シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

今月の額面広告に掲載されている問題はこれだ!

西武学園文理中学校

2018年03月掲載

西武学園文理中学校【社会】

2018年 西武学園文理中学校入試問題より

「働く」ということについて、次の文章を読み、あとの問に答えなさい。

かつてあるイギリスの経済学者は、「将来は一人が一週間に15時間働けば十分な世の中になる」と言いました。また、生活を送るために十分なお金を全員に与える「ベーシックインカム」という取り組みを実験的におこなった地域もあります。さらに、「AI(人工知能)の発達によって不要になる職業」も最近話題となりました。このように考えると、「人が働くのは当たり前」という考え方自体が大きく変わるのかもしれません。

(問)働かなくても生活をするために十分なお金が国からもらえるとしたら、あなたは
働きますか?
働きませんか?
どちらか一方を選んだ上で、その理由を具体的に答えなさい。

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには各中学の「こんなチカラを持った子どもを育てたい」というメッセージが込められています。
では、この西武学園文理中学校の社会の入試問題には、どういうメッセージが込められていたのか、解答・解説と、日能研がこの問題を選んだ理由を見てみましょう。(出題意図とインタビューの公開日については更新情報をご確認ください。)

解答と解説

日能研による解答と解説

解答例
その1 【働く】
働くことの目的は、生活のためだけではなく、自分の興味関心のためや、やりがいを感じるためでもあると思う。わたしは宇宙開発に興味があり、その分野を極めたいので、国からのお金で生活できたとしても働くことを選ぶと思う。
その2 【働かない】
働くことに時間をとられなければ、家族とゆっくり過ごしたり、自分の趣味のために使ったり、ボランティアとして他者に貢献したりもできる。働く以外にも価値ある時間の使い方があると考えるので、わたしなら働かない。
解説

「働く」「働かない」のどちらを選んだとしても、その理由にあたる部分に具体性と説得性があるかどうかがポイントになるでしょう。例えば、働くのであれば「どのような仕事」をするか、働かないのであれば、その時間を「どのようなこと」に使うかなど、「どのような」を言葉にできると、具体性が増します。

日能研がこの問題を選んだ理由

AIの発達が人間の仕事や雇用にどのような変化をもたらすのかが世界各国で話題となっています。中学入試でも、AIに関する出題が昨年あたりから散見されるようになりました。「AI」そのものをアルファベットで答える問題、AIが発達しても人間が担うであろう仕事は何かを考える問題など、切り口はさまざまです。そうした中、西武文理中の問題は「働くという概念自体が変容するかもしれない」という、他校にはないアプローチが目を引きました。

この問題は、労働をテーマとした大設問の、最終問題です。働いて収入を得て、そのお金で生活するのが当たり前だと思っていた受験生は、「その当たり前がくつがえるかもしれない」ということに少なからず衝撃を受けたのではないでしょうか。そして「働かなくても生活できる状況」になったとき、「自分だったら働くか働かないか、どちらを選択するにしても、それはなぜなのか」を真剣に考えたと思います。

世の中で起きていることを、受験生が「自分のこと」として考えるきっかけを提供しているという点、それが子どもたちの今後の学び、さらに日本や世界の未来につながっているという点から、日能研ではこの問題を□○シリーズに選ぶことにしました。

SDGs17のゴールとのつながりについて

  • 18 SUSTAINABLE DEVELOPMENT GOALS
  • 8 働きがいも 経済成長も
  • 9 産業と技術革新の基盤をつくろう

AI(人工知能)の発達や社会構造の変化によって、「生活のために働く」世の中が終わる……!?「働く」ことの意味・目的そのものや「働き方」を、あらためて見つめなおす時代がすぐそこに来ているのかもしれません。働きがいのある仕事って何だろう?未来に向かって自分の人生をどのように創っていくの?そんな問いを、まだ職業を持っていない子ども達に敢えて投げかけています。

この問題は、目標8「すべての人々のための持続的、包摂的かつ持続可能な経済成長、生産的な完全雇用およびディーセント・ワークを推進する」とつながっています。その問いかけの前提にもなっているAIやテクノロジーの進化は、「何のために進化するのか?」「進化の先にあるものは何か?」「その進化は人間の幸福や持続可能性につながっているのか?」……と考えていくと、目標9「レジリエントなインフラを整備し、包摂的で持続可能な産業化を推進するとともに、イノベーションの拡大を図る」にもつながっていきます。

私学とSDGsのつながりについて詳しくはこちらから

日能研は、SDGs をツールとして使い、私学の活動と入試問題に光を当てた冊子をつくりました。
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