シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

茗溪学園中学校

2018年02月掲載

茗溪学園中学校の国語におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

3.自分の中に「ものさし」を持って読み解く

インタビュー3/3

グループワークは「学習リーダー」が進行役

町田先生 本校の国語の授業は討論形式が多く、「誰かが発言・発表すればいい」というわけにはいきません。班の話し合いも喧々囂々、互いに意見をぶつけ合います。
みんなが意見を言いやすいように、班構成は3~4人の少人数とし、進行役の「学習リーダー」を設けます。私の授業では学習リーダーは立候補制です。学習リーダーには「一人ずつ意見を聞いていって」「意見が出なかったら自分から意見を出して、みんなに投げかけて」など、話し合いの進行についてアドバイスします。

町田 雅弘先生、佐藤 賢士先生

町田 雅弘先生、佐藤 賢士先生

テーマをつかむ「クライマックスの一文探し」

町田先生 本校では「科学的読み」を取り入れています。小説は「構造読み」「形象読み」「主題読み」を、評論は「構造読み」「論理読み」「吟味読み」という読み方を通して、作品全体を俯瞰できるようになります。

「構造読み」は、まず作品がどのように段落分けされているかをつかみます。その際、クライマックスを表現する一文を探し、その根拠について討論します。例えば『走れメロス』は、人を信じられない暴君の「わしも仲間に入れてくれまいか」を挙げた班もあれば、メロスが到着して「つり上げられていく友の両足にかじりついた」という間に合ったシーンの一文を選んだ班もありました。
前者の根拠は「王様とメロスの勢力の逆転ではないか」、後者は「約束を守れたことで、人を信じることを証明できたのではないか」というように、いろいろな意見が出て、「そういう読み方もできるんだ」と気づき、多面的な読み方ができるようになります。

こうした意見はこちらの恣意的な質問によるものではなく、生徒たちから自発的に出てきます。中には「みんなが同じ意見ではおもしろくないから」と、正しい意見がわかっていても、あえて違う意見をひねり出すグループもあります。

「形象読み」で作者のサインから人物像を構築

町田先生 「構造読み」の次に行う「形象読み」は、登場人物などの設定をとらえます。例えば、登場人物が身にまとう色のイメージから、その人物のキャラクターが想像できます。「赤」であれば、活動的、目立ちたがり、負けず嫌いなど。作者が間接的に投げたサインから、人物像を構築していきます。文章の一部を取り上げて、「この中でどの言葉に注目すると設定がわかるか」というように、構造読みとは質問の仕方を変えます。
こうした読み方指導は国語科全体で統一しています。学年が上がって教え方が変わることはありません。週1回、次回までの授業の確認と、どのような発問が有効か、うまくいった事例を教員間で共有しています。

茗溪学園中学校 廊下

茗溪学園中学校 廊下

「あ、そうか」と気づく瞬間をたくさん作りたい

町田先生 一つの読み方だけですべてを賄えるわけではありませんが、一つの指標(ものさし)にはなるかなと思います。映画を見たときなど普段の生活でも、授業で習ったクライマックスのとらえ方を自問自答して応用できればいいなと思います。

子どもたちのやり取りで「あ、そうか」というひと言が出ると、「いいぞ」と思います。

町田先生 「あ、そうか」のひと言は、こちらが誘導しても発せられるものではありません。生徒同士の話し合いの中で合点がいったときに出てきます。
国語の場合は作者が張った伏線を見つけて回収しながら、クライマックスに向かっていきます。「あ、そうか」と気づける生徒は、成績が結構伸びます。
小説や評論を読むのがおもしろい、読むことで自分のプラスになるなと思える生徒を増やしたいですね。自分の中にものさしを持って、主体的に文章に挑んでいける生徒を育てたいですね。

国際バカロレア・ディプロマプログラム認定校に!

