シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

今月の額面広告に掲載されている問題はこれだ!

茗溪学園中学校

2018年02月掲載

茗溪学園中学校【国語】

2017年 茗溪学園中学校入試問題より

次の文章を読んで、あとの問に答えなさい。

見えない人にとって、社会は決して自分の体にフィットするようにはできていません。駅前は放置自転車だらけですし、画面はますますタッチパネルが増え、カードで買い物をすればサインを求められます。

この不自由さに対して、とりうる方法はいくつかあります。もっともストレートな方法は、行政に異議申し立てを起こしたり権利を求めて街頭でデモを起こすことでしょう。これらはいわゆる「市民運動」と呼ばれるものです。こうした活動は大切ですし、地道な努力が世論や行政にゆさぶりをかけた前例もたくさんあります。

(中略)

均一なレトルトのパックや自動販売機のシステムは、言うまでもなく見える人が見える人のために設計したものです。率直に言って、見えない人を排除(はいじょ)しています。福祉(ふくし)的な視点に立つなら、あるいは「情報」的な視点に立つなら、そうした排除は可能な限りなくしていくべきでしょう。パッケージに切り込みの印をつけるようメーカーに要望したり、自動販売機に音声案内をつけるように働きかけたりすることもひとつの方法です。実際に、そのような製品も出回っています。

けれども、難波さんがとったのは全く別の方法です。健常者が、いわば「大まじめ」に中身どおりのソースをパスタにかけているかたわらで、難波さんはそれを遊びのツールとしてもとらえている。
いまだかつて、レトルトのパックで運試ししようと思った健常者がいたでしょうか。大都市をジャングルとして生きるヤマカシのように、自分の体に合わないデザインやサービスをナナメから見てみる。そうすることで、彼らの方がむしろ遊んでいるのです。

(伊藤亜紗『目の見えない人は世界をどう見ているのか』〈光文社〉より)

(問)第一段落では、視覚障害者が不自由に感じることの例として、駅前の放置自転車が挙げられていますが、この問題について太字部分「福祉的な視点」から、視覚障害者の不自由さを軽減する対策(音声案内を除く)を考え、具体的に説明しなさい。

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには各中学の「こんなチカラを持った子どもを育てたい」というメッセージが込められています。
では、この茗溪学園中学校の国語の入試問題には、どういうメッセージが込められていたのか、解答・解説と、日能研がこの問題を選んだ理由を見てみましょう。(出題意図とインタビューの公開日については更新情報をご確認ください。)

解答と解説

日能研による解答と解説

解答例
  • 駅周辺により多くの指導員を配置し、違反駐輪の取り締まりを強化する。
  • 地下駐輪場を建設し、自転車を放置している人に地下駐輪場を使用してもらう。
  • 自転車が放置されている場所に駐車禁止のポスターを貼ったり、地面に駐車禁止の絵を描いたりする。
解説

ここでは、駅前の放置自転車に関連する社会的問題を、「福祉的な視点」で見たときに、どのような対策をすれば視覚障害者の不自由が軽減されるのかを考えていきましょう。まずは、駅前に放置自転車がたくさんあった場合、視覚障害者にとってどのような不自由が生まれるのかを想像してみましょう。駅前にある道が広いのか、駅前にバスのロータリーやタクシー乗り場が多くあるのか、駅前に商店街が広がる下町のような場所なのか、駅の存在する場所や環境によっても起きることがら、そして、対策として考えられることは変わってきます。身の回りに目を向け、どのような問題点があるのかを明らかにして、そのときどのような対処をしていけばよいのか、視野を広げていきましょう。この問題で大切なのは、自分自身の立場でものごとを考えるのではなく、相手、視覚障害者の立場からものを見て考えることです。

日能研がこの問題を選んだ理由

この問題が出されている素材文では、受験生の身近で起きているであろう社会問題が話題のひとつとして扱われています。その社会問題のひとつが「駅前の放置自転車」です。この「駅前の放置自転車」に関連する社会問題そのものを、子どもなりに見つめ直し、社会に暮らす人々がともに安全に過ごす方法として、どのようなことができるのかを考えていくことが求められています。

「駅前の放置自転車」と聞いたとき、イメージする状況は子どもの暮らす地域、環境によって異なるでしょう。このような日々の暮らしの中で目にする光景のちがいによって、対策として考えることは異なるともいえます。さらには、子ども自身が視覚障害者の立場に立つことができるかによっても、考えをめぐらす内容は異なるでしょう。

一方、出題されている素材文に目を向けると、視覚障害者の日常生活の一場面を垣間見ることができます。その場面では、視覚障害の無い人が読んだとき、目からうろこが落ちるような、新しいものの見方を獲得するような表現もなされています。このような文章を読み込むなかで、多くの人が安全に暮らすための新しい考え方を導き出すこともできるかもしれません。

今回は、受験生が都市や人間の居住地の安全性について考えるきっかけとなり、さらには新しいものの見方を得ることができる文章を選定されたこと、また、すべての人が安全に暮らすための考えを構築させていくような問題を出題された意図をぜひ伺ってみたいと考えました。以上のことから、日能研ではこの問題を□○シリーズに選ばせていただきました。

SDGs17のゴールとのつながりについて

  • 18 SUSTAINABLE DEVELOPMENT GOALS
  • 11 住み続けられるまちづくりを

”住みやすい街づくり”という、子ども達にとって身近なテーマを題材にして、「相手の立場に立って考え、自由に発想したことを表現する」問題です。本文では、視覚障害者が不自由な環境を物理的に変えようとするのではなく、その意味を変えることによって、生き抜こうとしている事例が示されています。この視点は、当たり前から離れ、いつもの自分とは違う新しい面から物事を見ることで、意外な気づきが生まれることを示唆しています。他者とつながりながら課題を発見・抽出し、課題を解決するための斬新なアイデアを、一人ひとりが主体的に考える。目標11「都市と人間の居住地を包摂的、安全、レジリエントかつ持続可能にする」ためには、そんなチカラが求められているのではないでしょうか。

私学とSDGsのつながりについて詳しくはこちらから

日能研は、SDGs をツールとして使い、私学の活動と入試問題に光を当てた冊子をつくりました。
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