出題校にインタビュー!
和洋九段女子中学校
2018年04月掲載
和洋九段女子中学校の国語におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。
2.グローバルクラスの設置・PBL型授業の徹底により生徒が積極的に!
インタビュー2/3
グローバルや思考力をキーワードに学校改革を推進
2科・4科の入試に加えて、海外帰国生入試や思考力入試も行っていますが、グローバルや思考力がキーワードになったのはいつ頃からですか。
菅谷先生 グローバルクラス(2017年入試から募集開始)ができてからです。学校からのメッセージとして入試問題の中にも取り入れたいと思っていたところ、いい文章と出会うことができたので、今回の出題となりました。
入試広報室長/川上 武彦先生
ものおじしない、元気な子供たちが増えた
川上先生 2017年度より、これからの社会に対応できる子を育てるために、グローバルクラスを募集するとともにPBL(Problem Based Learning)型の授業を全面的に行うことにしました。この改革を学校説明会で強く打ち出してきたので、昨春入学した生徒(新中2)からかなりその色が出ています。
これまでの和洋の生徒は総じてやさしくてまじめ。相手を傷つけない振る舞いをする子が多かったのですが、新中2は自分の考えを口にすることを恐れずに、話し合いで解決しようという姿勢が見られます。自分の意見と人の意見をすりあわせていく作業をいといません。特にグローバルクラスの生徒は活発で、入学式でも違いは明らかでした。知らない子ばかりなので本科クラスの子たちはかしこまっていましたが、グローバルクラスの子たちはリラックスしていました。入学後、ブリティッシュヒルズに宿泊した時も好奇心旺盛でした。そんな彼女たちと日常的に接している本科クラスの子たちも、元気がいいという印象です。
菅谷先生 私は高校生の授業を担当しているので、中1(新中2)とはクラブ活動でしか接していませんが、ものおじしないです。聞きたいことがあれば、突然手を挙げて「先輩、これ、どうするんですか」と聞いたり、「私はこれがしたいです」と主張したり。ハッキリものを言います。
川上先生 上級生が若干引いています(笑)。今年はマルタ語学研修(希望制/2週間)に8人が手を挙げました。すべて中学生で、その内3人が中1でした。それを見ても中1のパワーはすごいなと思います。
全教科でPBL型の授業を実施
PBL型の授業は全教科で導入しているのですか。
川上先生 そうです。全教科・全教員が研修に取り組み、授業で実戦しています。ただ、高2、高3は大学入試が現行のままなので柔軟に対応しています。大学入試が変わっていけば、高校生にもPBL型授業を増やしていくことになると思います。
PBL型の授業では、どのようなことにチャレンジしたり、工夫をしたりしていますか。
川上先生 PBL型の授業を導入した背景にはグローバル化があります。例えばバックグラウンドが異なる人たちとともに1つのものを作り上げる時には、自分の意見を伝える、相手の意見を受け入れる、意見をまとめて1つにする、といったことが必要になります。こうした力を総合的に磨いていくのがPBLです。本校では、中高時代にしっかり自分のものにしてほしいという思いをもってPBL型の授業に取り組んでいます。
和洋九段女子中学校/授業
グループ学習で探求活動
川上先生 具体的には「トリガークエスチョン→タブレットを使い情報収集→考えを整理→グループでブレスト→質問に対する答えを決める→その根拠を書く→プレゼンテーション」という流れを踏まえて授業を組み立てています。どの教科も同じです。
例えば「将来、子供を何人生みたいか」というトリガークエスチョンを投げかけると、生徒たちは少子化、保育園不足、社会保障など、さまざまな観点から考えを掘り下げます。グループでディスカッションをすると、そこでまた考えが広がり、「人権として生むか、生まないか」など、女性の生き方を織り交ぜながら考えたり、他国との比較をしたりします。最終的には根拠を明確にし、「こういう理由で私はこう思う(○人生みたい)」という形にまとめて発表します。