貴校は日本語で学ぶ「国際バカロレア・ディプロマプログラム(IBDP)」の認定を受けました。従来の授業との相違点は何ですか。

町田先生 国語のIB授業は日本語で行います。作品数が少し増えそうですし、書く課題も増える見込みです。書く課題については話し合いとセットにして、これまでの茗溪らしさは残したいと思っています。

佐藤先生 2017年度より「IBDPコース」がスタートしました。高2・高3が対象なので、本格始動は2018年度からになります。本校の教育はIB教育と親和性があると自負しています。IBの国際標準化のカリキュラムと茗溪との相乗効果を出したいと考えています。

町田先生 国際相互理解は開校以来取り組んでいますが、IBを導入して一層意識するようになりました。どのようにして発言の勇気を持てる生徒を育てるか。筋道を立てて論理的な発言ができるか。他者の発言を聞いて自分のことに生かせるか。これまでやっていたことを、より意識して取り組んでいます。

佐藤先生 本校はまもなく創立40年を迎えます。企業経営では衰退か発展かの分岐点が30年(企業寿命30年説)と言われますが、本校は創立30年に、SSH認定校になりました。開校時から取り組んできた「世界的日本人の育成」に、科学技術系の人材育成が加わり、両輪で走れるようになりました。この両輪をつなぐ“シャフト”が、文理両面の要素を備えたIBではないかと思います。IB導入を機に、新たなステージにステップアップできるよう努めていく心構えです。

茗溪学園中学校 教室

茗溪学園中学校 教室

インタビュー3/3

茗溪学園中学校
茗溪学園中学校1872(明治5)年創設の師範学校をはじめ、東京文理科大学、東京高等師範学校、東京教育大学、筑波大学などの同窓会である社団法人茗溪会が、1979(昭和54)年に中学校・高等学校を開校。以来中等教育批判に応える取り組みをする研究実験校として注目される。
知・徳・体の調和した人格の形成をはかり、創造的思考力に富む人材をつくることが教育理念。人類や国家に貢献できる「世界的日本人」の育成を目指す。自ら学び成長していく能力、Study Skillsを身につけさせる。通学生も短期の寮生活を体験するなど、共同生活を通じての人間形成を重視している。
筑波研究学園都市の最南端に位置し、広い校地にはグラウンド、屋外プール、テニスコート、バスケットコートなど体育施設も充実。全教室にプロジェクターが設置されているだけでなく、大教室や、天体ドーム、2つのコンピュータ室など、設備も機能的。近くに寮があり、約230名が生活。中学生は主に3人部屋、高校生は2人部屋。
生徒の将来を考えた教育構想から生まれた独自のカリキュラム。英語では外国人教師による少人数制の英会話などで語学力を強化。また、希望者は放課後に第2外国語として、フランス語・スペイン語・ドイツ語・中国語等を無料で受講できる。ほとんど全教科でコンピュータ利用の授業を実現するなど、情報教育にも力を入れている。中2~高3の英語・数学は習熟度別授業。高2から進路に合わせた選択履修となり、受験に向けた放課後の受験対策補習や夏期補習が本格的にスタートする。医学部など理系にも強く、海外の大学に進学する生徒も少なくない。
女子は剣道、男子はラグビーを校技として定め、冬には精神訓練のためそれぞれで寒稽古を行う。本物にふれる芸術鑑賞会、茗溪学園美術展、合唱コンクール、文化祭などは質が高い。学園内のいたる所に展示された生徒の作品を見ても、芸術への力の入れようがわかる。フィールドワークとして中1・中2はキャンプで観察や実習を行い、中3は沖縄での国内研修旅行で本格的な調査活動をする。高2ではシンガポールで海外研修を行う。クラブ活動はラグビー、剣道、テニス、水泳、バトミントン、美術、書道、無線工学部などが活躍。昼食は中学生が食堂で全員給食、高校生は寮生は給食、通学生は給食またはお弁当で、お弁当は教室でとる。世界各地からの帰国生が全校生徒の約22%以上在籍している。
平成23年度よりSSH(スーパー・サイエンス・ハイスクール)に認定され、近隣の筑波大学や世界の最先端の研究所群とさらに協力関係を深め、生徒の学習・研究活動のレベルのより一層の高度化を実現中である。