シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

今月の額面広告に掲載されている問題はこれだ!

春日部共栄中学校

2018年04月掲載

春日部共栄中学校【理科】

2018年 春日部共栄中学校入試問題より

昨年日本国内でニュースになった「ヒアリ」に関する下の文章を読み、次の問いに答えなさい。

(略)
ヒアリはもともと日本にはいない、外国からきた生物です。こうした生物は外来種とよばれ、もともと日本にいる生物(在来種(ざいらいしゅ))にたいして、人間の想像をこえるような影響(えいきょう)をもたらすことがあります。たとえば沖縄(おきなわ)の毒ヘビ(ハブ)を退治するためにインドから持ち込まれたマングースは、沖縄に定着(すみつくこと)しましたが、ほとんどハブを退治せず、逆に沖縄にしかすんでいないヤンバルクイナやオキナワキノボリトカゲといった貴重な在来種を食べ、絶滅(ぜつめつ)の危機に追いやってしまいました。こうしたことの多くは、人間の活動によって引き起こされてきたものです。生き物はもともとすんでいる場所から動かしてはいけません。動かす必要があるときは、つねに「どんな影響がでるか分からない」という注意深い気持ちを持たなければいけないのです。

(問)外来種のもたらす影響は、文章中にあるような「在来種を食べてしまう」こと以外にも考えられます。どのような影響があると考えられますか。以下の語句をすべて使って簡単に説明しなさい。

【語句】外来種 細菌(さいきん) 在来種 病気

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには各中学の「こんなチカラを持った子どもを育てたい」というメッセージが込められています。
では、この春日部共栄中学校の理科の入試問題には、どういうメッセージが込められていたのか、解答・解説と、日能研がこの問題を選んだ理由を見てみましょう。(出題意図とインタビューの公開日については更新情報をご確認ください。)

解答と解説

日能研による解答と解説

解答例

外来種の体についていた細菌によって、在来種が病気になって絶滅してしまう。

解説

この問題では、「外来種」、「細菌」、「在来種」、「病気」という語句を使うことが指定されています。細菌が病気の原因となることは知られていますが、普段から触れている細菌に対しては、抵抗力がついていて、病気の原因にならない場合が多くあります。外来種は、本来その場所にいない生物であり、外来種の体についている細菌も、外来種にとっては普段から触れている病気の原因にならない細菌であると考えられます。しかし、外来種の体についている細菌は、在来種にとっては未知のものであり、その細菌に対する抵抗力がなく、病気の原因になることがあります。そして、その病気がほかの在来種にも感染するなどして、絶滅する可能性が高くなります。

日能研がこの問題を選んだ理由

外来種がもたらす影響について、指定された語句をもとに在来種とのつながりをとらえ、説明する問題です。

この問題に子どもが取り組むことで、昨年、ニュースで多く取り上げられたヒアリをきっかけに、近年問題となっている外来種全般の影響について考えることができます。外来種の影響として、「在来種を食べてしまう」という点はよく知られていますが、指定された語句を手がかりに、それ以外の影響にも視野を広げてとらえていくことができます。このことは、問題が刺激となって、既知の枠を超え、未知の内容へと考えを進めていくことにもつながり、子どもの中で新たなネットワークが構築されるのではないかと感じました。

また、日本に定着した例として、マングースに関する話題を提示した後に、〝動かす必要があるときは、つねに「どんな影響がでるか分からない」という注意深い気持ちを持たなければいけない〟という最後のメッセージがあります。これらの部分が、生物多様性や生態系の保護に目を向けたり、日頃の自分の行動に結びつけたりすることを促す構成になっています。

このような理由から、日能研では、この問題を□○シリーズに選ぶことにいたしました。

SDGs17のゴールとのつながりについて

  • 18 SUSTAINABLE DEVELOPMENT GOALS
  • 15 陸の豊かさも守ろう

ペットとして、家畜として、食料として……。私たち人間は、実に多くの生き物とともに生活しています。そんな中で、「外来種」というと、「もともとそこに生息していた動植物=在来種を食べつくしてしまうこと(捕食)」がよく知られています。しかし、このことだけが外来種に関わる問題点なのでしょうか?
この問題は、「外来種」を「在来種を食べてしまうこと」以外の視点でとらえ、考えてみることを促しています。それは、目標15「陸上生態系の保護、回復および持続可能な利用の推進、森林の持続可能な管理、砂漠化への対処、土地劣化の阻止および逆転、ならびに生物多様性損失の阻止を図る」へのつながりを意識させるものになっています。さまざまな生物が生きることのできる、その土地独自の生物の多様性を維持することは、私たちに課せられた大きな責務のひとつ。開発や環境汚染、地球温暖化など、自然破壊の原因は数多くありますが、そのひとつに「外来種」も挙げられています。持続可能な未来をつくるためには、外来種問題への対応は不可欠だといえるでしょう。

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日能研は、SDGs をツールとして使い、私学の活動と入試問題に光を当てた冊子をつくりました。
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