シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

藤嶺学園藤沢中学校

2018年02月掲載

藤嶺学園藤沢中学校の理科におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

1.湧き出る疑問になんでも興味を持ってくれる生徒になってもらいたい、という想い

インタビュー1/3

多くの研究者の実験の積み重ねのもとに仕組みが成り立っている

光合成の仕組みの内容を取り上げた意図を教えていただけますか?

永井先生 生物の授業内容において「光合成」と「呼吸」というのは「代謝(体内で起こるようないろいろな反応)」の中でも大きな柱となってくる部分です。その光合成については学習の最重要項目となりますので出題してみた、ということになります。
一人の研究者が一つの反応を全て見ていく、という形はもちろんあるのですが、この光合成に関しては多くの科学者が昔からいろいろな研究をする中で少しずつわかってきたものです。私としましては、科学者たちが自分なりにテーマを決め、それを調べるにはどういう実験をすればよいのか?を考え、実験を積み重ねた、という事象によって光合成という大きな仕組みの解明ができている、ということを理解してもらいたいと思い、そういった主旨の出題となりました。

理科/進路指導主任 永井 規之先生

理科/進路指導主任 永井 規之先生

知らない名前があっても問題が解けるように文章を考慮

この問題の正答率はいかがでしたか?

永井先生 へルモントの実験とザックスの実験の正答率は90%以上と高かったのですが、プリーストリー、インゲンホウス、ソシュールに関してはちょっと難しかったようで、60~75%程度の正答率でした。全体的には60%ぐらいの正答率でしたが、正直もう少し高くてもよかったなと思いました。選択式なので勘でも選べますし、意外と文章を読んでしっかり理解できるという生徒ばかりではなかった印象です。

ザックスの実験は小学校でも教科書で触れている範囲なので、ザックスという言葉は出てこないのですが学校で「光合成の実験をしましょう」だとこの内容(ザックスの実験)になります。名前を見て知らないとあきらめてしまうと問題ができなくなってしまいます。

問題を解く順番も重要

問題に最後まで行きつかない生徒も多いのですか?

永井先生 はい、います。解き方として本校でもご案内していますが、物理・化学は計算問題のため難しいこともありますので、生物・地学を先に解いて、残りの時間で物理・化学を解くという生徒が多いため、問題を解くにあたり、まずこの問いから解いていった生徒も多かったと思います。

藤嶺学園藤沢中学校 校舎

藤嶺学園藤沢中学校 校舎

与えられた事象からさらに掘り下げて興味をもって調べる力を

実験者の名前や年代を出すというのは何か意図がありましたか?

永井先生 たった一人の科学者の実験として終わるのでなく、一つの実験を多くの科学者が検証していき、時間が経つにつれ少しずつ分かってくることがあります。この問題は後者にあたりますが、多くの実験者の名前や年代から推測される時代背景に触れ、より詳しい内容に興味を持ってもらいたい、という想いが伝われば良いとは思っていました。

シンプルに解答にたどり着ける工夫を凝らす

設問の文章表現で気を付けた点というのはありましたか?

永井先生 そうですね、小学生でもシンプルに答えにたどり着ける文章にするように考慮しました。実際には取り上げた科学者が別の実験もしていますので、そういったことまで調べてみようと思ってくれると理科が好きになってくれると思います。結構いい加減な実験も多く、こんな実験でも名前が残っている人もいるのだなという人もいますしね。

藤嶺学園藤沢中学校「勇猛精進」

藤嶺学園藤沢中学校「勇猛精進」

創意工夫ができる生徒は伸びる

このような問題が得意な生徒像ってありますか?

永井先生 指示されてその通りにやるという生徒も多いのですが、「なんでこのようにやらなければならないのだろう?」「もっとこうやったら簡単なのに」と自分なりに日々考えているような生徒もいます。そのような生徒はこのような考察問題は解きやすいと思います。言われたままにやるよりは、自分なりに答えを突き詰めて、何にでも工夫していける生徒が当てはまるのではないでしょうか。

入試で解いた問題などについて入学してきた生徒と先生が話すような機会はあるのですか?

永井先生 本校は生徒数もそれほど多くないので生徒は気兼ねなく質問しにやって来ます。私は生物部の顧問でもありますが、部活に入ってくる生徒たちも多くいますし、彼らと話す機会は多いです。これまでに印象に残っている生徒の中には、魚の歯を研究している生徒がおりまして、いろいろな魚を釣ったり、市場で魚を分けてもらって写真を撮ったりと研究していました。卒業後は海洋関係の大学に進学して、現在は研究者になろうとしています。

たっぷり時間をかけて問題を作成

入試問題の作成について教えてください。

永井先生 各科目の先生は2名ずつおりまして、それぞれの先生が問題を作り、各自持ち寄って問題を解き出題項目を検討しています。トータルで3回分の問題を作ります。毎回問題検討会議では熱い議論を交わしています。とにかくトータルで時間内に終わらせるような難易度にしなければなりませんので、例えば「今回は計算が多すぎないか?」「難しすぎないか?」と、常に試行錯誤しながらやっています。検討過程でボツになる問題も多数ありますよ。

問題作成にどれくらいかかるのですか?

永井先生 先生たちには夏休みの間に問題を作ってきてもらいます。夏休み明けに提出してもらい、作った問題をみんなで回して解いて確認していきます。今まさに最終の読み合わせをしていますが、問題作りから入れると4~5か月たっぷり時間をかけて作成しています。

藤嶺学園藤沢中学校 サブグラウンド

藤嶺学園藤沢中学校 サブグラウンド

インタビュー1/3

藤嶺学園藤沢中学校
藤嶺学園藤沢中学校藤嶺学園の前身は時宗総本山清浄光寺(遊行寺)の僧侶養成機関「時宗宗学林」である。「時宗」を開いたのは、鎌倉時代に念仏と遊行に徹し、捨聖と呼ばれた一遍上人。藤嶺学園は、その教えを根本とし、情操豊かな人格の涵養を目指して、1915年(大正4年)に創立され、2015年に創立100周年を迎えた。校章は、遊行寺の大イチョウをデザイン化し、「雄々しくたくましく大きく伸びよ」という意味が込められている。
21世紀の国際社会でリーダーシップを発揮する人材となるよう、日本人としての自覚・アイデンティティを身につけることを教育の根本と考えている。茶道・剣道を5年間正課の授業とし、今年度より陶芸も総合学習で実施したのは、日本を知るからこそ外国との違いもわかり、理解・尊重することができるためだ。中3で北京研修、高2修学旅行は台湾・ベトナム・国内から選択する。また、アジアからの研修生も受け入れており、T・T(チーム・ティーチング)や放課後自習室で学びを深めている。
大学受験があってもなくても勉強する姿勢を貫くことを教育の根幹としている。文系であっても理系であっても、これからの社会の中で生き抜いていくのに不可欠な力を身につけるため、カリキュラムは高校2年次まで5教科7科目で編成している。中学1年次で体育の授業をネイティブの教員と日本人体育教員とのT・T(チーム・ティーチング)で行うという取り組みも行っている。
一人ひとりが時間を意識して行動する人間に成長するよう、授業開始・終了時にチャイムは鳴らない。社会人として時間を守ることは必須条件であり、そのことを意識して生徒は授業に臨む。また、ロッカーにはカギが無い。仲間との信頼関係を築くことと、自己管理を徹底することが目的だ。生徒はロッカー内を誰に見られてもはずかしくないよう、整理整頓の習慣を身につけていく。