シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

藤嶺学園藤沢中学校

2018年02月掲載

藤嶺学園藤沢中学校の理科におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

2.実験や授業を通じ、論理思考や仮説検証力、自主性を鍛える

インタビュー2/3

経験を視覚的に得られる動画コンテンツも活用

実験についてはどのようなことを意識して行っているのですか?

永井先生 本校の理科としては、実験を通して教科書に載っている事象を実体験させて確認してもらいます。化学と物理は特に行います。もちろん生物も行っているのですが、高校で学ぶ生物のボリュームは非常に多い上、それなりの施設が必要になってくるので、実験ができないものは資料集などを見せるということをしています。最近はYouTubeといった動画を利用することも増えてきました。実験を視覚的に見せるために、動画によってあたかも実体験しているような感覚を持ってもらうようにしています。海外のものも含めて一番視覚的にわかりやすいものをピックアップして見てもらいます。生徒受けは非常にいいです。

藤嶺学園藤沢中学校 理科室

藤嶺学園藤沢中学校 理科室

実験を通じ仮説検証できる子を育む

生徒が自分なりに思いついた仮説に対し、実験を組み立てるという取り組みはいかがですか?

永井先生 正直その部分についてはなかなか時間が割けないでいますが、やらなければいけないと思っています。現在は、大学入試に関してもオリジナリティある考察をさせるというよりは、「こういう結論を導くためにはどういう実験をしたらいいですか?」といった既成の実験に関する出題がメインになっていますので、どうしてもこちらから問いを投げかけてしまう形になってしまっていますね。今後の本校の教育改革では、仮説検証を自分でできるような生徒を育てていかなければならないと思っています。

中学入学と高校入学の生徒が別々に学ぶ教育体制

中学からと高校からの入学比率はどれくらいになりますか?

永井先生 中学からの入学の生徒で大体3クラス、高校からの入学は2クラスです。高校からの入学者はクラスが完全に別になります、どうしても中高一貫の生徒のほうが先取りで授業をやっていく関係でそれぞれの学習進度に差が出ますから、高校から入ってくる生徒も混ざらないほうがいいと言いますね。部活や行事では混ざりますが、授業では別々に面倒見てもらいたい、という親御さんのご意向もありますので混ざらないことでご安心して預けて頂けている感じがあります。

藤嶺学園藤沢中学校 理科室の植物

藤嶺学園藤沢中学校 理科室の植物

素直に聞いて、行動する姿勢

中学を開校してどれくらいになりますか?また生徒の変化についてどのように感じられますか?

永井先生 中学は17年近く(2001年開校)になりますが、やはり、同じように教えていても昔に比べ理解度に差がありますね。しっかり前を向いて話を聞いているのですが、内容を理解するのに時間がかかる生徒が以前よりも増えているように感じます。いろいろな先生とも話をしておりますが、文章を正確に読み取るリーディングスキルが身についてないように思います。自分の思い込みで判断してしまうからでしょうか。やはり、自分の力で物事を考えることが大切なんだと思います。

それはどのような理由によるとお考えですか?

永井先生 保護者の方の話もよく伺いますが、やはり子供をかわいがりすぎてしまっている傾向にあるように思います。親御さんがすべて大学受験計画を立てて、子供はその部分に全くタッチせず出願も親がしてしまうパターンだと合格が難しい、という気がしております。むしろ「進路についてはうちの子に任せていますので」といった家庭や、生徒が受験手続を親御さんに頼もうとする際に「自分の受験だから全部自分でやりなさい」と言ってすべて自分で対応させる家庭のほうが、結果につながっています。

課題の提出期限を守れない生徒たち

宿題は出されていますか?提出率はどんな感じですか?

永井先生 宿題・課題はもちろん出していますが、提出率は昔に比べ落ちているように感じます。本校の場合は厳しく出すように指導していますが、期限を守れない生徒も出てきています。

提出はするけれども、ですか?

