シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

西武学園文理中学校

2018年03月掲載

西武学園文理中学校の社会におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

3.社会の多様性を認めて共感する力を養う

インタビュー3/3

課外活動で社会科の学びを深める

田原先生 本校では校外での体験学習も大切にしています。中2の鎌倉、京都・奈良への研修旅行では事前・事後学習を充分に行い、社会科の授業で学んだ知識をより深めます。

鎌倉校外学習は、事前に鎌倉の名所旧跡や中世の歴史を調べ、班ごとにページを担当してクラスで旅行のしおりを作成します。現地に足を運ぶからこそわかることもあります。ガイドの方の説明など、当日見聞きしたことを帰ってから班ごとに模造紙にまとめ、掲示します。

中3のイタリア研修旅行は、ローマやフィレンツェ、ベネチアなどを訪れて、イタリアの歴史、芸術、文化を学びます。学内には「ミロのビーナス」や「真実の口」のレプリカがありますが、現地で本物を目にすることができます。ローマ教皇の謁見式にも参列します。世界に目を向け、異文化に触れながら国際人としての素養を磨きます。(※海外情勢により、2016年度・2017年度はオーストラリア研修に変更)
また、毎年3月に社会科校外学習(中学・高校の希望者)を実施しています。昨年は鉄道博物館と造幣局(さいたま市)を見学しました。

西武学園文理中学校 真実の口のレプリカ

西武学園文理中学校 真実の口のレプリカ

情報は自分で一旦咀嚼できるようになろう

中高6年間で、どのような社会科の力を身につけさせたいと思われますか。

田原先生 今はたくさんの情報があふれていますが、鵜呑みにしたり流されたりせず、本当にその通りなのかどうか自分で一旦咀嚼できるようになってほしいと思います。

私が教えている地理分野で言えば、社会の多様性(ダイバーシティ)を認める、共感する力を身につけさせたいですね。グローバル化が進み、バックグラウンドが多様な人たちと接する機会が多くなっています。そうした社会を偏狭な考えでとらえれば必ず摩擦が生じます。今の世の中がどのようなものかを理解した上で対処することが求められます。

西武学園文理中学校 銀河館(中学校校舎)

西武学園文理中学校 銀河館(中学校校舎)

現実社会の出来事と教科書の学びをつなげて考える

田原先生 授業では今起きている出来事を取り上げて、教科書の学びと現実社会が結びつくように意識しています。
地理の人口の単元では移民や難民の「人口移動」は大きなテーマの一つです。中南米からアメリカに渡るヒスパニックを取り上げるときはトランプ大統領の発言や政策も取り上げます。「あの発言は、そういうことか」と結びつけることができれば、授業で学んだことが腑に落ちるでしょう。

近年、「節分に恵方巻きを食べる」という習慣が全国に広まりましたが、翌日の恵方巻きの大量廃棄、食品ロスがニュースで取り上げられました。これは地理で扱う食料問題とダイレクトに関わります。世の中のトピックに触れることで、教科書のテーマを現実社会の課題としてとらえられればと思います。

身の回りのことすべてが社会科の学びにつながる

田原先生 毎年、中1の夏休みの課題として「環境地図」に取り組んでいます。北海道旭川市の環境地図環境研究会が主催する「私たちの身のまわりの環境地図作品展」に応募しています。2017年には日本地図学会長賞,北海道地理学会長賞、旭川科学館長賞といった3つの優秀賞を受賞するとともに、学校奨励賞も受賞しました。

今年度から始めた課題に、中1の「お雑煮レポート」があります。お雑煮は日本の地域性がよく現れる食文化であり、「食」は生徒にとって取り組みやすいテーマです。自分の家庭のお雑煮の素材や味付け、盛りつけを写真やイラストとともにまとめました。ご両親や祖父母の出身地が反映されてかいろいろなお雑煮があり、興味深いです。

自分の家のお雑煮が当たり前だと思っていた生徒にとっては、「こんなに違うんだ」と地域の文化の違いを知る機会になったかもしれませんね。

田原先生 このように社会科は身の回りのいろいろなことから学ぶことができます。

西武学園文理中学校 お雑煮レポート

西武学園文理中学校 お雑煮レポート

知識を有機的につなげば“丸暗記”に頼らなくていい

田原先生 社会科は好き嫌いがはっきり分かれる教科です。社会科が嫌いな理由としてよく聞くのは、「覚えなければならないことが多すぎるから」。そうした生徒は「暗記が苦手」と言いますが、「暗記しなければ」と思うから勉強がつらくなるのです。

暗記というと、「闇雲に覚える」というマイナスイメージがつきまといます。歴史は出来事の因果関係やその後の影響をつかみ、縦(時系列)の流れ、横のつながりを有機的にとらえれば、丸暗記に頼らなくていいはずです。私は地理を教えていますが、折に触れ、歴史や公民のことにも触れるようにして、知識が有機的につながるように意識しています。

