シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

獨協埼玉中学校

2018年03月掲載

獨協埼玉中学校の算数におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

2.過去問をまんべんなく学習することが合格への近道。

インタビュー2/3

入試のコンセプトは“普通”の問題を出題すること

入試問題を作るにあたり、心がけていることはありますか。

八木先生 普通の問題にしようというのがコンセプトなので、難問奇問は出していません。塾のテキストをきちんと勉強している子が受かる入試問題になるよう意識しています。だから毎年大きくは変わっていないと思います。

数、図形、文章題を柱にバランスよく出題されていると思います。

八木先生 過去の問題を参考に、バランスのいい問題づくり、解答を書きやすい問題づくりを心がけています。特に記述の問題は、書きやすさを重視しています。

手塚先生 学校説明会でも「過去問をやってください」と話しています。特に「大問1では計算ミスをしないようにしましょう」とお伝えしています。

八木先生 記述の問題も、(1)(2)は答えを書くだけにしていて、そこが大問1より簡単であることも伝えるようにしています。

手塚先生 算数は「もう無理」と思えば問題を読むことすらしません。書かなければいけない問題は早々にあきらめてしまいがちなので「(2)までは行けるよ」という話をしています。

八木先生 説明会に足を運んでくださった方は意思をもって受けてくださると思うので、そういう受験生が報われる問題づくりを心がけています。

数学科/手塚 利幸 先生

数学科/手塚 利幸 先生

小問をすべて解ければ60点になる

記述問題で、答えしか書かなければ合っていても×になりますか。

八木先生 そうですね。

プロセスを伝えることができるように学習しなければいけないということですね。

八木先生 考え方のところに「一生懸命考えたらこうなりました」と書いてくる子もいます(笑)。名前の下に「どうしても入りたいです」と書かれていると、入れてあげたいなと思いますが、残念ながらそうはいきません。

手塚先生 全部書き出す子もいます。

八木先生 場合の数などでよく見られますが、それはそれで立派な考え方なので、一つひとつ全部見ます。

平均点を考えて作っていますか。

手塚先生 そうですね。60~70点くらいになるように作っています。もう一つ考えているのは1回目、2回目、3回目のバランスですね。

八木先生 本校の入試問題は小問さえ全部解ければ60点になるので、そこでしっかり点数を取ることができる力をつけてきてほしいです。オーソドックスな問題ばかりなので、手をつけやすいのではないかと思います。

数学が好きな生徒が多い

比較的、算数が好きなお子さんが入ってきているという印象ですか。

手塚先生 例年、内進生が理系をめざす傾向が強いです。
授業でも、数学が好きな生徒は多いと思います。わかる、わからないは別として、食いつきはいいです。

八木先生 算数は差がつきやすい教科です。算数で点が取れると、合格につながりやすいのではないかと思います。

そういう中で工夫をされていることはありますか。

手塚先生 中学校では手順を書かせることを重視しています。

八木先生 考え方を言葉で書いてから式を書くということを基本としています。入試では式だけでも×にしませんが、定期テストの採点はすごく厳しくて、書いてほしいことが書けていなければ減点します。

獨協埼玉中学校/教室

獨協埼玉中学校/教室

授業では、なぜその式なのかと理由を問い続ける

八木先生 授業では、誰かを指名して答えてもらう時に、常に「なぜ?」という問いかけをしています。たとえば今、確率をやっていますが、足したり掛けたり、いろいろなパターンがあるので、「どうして足すの?」「どうして掛けるの?」と必ず聞きます。毎回それをしているので、さすがに頭に残り、聞かれれば答えられるようになります。やみくもに「なんとなく足し算かな」「なんとなく掛け算かな」とやっていて、たまたま答えが合ってしまうと、その時は○だったとしても、考え方が身につきません。ですから常に「なぜ?」と問いかけています。もう1つ、私がしていることは、使いたい式の説明です。「なぜその式なのか」ということを徹底して聞いています。困ると周りの子と「ああかな」「こうかな」と話し始めるので、そういう時は「わからないなら(その式を)使わないでください」と言っています。定期テストでは、そうした授業を踏まえて採点しています。生徒には「あなたはわかっているかもしれない。こちらもわかるけど、誰が見てもわかるように書くことが必要だよ」と話しています。