知識の定着もPBLのめざすところ
教科によりやりやすさが異なりそうですね。
川上先生 数学は難しそうだなと思ってのぞいてみると、碁盤の目になっている札幌の地図を使い、住所の法則性を見出して、そこから座標軸に入っていくような授業を行っていました。
菅谷先生 国語はもともとグループで話し合う機会がたくさんあります。教材についての感想や、その後の展開、その時の心情などについてはPBLを導入する前から話し合いの形式をとっているので、今、教科内で話題になっているのは、どこに重点を置いてPBLを進めていくかということです。今年度やってきたことの反省も踏まえて検討しています。
例えば国語ではどのような問いかけをするのですか。
菅谷先生 私が高校生の授業で投げかけたのは「具体例を考える」というトリガークエスチョンです。評論文を読み、テーマごとに具体例を考えるということをさせています。古典の授業では和歌を作らせたり、初見の状態で和歌の解釈をさせたり、その和歌が生まれた背景を考えさせたりしています。答えは決まっていますが、「こういう人間関係だからこうなのでは?」といったさまざまな意見が出てきておもしろいです。
川上先生 保健体育では、脳の機能を学ぶ単元で「心はどこにあるか」というトリガークエスチョンを投げかけていました。トリガーを考えることにより、単元で学ぶ内容を理解してもらう狙いがあったのだと思います。
PBLの目的の1つに知識の定着率があります。これまでの知識を入れてもらう、いわゆる受け身の授業よりも、生徒自身が自分から知識を取りにいくPBL型の授業のほうが、知識の定着率が高いと思います。
和洋九段女子中学校/体育祭
ルールは頭から否定をしないこと
生徒さんの様子はいかがですか。
菅谷先生 これまではおとなしく板書を写しているだけだった生徒も、グループになると積極的に話し始めます。間違ったことを言ってもそれはそれ、という感じですし、教え合うなど活発に議論する姿が見られます。
子供の興味が想定外のところに飛躍することもありますよね。
菅谷先生 時には収集がつかなくなることもありますが、1つの話題からいろいろな話に飛び火し、社会科で学ぶ内容が絡んだり、時には英語だったりと、教科を超えたところで意見が飛び交うことが一番の喜びです。
川上先生 意見を言いやすくするために1つルールを決めています。それは頭から否定をしないということです。この年代の女の子が人前で自分の考えを話すには勇気が必要です。それを乗り越えて話してくれたことに対する敬意を忘れないでほしいので、常々生徒に投げかけています。それは社会に出てからもっとも必要なことだと思います。
普段の取り組みを評価し成績に反映
すべてをPBLで学ぶとなると時間がかかると思います。割合などはどうしているのですか。
川上先生 この単元で最大何割というようにカリキュラムを組んでいます。中3の公民や高1の現代社会では、時期によっては週の約半分がPBLになることもあります。逆にまったくPBLを行わない単元もあります。
授業が変わったということは、定期テストも変わっているのでしょうか。
川上先生 そうですね。記述の問題が増えています。根拠を聞くということですね。
菅谷先生 PBLを普段の定期考査にも反映しようという話も出ています。
評価はどうされていますか。
川上先生 PBLを導入するにあたり、教科ごとに6学年分、すべての単元においてPBLの課題と評価を明確にしました。
菅谷先生 教科内で話し合って作りました。
川上先生 ルーブリックをもとに普段の発表やレポートなども評価し、成績にかかわる割合を増やしています。
菅谷先生 これまでも単元目標はありましたが、生徒がどんな力をつければいいのかを具体的に理解できるよう、評価も公開する方向で整えているところです。それができると、生徒自身が理解しやすくなると思います。
ルーブリックを入試問題に反映していこうという動きはありますか。
川上先生 あります。
菅谷先生 今まで教員が頭の中で考えてきたことが、やっと実践できました。反省を踏まえて、軌道修正しながら、さまざまな形でPBLを進めていくことになると思います。
和洋九段女子中学校/図書室
インタビュー2/3