シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

藤嶺学園藤沢中学校

2018年02月掲載

藤嶺学園藤沢中学校の理科におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

3.「修養」「茶道」といった教育を通じ、勝負どころで平常心を保つことができる生徒に育てる

インタビュー3/3

積極的に授業参加してもらうための課題作成

理科教育において中高生に身に付けさせたいことはありますか?

永井先生 目標を達成するために何をすればいいのかというのを考えられる生徒を理科では育てたいですね。自分で考えて自分で調べて、自ら学べるようになる力を育みたい、という意見が理科の教員の中では多かったです。それに向けて授業中にはプリントを配布します。それを自分で予習して埋めて考えてから授業に臨んでもらう、といったスタイルを取っています。単純にテストの点数だけでなく、授業中の取り組みや発言も評価に含んでいます。今の生徒は放っておいたら予習は全然しませんので、あえて早めにプリントを配布して、それを穴埋め形式にしてやってもらえるような取り組みをしています。

藤嶺学園藤沢中学校 理科新聞

藤嶺学園藤沢中学校 理科新聞

教員が作る理科新聞

教育方針について先生同士の研究会・話し合いは行いますか?

永井先生 いつ何曜日という形で決めているわけではないですが結構集まって話すことはあります。授業についてだったり、研究授業的なものとして他の先生の授業を見に行ったりもあります。
また、教員たちで理科新聞というものを作成しています。生徒が興味を持てるような内容を理科の先生が順番で記事を書いて中学・高校の各教室に掲示しており、最近の記事ですと、深海ザメが捕獲されたというニュースや、新たな元素が発見された、といったニュースを取り扱いました。ちなみに私がこの間書いた記事は「マンボウは食べられますよ」という記事で、生物部で江の島に釣りに行ったりしますが、市場にマンボウが水揚げされ普通に売られています。私もまだ食べたことがないのですが、鳥のささ身みたいな食感だそうです。ぜひ関心があったら食べてみてください。

幅広い分野で活躍する卒業生

卒業生の進路についてどのような道に進まれている生徒が多いですか?

永井先生 進路はまちまちです。警察官になっている生徒もおりますし、テレビ局に入社した生徒もおります。その関係で私もテレビに出演したこともあります。弁護士になった生徒も最近はぽつぽつと出てきました。他には医者になっている生徒もいまして、そういう生徒は非常に重宝します。何か体に不安があったらメールして対処方法を教えてもらっています。

精神修養や立ち振る舞いを学ぶ授業が魅力

藤嶺学園は「時宗」を母体とした仏教系の学校ですが、何か理念と関係ある教育はされていますか?

永井先生 本校は校舎に隣接する遊行寺を総本山とする時宗の僧侶を教育する機関が前身となっています。もちろん遊行寺の本堂に行く機会もありますし、手を合わせて登下校する生徒も多いです。
高校では「修養」という時間があり、高校1年生は月に1回、2年生は学期に1回、3年生は年1回という形で精神修養があります。また、立ち振る舞いといった作法を学ぶ「茶道」の時間もあります。そのような学びは大学受験において平常心を保つのに大変役立っています。意外と雰囲気にのまれて自分の力を発揮できない生徒も多いのですが、受験や社会における勝負所で平常心を保てるよう、厳しい教えをいただいております。

時宗総本山清浄光寺

時宗総本山清浄光寺

海外語学研修を通じ一気に成長する生徒たち

今グローバルの時代ですから日本を語れるものがあって非常によいですね?

永井先生 グローバルは昨今いろいろな場所で語られているので良さは感じます。現在交換留学生はいないのですが、オーストラリアとニュージーランドには海外語学研修に行っています。海外での経験は生徒たちの大きな刺激となっていまして、帰国後にやる気のスイッチが入る生徒も多いです。グローバル系に興味を持ってその方面の大学に進学する生徒も増えています。

最後に受験生にメッセージをお願いいたします。

永井先生 言われたことを素直に聞いて、自分の力で発展させる「理解力」、学んだことを基にしてよりよい生活を実現するために何ができるのか?自分なりの新たな取り組みをする「発想力」、自分だけが理解して満足するのではなく、人と協働する、そのためにきちんと相手に伝えていくための「発信力」、この3つを本校では育てていきたいと思います。加えて理科としては「科学的ウソを見抜けるチカラ」も育みたいですね。

藤嶺学園藤沢中学校 茶室

藤嶺学園藤沢中学校 茶室

インタビュー3/3

藤嶺学園藤沢中学校
藤嶺学園藤沢中学校藤嶺学園の前身は時宗総本山清浄光寺(遊行寺)の僧侶養成機関「時宗宗学林」である。「時宗」を開いたのは、鎌倉時代に念仏と遊行に徹し、捨聖と呼ばれた一遍上人。藤嶺学園は、その教えを根本とし、情操豊かな人格の涵養を目指して、1915年(大正4年)に創立され、2015年に創立100周年を迎えた。校章は、遊行寺の大イチョウをデザイン化し、「雄々しくたくましく大きく伸びよ」という意味が込められている。
21世紀の国際社会でリーダーシップを発揮する人材となるよう、日本人としての自覚・アイデンティティを身につけることを教育の根本と考えている。茶道・剣道を5年間正課の授業とし、今年度より陶芸も総合学習で実施したのは、日本を知るからこそ外国との違いもわかり、理解・尊重することができるためだ。中3で北京研修、高2修学旅行は台湾・ベトナム・国内から選択する。また、アジアからの研修生も受け入れており、T・T(チーム・ティーチング)や放課後自習室で学びを深めている。
大学受験があってもなくても勉強する姿勢を貫くことを教育の根幹としている。文系であっても理系であっても、これからの社会の中で生き抜いていくのに不可欠な力を身につけるため、カリキュラムは高校2年次まで5教科7科目で編成している。中学1年次で体育の授業をネイティブの教員と日本人体育教員とのT・T(チーム・ティーチング)で行うという取り組みも行っている。
一人ひとりが時間を意識して行動する人間に成長するよう、授業開始・終了時にチャイムは鳴らない。社会人として時間を守ることは必須条件であり、そのことを意識して生徒は授業に臨む。また、ロッカーにはカギが無い。仲間との信頼関係を築くことと、自己管理を徹底することが目的だ。生徒はロッカー内を誰に見られてもはずかしくないよう、整理整頓の習慣を身につけていく。