永井先生 提出はしてくれるのですが、期限に1日2日遅れても特段意識もなく、担任の先生に注意されてやっと出すみたいになっていますね。昔の生徒は出すためにどのようなスケジュールで課題をやらなければいけないか自分で計算できていましたが、最近はそういったことを自分で考えつかない生徒が増えています。先ほどもお話ししましたが、親が手を出しすぎてしまって考えられなくなっているのではないか、という気がします。

藤嶺学園藤沢中学校 理科室

藤嶺学園藤沢中学校 理科室

生徒のやる気スイッチを入れる仕掛け

学校の育成方針として課題の提出について計画性を鍛えるといった取り組みはありますか?

永井先生 この部分はなかなか難しく、精神の成長が伴わないとできない問題です。本校ですと中学1年生は比較的素直なのですが、2年生3年生になって自我が芽生えてくると、きちんとできなくなる、というのが目立つようになってきます。それが高校生になると一変します。個人差はありますが、普段接する先生が大きく変わったり、校舎が変わったりといった環境の変化に伴い徐々に成長が見られます。もちろん高校は義務教育ではないのできちんと成績を出さないと進級できないといったことにつながる、というのもあるかもしれません。本校の生徒は特に中学3年生になると学力を伸ばす生徒が多いです。進学イベントを契機としてやる気スイッチが入ると、結構学力は伸びます。我々教員はいつ生徒のスイッチが入ってくれるか、と様々な仕掛けをしています。どの段階でスイッチが入るかわかりませんので、ある段階でスイッチが入っていなくて学力が低かったとしても、決して能力が低いとは思っていません。

昨年東大に入った生徒もいらっしゃるとのことですが

永井先生 中学から入ってきた子でした。自分が興味をもったことにのめりこむタイプでしたが、同じように授業を聞いて育ってきていました。特に孤立して自分の世界に入っていた、というわけではありません。個は持っていましたが、6年間他の生徒とも一緒にいますので普通に友達とは付き合っていましたね。

インタビュー2/3

藤嶺学園藤沢中学校
藤嶺学園藤沢中学校藤嶺学園の前身は時宗総本山清浄光寺(遊行寺)の僧侶養成機関「時宗宗学林」である。「時宗」を開いたのは、鎌倉時代に念仏と遊行に徹し、捨聖と呼ばれた一遍上人。藤嶺学園は、その教えを根本とし、情操豊かな人格の涵養を目指して、1915年(大正4年)に創立され、2015年に創立100周年を迎えた。校章は、遊行寺の大イチョウをデザイン化し、「雄々しくたくましく大きく伸びよ」という意味が込められている。
21世紀の国際社会でリーダーシップを発揮する人材となるよう、日本人としての自覚・アイデンティティを身につけることを教育の根本と考えている。茶道・剣道を5年間正課の授業とし、今年度より陶芸も総合学習で実施したのは、日本を知るからこそ外国との違いもわかり、理解・尊重することができるためだ。中3で北京研修、高2修学旅行は台湾・ベトナム・国内から選択する。また、アジアからの研修生も受け入れており、T・T(チーム・ティーチング)や放課後自習室で学びを深めている。
大学受験があってもなくても勉強する姿勢を貫くことを教育の根幹としている。文系であっても理系であっても、これからの社会の中で生き抜いていくのに不可欠な力を身につけるため、カリキュラムは高校2年次まで5教科7科目で編成している。中学1年次で体育の授業をネイティブの教員と日本人体育教員とのT・T(チーム・ティーチング)で行うという取り組みも行っている。
一人ひとりが時間を意識して行動する人間に成長するよう、授業開始・終了時にチャイムは鳴らない。社会人として時間を守ることは必須条件であり、そのことを意識して生徒は授業に臨む。また、ロッカーにはカギが無い。仲間との信頼関係を築くことと、自己管理を徹底することが目的だ。生徒はロッカー内を誰に見られてもはずかしくないよう、整理整頓の習慣を身につけていく。