シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

今月の額面広告に掲載されている問題はこれだ!

和洋九段女子中学校

2018年04月掲載

和洋九段女子中学校【国語】

2018年 和洋九段女子中学校入試問題より

次の文章を読んで、後の問いに答えなさい。

(略)
お菓子で一国の歴史を語るなど、針小棒大、まるで極小と極大をあえて結びつけようとしているのではないか、と異論が出るかもしれません。しかし、もしそれが、一見、生きていくぶんにはまったくなくてもかまわないように見えるけれど、じつは文化発展に大きく寄与(きよ)し、社会生活を潤滑にし、家族の思いを豊かにする重要要素であるならば、歴史と無関係ではありえません。それどころか、それを国家戦略として利用した奇特(きとく)な国があったとしても、不思議ではありません。
そのような国こそ、フランスでした。フランスは、長い歴史をつうじて ―意識的にか無意識的にかはともかく― 全精力を傾(かたむ)けて、お菓子という宝刀を磨(みが)いてきました。まずは国内で、さまざまな身分の思惑(おもわく)に合わせて身ごしらえし、ついで、国の外に向かって、そのうるわしい姿をアピールしていったのです。
(略)

(池上俊一『お菓子でたどるフランス史』〈岩波書店〉より)

(問)筆者はフランスの文化を代表するものとしてお菓子をあげていますが、日本の文化を代表するとあなたが考えるものと、その理由をそれぞれ答えなさい。

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには各中学の「こんなチカラを持った子どもを育てたい」というメッセージが込められています。
では、この和洋九段女子中学校の国語の入試問題には、どういうメッセージが込められていたのか、解答・解説と、日能研がこの問題を選んだ理由を見てみましょう。(出題意図とインタビューの公開日については更新情報をご確認ください。)

解答と解説

日能研による解答と解説

解答例

寿司。日本の主食である米に酢を合わせた酢飯に、日本を取り囲む海からとれる魚介類を主に組み合わせた人気の食べ物であり、昔はおめでたい席、今は気軽に口にできる食べ物としても広まり、長年親しまれている日本の代表的な食べ物だから。

解説

この問題は、文章を読み、「日本の文化を代表する」と言えるものを例に挙げ、その理由をまとめていきます。「文化」に対するイメージは人それぞれかもしれませんが、文章では「文化」がどう位置付けられているのかを確かめながら、日本で親しまれているものや、大きな影響を与えていると考えられるものを答えの中に盛り込み、自分の考えを説明しましょう。

日能研がこの問題を選んだ理由

問いには、「筆者はフランスの文化を代表するものとしてお菓子をあげていますが、日本の文化を代表するとあなたが考えるものと、その理由をそれぞれ答えなさい」と書かれています。

「文化」とは何でしょうか。出題された文章には「一見、生きていくぶんにはまったくなくてもかまわないように見える」が「社会生活を潤滑にし、家族の思いを豊かにする」という表現がありました。つまり、「文化」は、生きていく上で必要不可欠なものではないように見えるが、実はより人生を豊かで楽しくしてくれるものだと言えそうです。

この問題に取り組むにあたり、子どもたちは自分がこれまで接したり見聞きしたりしてきた様々な「文化」を思いうかべることでしょう。筆者が述べている「文化」と照らし合わせて考えてみることで、自分がこれまで持っていた「文化」に対するイメージがより具体的になることもあれば、果たしてこれは「文化」なのだろうかと立ち止まって考えてみたくなることもあるでしょう。

物事と自分自身の考えを結び付けて考えることは、知識どうしをつなげることはもちろん、身のまわりにある様々なことがらどうしをつなげ、新しい視点で物事をとらえるきっかけにもなります。そして、自分の考えを言葉に表すということは、自分の考えを筋道立てて組み立てていくということでもあります。

今後、子どもたちが生きていくうえでも大切なのは、「学び続ける力」を持つことです。学ぶ楽しさや喜びは、そのための原動力になるでしょう。「文化」と聞くと、何か高尚で芸術的なものをイメージするかもしれませんが、この問題を通して子どもたちには身近にある「文化」がもたらす豊かさにも目を向けて楽しんでほしいと思いました。また、長年大事に受け継がれている私学の文化を子どもたちと一緒に大事にしていきたいといった、私学の先生方の思いも感じ取れ、日能研ではこの問題を□○シリーズに選ぶことに致しました。