シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

今月の額面広告に掲載されている問題はこれだ!

藤嶺学園藤沢中学校

2018年02月掲載

藤嶺学園藤沢中学校【理科】

2017年 藤嶺学園藤沢中学校入試問題より

光合成のしくみを「光合成に必要なもの」と「光合成によってできるもの」によってまとめると、つぎのような式で表されます。

光合成のしくみ

この式で表されている光合成のしくみは、いろいろな学者の研究によってわかってきたのです。

(問)下の[A]~[E]の実験は、光合成のしくみの理解につながった学者の研究内容です。
[A]~[E]の実験によって、上の光合成のしくみのどの部分がわかったのかを、①~⑤からそれぞれ1つだけ選び、番号で答えなさい。ただし、同じ番号をくり返し使って答えてはいけません。

  • [A]ヘルモントの実験(1648年)
    ヤナギの鉢(はち)植えに水のみを与えて5年間育てたところ、ヤナギの重さは約74.5㎏増えた。しかし、ヤナギを植えてあった鉢(はち)の中の土の重さは約56.5gしか減っていなかった。
  • [B]プリーストリーの実験(1772年)
    ふたのできるガラス容器の中に、火のついたロウソクとネズミを入れたものを用意した。つぎに、葉のついたハッカの枝を入れ、ふたをして閉じた。すると、ロウソクの火は燃え続け、ネズミは死ななかった。しかし、葉のついたハッカの枝を入れずに閉じた場合は、ロウソクの火は消え、ネズミは生きていられなかった。
  • [C]インゲンホウスの実験(1779年)
    プリーストリーの実験と同じように、閉じたガラス容器に葉のついたハッカの枝を入れておいても、日かげや夜間ではロウソクの火は消え、ネズミは生きていられなかった。
  • [D]ソシュールの実験(1804年)
    閉じたガラス容器の中にテンニンカという植物を入れ、光を当ててしばらくおくと、容器の中の二酸化炭素はなくなり、テンニンカの中の炭素の量が増えた。
  • [E]ザックスの実験(1864年)
    緑の葉の一部を黒い紙でおおって、光を当ててしばらくおいた。その葉をアルコールで脱(だっ)色した後にヨウ素液にひたすと、光が当たった部分は青紫(むらさき)色に変わるが、光が当たらなかった部分は青紫(むらさき)色に変わらなかった。

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには各中学の「こんなチカラを持った子どもを育てたい」というメッセージが込められています。
では、この藤嶺学園藤沢中学校の理科の入試問題には、どういうメッセージが込められていたのか、解答・解説と、日能研がこの問題を選んだ理由を見てみましょう。(出題意図とインタビューの公開日については更新情報をご確認ください。)

解答と解説

日能研による解答と解説

解答
  • [A]①
  • [B]⑤
  • [C]③
  • [D]②
  • [E]④
解説
  • [A]ヤナギには土と水を与えています。5年間でヤナギの重さは増えたのに対して土の重さはほとんど減っていないことから、ヤナギの重さが増えた原因の1つに水が考えられます。このことから、植物は水をもとに成長していることがわかり、光合成のしくみの①の理解につながったととらえることができます。
  • [B]ロウソクが燃え続けたり、ネズミが生き続けたりするためには、酸素が必要となります。ハッカの枝を入れた容器でロウソクが燃え続けたことから、植物には酸素を排出する働きがあると考えることができます。このことから、光合成のしくみの⑤の理解につながったととらえることができます。
  • [C][B]の実験と合わせて、日かげや夜間では、ハッカの枝が酸素を出すことにつながらなかったことから、植物が酸素を排出する働きは、光が当たらないと行われないと考えることができます。このことから、光合成のしくみの③の理解につながったととらえることができます。
  • [D]植物に光を当ててしばらくすると、容器内の二酸化炭素が無くなったことから、植物には、二酸化炭素を吸収する働きがあると考えることができます。このことから、光合成のしくみの②の理解につながったととらえることができます。
  • [E]ヨウ素液にひたすと、光を当てた部分が青紫色に変化したことから、植物にはでんぷんをつくり出す働きがあると考えることができます。このことから、光合成のしくみの④の理解につながったととらえることができます。
日能研がこの問題を選んだ理由

光合成のしくみを明らかにした実験について考える問題です。子どもがテキストや教科書で目を向ける現象は、過去に多くの科学者が実験によって解き明かし、まとめたものです。テキストや教科書に載っているしくみを単に覚えるのではなく、そのしくみを解き明かすまでの過程に目を向けることで、学びの世界が広がっていきます。

日能研では、問題が刺激となり、既知の枠を超えて、未知の内容へと考えを進めていくことや、その場で試行錯誤しながら、見慣れていないものと見慣れたものを結び付けていく過程を楽しむことが大切だと考えています。このような理由から、日能研ではこの問題を□○シリーズに選ぶことに致しました。