本校では2年ほど前から教科横断的な取り組みを始めています。たとえば、日本の歴史についての英文読解では英語科と社会科の教員とで授業を行います。教科や分野の枠組みにとらわれない思考力は、正解が一つとは限らない課題に取り組む上で力になると思います。

西武学園文理中学校 Campus Information

西武学園文理中学校 Campus Information

インタビュー3/3

西武学園文理中学校
西武学園文理中学校栄養士、臨床検査技師などの専門学校を系列にもつ西武学園が1981(昭和56)年に高等学校を開設。93(平成5)年には満を持して中学校を開設。短期間で東大などの難関大学に合格者を輩出するほどの進学校として成長してきた。2004(平成16)年には小学校も開校。緑あふれる武蔵野の台地、入間川のほとりの恵まれた自然環境のなかに、レンガタイル貼りの校舎が建つ。中学校校舎は「銀河館」、高等学校校舎は「大志館」「希望館」「躍動館」など、建物ごとに名称がついている。多目的ホール、総合学習センター、情報館(I・I・YOU館)、LL教室など施設は充実している。キャンパスのあちこちに彫刻作品が飾られている。「誠実・信頼・奉仕」を校訓とし、中高一貫教育をとおして、全員が目標とする大学に進学することができるような教育を行うとともに、“世界を見つめ、人を想い、未来を創る”ための、6年間のさまざまな出会いやプログラムを通じて、不確実な未来社会をたくましくしなやかに生き抜く人材を育成する。シンボルマークは熊(BEAR)で、これには英語の「耐える」という意味も込められている。
2021年度から、中学1年生のクラス編成が変更となった。将来、東京大学や京都大学、国公立大学医学部などの難関大学への現役進学を希望する生徒を対象としたグローバル選抜クラスと、高度な英語力と知的土台をベースに、グローバルシチズンシップを備えたグローバル人材の育成をめざし、多彩な進路を希望する生徒に合わせた、きめ細かい指導を行う、グローバルクラスの2つのクラスから編成されている。また、朝のSHR前の時間を利用した確認小テスト(S時限)、理科実験の2人1組での指導など、密度の濃い授業で生徒の向学心を引き出している。基礎学力の定着に英検・漢検などを活用している。
高校進学については、2021年度から内部進学者は高校進学時に高校入学生との混成クラス編成がスタート。新たな人間関係の中で切磋琢磨し合える環境を構築し、将来社会で求められる協働力の育成と新たな価値観の発見、創造を可能とするため、高校の全クラスにおいて、高校入学生との混成クラスを編成している。また、内部進学者は高等学校進学時には希望や成績等により「グローバル選抜クラス(普通科)」、「グローバルクラス(普通科)」、「先端サイエンスクラス(理数科)」のいずれかのクラスに進学。そして、混成クラス編成にともない、数学・英語の授業では習熟度別授業を展開。中高一貫生と高校入学生の入学時の学習進度が異なるため、生徒個々に合わせたきめ細かな学習指導を実施している。
令和3年度より中学校、高等学校共に新たなグローバル教育プログラムをスタート。その一つが「GLOBAL COMPETENCE PROGRAM」だ。タブレットパソコンを利用するこの授業は、全て英語で行われる。予習・授業・振り返りのサイクルの中で、コミュニケーション手段としての実用的な語学力、異文化を理解する幅広い知識・教養、多角的な視点に基づいた高度な思考力、相手の考えを受け入れ相互に伝え合う力やホスピタリティの精神、世界をリードするグローバルな行動力の6つのコンピテンスを身につける。
また、中学校3年生でイタリア研修旅行、高校2年生でも海外研修旅行(グローバル選抜クラスとグローバルクラスはオーストラリアまたはマレーシア・シンガポールの選択、先端サイエンスクラスはアメリカ)を実施し、2度の海外研修を通じて、日本とは異なる言語、歴史、習慣などの文化の違いを肌で感じ、地球規模で物事を考えることが出来るような視野を養っている。
その他、中2のグローバルクラスではセブ島語学研修を行い、高1でネイティブスピーカーと寝食を共にするイングリッシュ・サマーキャンプなどメニューが多彩。また、中2では古都鎌倉を散策するほか、奈良・京都研修旅行を実施する。一方中学校のクラブ活動は、他校には少ないクラブ活動も盛んで、文化系では奇術研究部が“南京玉すだれ”などの古典芸能に挑戦するのをはじめ、体育系のライフル射撃部も活発に行われている。また、全国大会出場のスキー部や硬式テニス部、県大会出場の女子バレーボールも目覚ましい活躍をしている。毎週土曜日には、探究授業の一環として行われる、生徒の自主性や創造性を育むアクティブ・ラーニングとして、CA「Creative Activity創造的活動」授業(50分)を開講。中学1年生から3年生が各CAに混在するため、学年の枠を超え、お互いに協力しながら自主的に活動し、課題解決のための資質や能力を育みます。20講座の中から1講座を選択し、必修授業として1年かけて探究活動に取り組んでいる。