったものとしては、語句のミス、日本語としてきちんと通っていない、というのに加え、4つの語句をすべて使っていない場合などがありました。ほとんどの生徒は何かしらの記述をしてくれていましたが、完全に語句を無視した自由記述や、関連のない話を書いていたケースは残念ながら不正解にしています。

知識先行型の子供は、与えられた題材に対して文章をよく読まずに「知っている」というだけで書き始める傾向にあります。その結果「何を問われているのか」「指定語句は何か」を見ずに問題を解いてしまい間違ってしまう。そんな子供が勘でやってしまうとミスしてしまうタイプの問題ですが、この問題は語句のヒントの与え方が答えやすい方向に向いているので考えやすくなっていますね。

設問作成にはわかりやすさを配慮

どのようにして問題を作成したのでしょうか?

市石先生 物理・化学・生物・地理の各科の教員が単元別に問題作成したものを寄せ集めて、表現をやわらかくしたりしていきました。この問題も最初は指定語句を用いない形で作成していたのですが、「きちんと語句を指定してあげたほうがわかりやすいのではないか?」という意見が出てきたことで後に付け加えました。私としては点数を取ってほしい、いろんな視野を持ってほしい、という想いでこの問題を用意したこともあり、こちらがある程度リードしてあげるかたちで「どのようにこの問題をとらえるか?」というのを考えてほしかったです。

入試は何回ぐらいされるのですか?

牟田先生 午前午後を分けると全部で6回あり、理科と社会があるのがそのうちの5回です。理科と社会が各50点満点の各30分ですが、理科と社会で合わせて1時間の中でこなすというスタイルです。

この理由としましては、本校の受験生の中には6年になってから私立を目指そうという生徒も少なからずおりますため、理科と社会にまで勉強の手が回らず国語と算数だけで受験、ということが背景にあります。そのため塾に通って一生懸命勉強している生徒に解ける問題と、ポイントを押さえたら点数が取れるような問題とに分けるような配慮をしています。

春日部共栄中学校 教室

春日部共栄中学校 教室

インタビュー1/3

春日部共栄中学校
春日部共栄中学校2003年に中学を開校し、中高一貫校となった。「この国で、世界のリーダーを育てたい」を目標に、一貫生は「グローバルエリートクラス」にすべての生徒が所属する。高校の開校は1980年。
野球、バレーボール、水泳、吹奏楽など全国レベルの部活動も多く、「文武両道」で知られている。しかし、春日部共栄の「文武両道」は、運動ができる生徒と勉強ができる生徒が別々にいるということではない。すべての生徒一人一人が「文武両道」であるという教育方針が特徴である。
本物に触れることを重要と考え、自学力を育てる「グローバルリーダーズプログラム」を設定している。第一人者による講演会、英語は毎朝のリスニングや英語検定、国語は文学散歩や文章検定、数学は数学オリンピックや数学検定など、通常の授業以外のプログラムも充実。
中3では、サマーイングリッシュプログラムと、約1カ月にわたる希望制のバンクーバー語学研修を実施している。現地大学の寮に宿泊しながらのESLとホームステイが体験できる。
中学独立棟は卒業生の設計。大きく翼を拡げる取りをかたどった外観で、「世界にはばたけ」をコンセプトにしている。