考え方を問われる新テストも心配ない

手塚先生 入学当初は特に厳しく指導し、身につくにつれて徐々に緩めていくという感じです。高校生に「今まで書いていたけれども、ここは省いてもいいよ」と言うと喜びます。

八木先生 中学生のうちは何を書かなければいけない、書かなくてもいいという判断が難しいので、ある程度フォーマットのようなものを作って、最初に「この3つが大事だから、この順番に書いてみよう」というように、ハードルを下げています。日本語が正しく使えているかも、気にしながら取り組んでいます。

それは教科内の共有事項ですか。

八木先生 はい。本校の数学科では、今回の問題も同様、どういう理由でその式が成り立っているのかをきちんと考え、説明できる力をつけることに重点を置いています。新テストでも、自分の考え方をきちんと説明できる力が求められます。そういう意味では対応ができていると思います。

獨協埼玉中学校/廊下

獨協埼玉中学校/廊下

数学が苦手な子も取り組みやすい授業ができている

手塚先生 生徒の中には「証明が好き」という子が少なくありません。

八木先生 「面倒くさい」という子もいますけどね。

手塚先生 中学の数学では合同証明をやりますよね。ああいうものも仮定から結論まで全部書かせています。

八木先生 「1つ理由がなければ、=(イコール)を使ってはいけない。=を使うなら、その前に理由を書きなさい」と言っています。それをしていないと、その下は全部×にするのできちんとやります。「これは自明だから書かなくていい」など、省ける場合には省ける理由があるので、それが自分でわかるようになるまでは、面倒でも全部書くことを徹底しています。

手応えを感じますか。

八木先生 数学が苦手な子にとっては、こういうふうにやれば解けるということがわかるのでいいと思います。似たような問題を見ながら、「写してもいいからその通りにやってごらん」と言うと「そうか」という感じで、問題に取り組んでいます。得意な子は、自分でどんどんやっていくのでいいのです。中学の間は苦手な子も同じように勉強していくので、そういう意味では参考になるものがあり、道筋を立てて解決にたどりつけるようにしてあげることが必要なのではないかと思います。

インタビュー2/3

獨協埼玉中学校
獨協埼玉中学校1881(明治14)年にドイツを主としたヨーロッパ文化を学ぶことを目的とした獨逸学協会としてスタートし、以後120年間のうちに獨協大学、獨協医科大学、姫路獨協大学、獨協中学・高校を有する総合学園に発展。獨協埼玉高校は1980(昭和55)年に開校。2001(平成13)年に待望の中学校が開校した。
都内と違い、まだまだ多くの自然が残る環境のなか、約8万m2の広大な校地をもつ。300mトラック、サッカー・ラグビー場、図書館棟、和室棟などがある。中学開校に伴い、中学の校舎を新築。普通教室のほか、カリキュラムで使い分ける選択教室が8教室、250名収容の多目的ホールや、各階の談話コーナーのほか談話室を兼ねた食堂もあり、弁当、パンや飲み物を販売する売店も備えている。
教育方針は、自ら考え、判断することのできる若者を育てる。中学では、様々な体験を通じて、自分の目でみて確認する「帰納法的手法」を重視している。
併設大はあるが、他大学進学へのウエートが大きい。英語は中1では週6時間、そのうち2時間は外国人教師による授業で、1クラス2分割の少人数制。指名制・希望制の補習が放課後あり、定期考査後や、学期末にも特別補習を実施する。中3で卒業論文発表に取り組む。毎日10分間の朝学習では、読書、学習チェックの2つの内容で行われる。高校の英・数は習熟度別・少人数授業。伝統のドイツ語は高1から自由選択科目となる。外部進学生とは高2まで基本的に別クラス。
中学のクラブの活動日は週4日で、完全下校を中1は5時半に設定。運動部は陸上、軟式野球部など13、文化部は吹奏楽、演劇部など7、文芸、サイエンスなど7つの同好会がある。授業のほか体、心を鍛える総合学習プログラムがあり、中1では地域の農家の協力を得て稲を育てるネイチャーステージ、中2では将来の進路や就業について調べるキャリアステージや、朝から晩までアメリカン・カウンセラーと生活する「英語ですごす3日間」を体験するコミュニケーションステージ、中3ではボランティアステージなどが用意されている。学校行事は、文化祭、修学旅行、マラソン大会など多彩。希望者対象に中3はニュージーランド、高校はアメリカ語学研修、オーストラリア・ドイツとの国際交流がある。