シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

獨協埼玉中学校

2018年03月掲載

獨協埼玉中学校の算数におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

3.数学の力をつけるには国語の力が必要。読解力や表現力を磨こう。

インタビュー3/3

授業に参加している実感を誰もがもてる時間をつくる

授業の導入における工夫についてはいかがでしょうか。

八木先生 もちろん興味のある話題のほうがいいと思うので、数学が苦手な子もフェアな状態で、同じように取り組むことができるものを考えて実施しています。例えば中2の確率では、授業に入る前にサイコロを1人200回ずつ振らせて、全員のデータを集計させました。「ミスがあると困るので、自分の200回分のデータが合っているかどうかを確認してほしい」と言うと、生徒たちは出た数字を順に書いたものを数えて1は何回出た、2は何回出た……と集計しました。やり方は個々に任せると、「50回ずつに区切って、間違いがないかチェックしたほうがいい」など、数学が得意、不得意に関係なく建設的な意見が出てきました。「なるほどな」と思うことをみんなで共有しながら、クラス全員分のデータを集計したり、200回目に出た数字を集計したりする作業は楽しかったです。他にも、宝くじを1000万枚買ったら当選金額はいくらになるのかをみんなで計算するなど、小学生程度の知識でできることを中学の数学に織り交ぜながらやると、誰もが参加している実感をもてる授業になります。

獨協埼玉中学校/図書館

獨協埼玉中学校/図書館

教材は生徒にとって身近なものやイメージしやすいもの

八木先生 授業がわからないと、ただ座って板書をするだけになってしまうので、中学のうちは特に導入を工夫したり、グループで考えて発表させたりして、数学が好きな子、得意な子も、嫌いな子、不得意の子も、同じ立場で参加することができるような場面づくりをしています。「資料の整理」では生徒たちの定期テストの点数を使っています。もちろん名前は伏せて、学年分の点数を使うと誰のものだかわからなくなります。「どこかに自分の点数があるよ。探してみて」などと言って集計させると、興味をもって取り組んでくれます。「こんな点数の人もいたんだ」「この人、すごくない?」みたいな話も出てきて楽しそうです。

手塚先生 私は証明の授業をやる前に古畑任三郎のビデオを見せたことがあります。あの作品は最初に犯人がわかりますよね。証明も同じで、最初に答えが出ています。そこから論理立てて自白に追い込むという流れが証明と重なるので、考え方をイメージしてもらうために最初の授業に取り入れました。

「数学の問題は、サスペンス作品でいうと推理をしながら犯人探しをし、最後に真犯人が浮かび上がるというオーソドックスな流れだけど、証明は古畑作品」そんな話をすると食いつきがいいです。数学者が出てくる「ガリレオ 容疑者Xの献身」や「博士が愛した数式」などの作品を見せることもあります。中学時代はそういう時間が取れるので、意識づけになりそうなものを見つけるのも楽しみの一つです。

数学の力が急に伸びる生徒がいる

先生方は中高両方の授業を担当されているのですか。

手塚先生 そうです。両方担当している人がほとんどです。

入学後に数学の力を伸ばす生徒さんはいますか。

八木先生 入学当初からすごくできて、そのまま伸びていく子もいますが、数学が苦手だった生徒の中にも、突然、スイッチが入ったり、学んだことがつながったりして伸びていくことがあります。何年か前に、中学時代は学年で片手に入るくらい下位にいた子が、高3の模擬試験で、最初から上位にいた子を抜いた生徒がいました。それを見た時に、早い段階で決めつけてはいけないんだなと思いました。今の生徒たちにも「人間、やる気が大事。自分が『わかりたい』と思えば、勉強するし、力もついていく。現にこういう先輩もいたんだよ」という話をよくします。

獨協埼玉中学校/図書館

獨協埼玉中学校/図書館

将来の夢が背中を押した

なんらかのスイッチが入ったのでしょうね。

八木先生 男の子のほうがそういうことが起こりやすいですね。その子も、中学時代は補習の常連で呼ばれないことがないくらいでした。「高校に上がれるのか」と心配もしたくらい深刻でしたが、しばらく会うことがなく、高2の時に授業を担当すると、習熟度別のAクラスにいたので驚きました。最終的に数学だけは東工大に入った子よりも偏差値が上がって、私は頼りにされなくなりました(笑)。その子に「何があったのか教えてほしい」と聞きましたが、詳しいことは教えてくれませんでした。ただ、その子には夢があって、「挑戦したいと思った時に数学が必要だったので、勉強していくうちにおもしろくなった」と言っていました。

数学では思考の過程を楽しむことが大事

八木先生 伸びていくのは嬉しいことですが、残念ながら逆もあります。小学校時代に算数をしっかり勉強していて頭の回転が速い子の中には、書くことを面倒くさいと感じる子がいます。スッキリ答えが出る爽快感だけでなく、思考の過程を楽しめないと数学を楽しいとは感じないと思います。数学になると設定も複雑になるので、読解力がないと、何を問われているのかわからなくなります。算数はわりと早く答えが出るけれど、数学はそうではないので、算数は得意だったけど数学は苦手、という子も出てきます。6年間あるので、本当に何が起きるかわかりません。いい方に転じてほしいと思っています。女の子は最初からまじめにコツコツやっていきます。おもしろいなと思ったことを吸収して伸びていくので、それはそれでいいと思います。

