シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

今月の額面広告に掲載されている問題はこれだ!

獨協埼玉中学校

2018年03月掲載

獨協埼玉中学校【算数】

2018年 獨協埼玉中学校入試問題より

AとBがじゃんけんをし、勝った方が階段をのぼるゲームをします。
グーで勝ったときは3段、チョキで勝ったときは6段、パーで勝ったときは6段のぼることができます。

(問)何回かじゃんけんをして、相手より上の段にいるためには、グー、チョキ、パーどれを多く出すと良いと思いますか。
理由も答えなさい。

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには各中学の「こんなチカラを持った子どもを育てたい」というメッセージが込められています。
では、この獨協埼玉中学校の算数の入試問題には、どういうメッセージが込められていたのか、解答・解説と、日能研がこの問題を選んだ理由を見てみましょう。(出題意図とインタビューの公開日については更新情報をご確認ください。)

解答と解説

日能研による解答と解説

解答例

(例)チョキを多く出すと良い

(理由)
勝ったときにのぼる段数は、グーよりもチョキとパーが多い。チョキとパーは、勝ったときにのぼる段数は等しいが、負けたときに相手がのぼる段数がチョキの場合3段、パーの場合6段となるので、負けたときに差がつきにくいのはチョキだから。

解説

ここでは、相手が戦略的な駆け引きをせずに、ランダムにグー、チョキ、パーを出してくるものと仮定して考えることにします。
このとき、自分が出す手それぞれについて、次のように有利不利を判断することができます。

自分がグーを出したとき
相手がグーを出してきたらあいこ。差は変わらない。
相手がチョキを出してきたら勝ち。自分が3段のぼる
相手がパーを出してきたら負け、相手が6段のぼる
つまり、自分が勝っても3段しかのぼれないうえに、負けたら相手が6段ものぼってしまう。
不利
自分がチョキを出したとき
相手がグーを出してきたら負け。相手が3段のぼる
相手がチョキを出してきたらあいこ。差は変わらない。
相手がパーを出してきたら勝ち、自分が6段のぼる
つまり、自分が勝ったら6段のぼれるし、負けても相手は3段しかのぼれない。
有利
自分がパーを出したとき
相手がグーを出してきたら勝ち。自分が6段のぼる
相手がチョキを出してきたら負け。相手が6段のぼる
相手がパーを出してきたらあいこ、差は変わらない。
つまり、自分が勝ったら6段のぼれるが、負けたら相手に6段のぼられてしまう。
⇒ 有利でも不利でもない。

以上より、チョキを多く出すと、相手よりも上の段にいる可能性が高くなるといえます。

補足1
チョキを多めに出すという方法は、自分が上の段に来る可能性が高まるだけであって、「必ず自分の方が上の段に来る」という必勝法ではありません。自分がチョキを多めに出すことを相手に感づかれたり、相手も上記の考え方を知っていたりして、あえて相手がグーを多めに出してきた場合、相手の方が上の段に来ることも考えられます。

補足2
補足1で述べたように、相手も上記の考え方を知っていると考えれば、「グー」を選択することも戦略的な方法の1つです。さらにその先を読んで、「パー」を出した方が可能性が高まる状況もあり得るでしょう。

参考
相手も戦略的に手を出してくると仮定したとき、出す手の割合を、グー:チョキ:パー=2:2:1となるように出すと、少なくとも相手に負けない可能性が最も高くなることがわかっています。(このことを導くには、高等教育で学ぶ数学の知識が必要です。)

日能研がこの問題を選んだ理由

だれもが一度はやったことがある遊びが素材となっています。チョキは「チ・ヨ・コ・レ・イ・ト」の6段、パーは「パ・イ・ナ・ツ・プ・ル」の6段、グーは「グ・リ・コ」の3段、のように、実際のルールと合致している点にも親しみが持てます。(ただし、地域によってルールが異なる場合もあるようです。)

さて、この問題で問われていることは、「相手よりも上の段にいるためには、グー、チョキ、パーのどれを多く出すと良いと思いますか。」です。多く出した方が良い手は見当がついても、なぜその手を多く出せばよいのかという論理の組み立ては様々考えられます。そして、それを相手に伝える方法も多様です。問題文の問いかけ方に目を向けてみても、「良いですか。」とはせずに、「良いと思いますか。」となっています。ここには、「いろいろな理由のつけ方が考えられますが、あなたはどれを『あなたの考え方』としますか。」というメッセージが読み取れます。

算数という、一見答えが1通りにしか決まらなそうな科目の入学試験において、論理の組み立て方や表現など、多様な“考え方”と出あえる問題が出題されています。このような理由から、日能研ではこの問題を□○シリーズに選ぶことに致しました。