進路に数学を選ぶ生徒さんはいますか。

手塚先生 多くはないですがいますね。

八木先生 教員志望の子がほとんどです。

手塚先生 数学がおもしろいと思って進んでくれれば嬉しいです。

読書はいろいろな勉強になる

最後に、小学生に向けて勉強の仕方などのアドバイスをいただけますか。

手塚先生 繰り返しになりますが、やはり自分の考えを書ける力、相手が理解できるように伝える力をつけてきてほしいですね。あとは読書ですか。

八木先生 そうですね。本を読んでほしいです。中学2年生では「本を通して人を知る」というテーマでビブリオバトルを開催しました。本が好きな子は多いのですが、子どもたちはゲームなどやりたいことがたくさんあるので、本を読む時間を作ってあげないとなかなか読めません。そこで朝の時間を読書に当てて、読んだ本の中からオススメの1冊を選んで、その理由をみんなに紹介しています。読書が好きな子はいろいろなものに興味をもっています。そこから広がる世界もあると思います。発表を見ていると、言葉の使い方も知っていて、読書はいろいろな勉強になることがわかります。

獨協埼玉中学校/図書館

獨協埼玉中学校/図書館

すべての過去問を記述問題のつもりで解いてみよう

八木先生 学校説明会などで、「記述問題をどう学習すればいいですか」と聞かれることがあります。その時にお話するのが「記述問題だけでなく、小問もすべて記述問題だと思って記述する」という方法です。普段の学習の中で式を立てる理由を説明する。考えた順番どおりに書いていく。この2つをしっかりとやれば、論理立てて考える力や表現する力が身につくと思います。

例えば、本校の過去問をやるにしても、記述問題だけだと問題数が限られます。いろいろな問題で考え方を書く練習をすると、本校の入試問題は単元に偏りがないので、まんべんなくしっかりと学習できると思います。入試では何が出るかわかりませんが、なにかしら使えるものがあるのではないかと思います。

受験生の保護者の方から「算数を見てあげられない」という話もよく聞きますが、この方法なら言葉で考え方の説明がされているので、おそらく読み解くことができると思います。算数に苦手意識のあるお父さん、お母さんが「なるほど、そういうことか」と理解できる答案が書ければ入試でも心配ないですよね。

読書の習慣をつけよう

手塚先生 高校1年生も、8時20分から10分間は読書の時間を設けています。中には勉強している生徒もいますが、意外と時間を設ければ本を読みます。

八木先生 私は「国語を勉強してほしい」と言っています。国語力は数学や英語にも役立つと思います。

手塚先生 解けない子は、何を問われているのかわからないことが多いのです。

八木先生 大学入試でも、読書が好きな子はいろいろな知識をもっていて、文系だけでなく理系でも強いです。国立大を受験するには国語も試験科目になりますが、手が回らないのが実状です。そこで役立つのが中学校までの読書量です。先ほどお話した数学の力が飛躍的に伸びた子もすごく読書をしていました。本が大好きだったようで、最終的には数学の本も読んでいたのではないかと思います。

手塚先生 本校の図書館は利用率が高く、中学生は本当によく利用しています。

八木先生 入学後も本を読める環境ですので、読書の習慣をつけてほしいですね。

インタビュー3/3

獨協埼玉中学校
獨協埼玉中学校1881(明治14)年にドイツを主としたヨーロッパ文化を学ぶことを目的とした獨逸学協会としてスタートし、以後120年間のうちに獨協大学、獨協医科大学、姫路獨協大学、獨協中学・高校を有する総合学園に発展。獨協埼玉高校は1980(昭和55)年に開校。2001(平成13)年に待望の中学校が開校した。
都内と違い、まだまだ多くの自然が残る環境のなか、約8万m2の広大な校地をもつ。300mトラック、サッカー・ラグビー場、図書館棟、和室棟などがある。中学開校に伴い、中学の校舎を新築。普通教室のほか、カリキュラムで使い分ける選択教室が8教室、250名収容の多目的ホールや、各階の談話コーナーのほか談話室を兼ねた食堂もあり、弁当、パンや飲み物を販売する売店も備えている。
教育方針は、自ら考え、判断することのできる若者を育てる。中学では、様々な体験を通じて、自分の目でみて確認する「帰納法的手法」を重視している。
併設大はあるが、他大学進学へのウエートが大きい。英語は中1では週6時間、そのうち2時間は外国人教師による授業で、1クラス2分割の少人数制。指名制・希望制の補習が放課後あり、定期考査後や、学期末にも特別補習を実施する。中3で卒業論文発表に取り組む。毎日10分間の朝学習では、読書、学習チェックの2つの内容で行われる。高校の英・数は習熟度別・少人数授業。伝統のドイツ語は高1から自由選択科目となる。外部進学生とは高2まで基本的に別クラス。
中学のクラブの活動日は週4日で、完全下校を中1は5時半に設定。運動部は陸上、軟式野球部など13、文化部は吹奏楽、演劇部など7、文芸、サイエンスなど7つの同好会がある。授業のほか体、心を鍛える総合学習プログラムがあり、中1では地域の農家の協力を得て稲を育てるネイチャーステージ、中2では将来の進路や就業について調べるキャリアステージや、朝から晩までアメリカン・カウンセラーと生活する「英語ですごす3日間」を体験するコミュニケーションステージ、中3ではボランティアステージなどが用意されている。学校行事は、文化祭、修学旅行、マラソン大会など多彩。希望者対象に中3はニュージーランド、高校はアメリカ語学研修、オーストラリア・ドイツとの国際交流がある。