シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

洗足学園中学校

2017年12月掲載

洗足学園中学校の理科におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

3.自分の進路を自分で考えることができる生徒が増えていて頼もしい。

インタビュー3/3

3年後を目処に、文理分けをしない学校へ

玉木先生 本校は文理分けをしない学校をめざしています。今の中3が高2になる時に実施する予定で進めています。もちろん選択授業は設けますが、文系には理科や数学、理系には国語や社会の力がさらにつくことにより、視野が広がることを期待しています。

どちらかというと理系志望の生徒さんが多いですか。

玉木先生 今、田村先生がもつ学年(高3)は半々くらいですが、広報という立場で受験生の親御さんと接していると、理系を志望してほしいと思っている親御さんが多いように思います。それは女医さんになってほしい、ということではなく、自分の力で生きていくことができる職業として、目に見える職業が理系に多いからだと思います。

入試広報委員長/玉木 大輔先生

入試広報委員長/玉木 大輔先生

進路を自由に切り拓ける学校でありたい

玉木先生 生徒に対しては、あまり若いうちから「私は理系」「私は文系」と思ってほしくないと思っています。すべての可能性を模索した上で、どちらの道も拓けるような基礎学力をつけることが大切だと思っています。
そういう意味では、子どもたちにはまっさらな状態で入ってきてほしいと思っています。もちろん自分の意思をもって入ってきてくれるのは大いに結構なんですが、その場合には変わることを恐れない、ということを強調したいです。「こういう道もあるよ」「ああいう道もあるよ」と揺さぶりをかけるのが我々の仕事ではないかと思っているからです。
私自身も学生時代は「文系」と決めていましたが、社会人になってから「建築もおもしろいな」などと思うようになりました。そういう視野が高校時代にあれば、数学を捨てることはなかったと思うので、文理を分けずに6年間学べる環境にすることは、とても意味のあることだと思います。

教員の平均年齢は34歳。機動力がある

貴校に注目が集まるのは、先を見て行動する力があることに起因しているように思います。

玉木先生 海外の大学は活動歴を重視します。東大の推薦入試、京大の特色入試もそこを重視するようになりましたよね。おそらくセンター試験が変わって、新しいシステムになると、活動歴が重視されると思います。本校では10年以上前から学外の活動への参加を促してきたので、そういう意味では、時代の一歩先を歩んでいるという実感はあります。

田村先生 6年間、同じ学年を担任し、卒業させて、中1に戻ると、以前とは全然違う世界になっていますから(笑)。ICTの活用も進んでいて、教員は大変です。

玉木先生 現在、教員のレベルアップに力を入れているので、外の研修会にどんどん出ています。教員も若返っています。今年度の平均年齢は34歳くらい。だから柔軟に変われるのだと思います。生徒にもメールアドレスを配っていて、今後プリント等の配布はメールベースで行っていくよう計画を立てています。教員間はもちろん、生徒と学校の間もペーパーレスで、生徒は必要にかられてICTの術を身につけています。

洗足学園中学校 大講堂

洗足学園中学校 大講堂

自分の進路について自分で考える生徒が増えている

生徒さんの進路について教えてください。

田村先生 進路について自分で考えている生徒が、前回高3を担当した時よりもかなり増えたように思います。他流試合(学外の活動)にたくさん行かせていることや、いろいろな講演者の方に来ていただき、いろいろなお話をいただく中で、低学年の頃から自分の将来を考える子が増えているからだと思います。自分はどういう職業を通して社会貢献ができるのか、ということを、自分で考えられるのはすごいなと思います。現在の高3は理系が多く、なかなか数学の力が伸びなくて苦労もしているのですが、多くの生徒が「自分で選んだ道だからしっかりやらなければいけない」と、一生懸命取り組んでくれています。生物の教員としては、東工大や早慶が物理・化学選択のほうが受験しやすいため、生物を選択する生徒が毎年なかなか増えなかったのですが、今年は生物選択者も例年に比べて多くいて、授業でおもしろさを伝えてきたかいがあったと喜びを感じています。

洗足学園中学校 図書室

洗足学園中学校 図書室

不思議に思う気持ちを大切にしよう

最後に、受験生へのメッセージをお願いします。

田村先生 まずは目の前にあることに一生懸命に取り組みましょう。入試ではそれが大きな力になります。また、普段からいろいろなもの(こと)に目を向けて、不思議に思う気持ちを大事にしていただきたいと思います。自分で不思議だなと思ったことを調べる姿勢が身についていれば、どの学校であっても、どの教科であっても、力を伸ばすことができると思います。
学習にかぎらず、生活全般において、受け身ではなく、気になることがあったらやってみるということも頑張っていただきたいことの1つです。好奇心のある方が本校に入ってきてくださればとても嬉しいです。

インタビュー3/3

洗足学園中学校
洗足学園中学校前田若尾により1924(大正13)年、平塚裁縫女学校設立。30(昭和5)年、洗足高等女学校として設立。46(昭和21)年に戦災のため現在地に移転。47年に中学校、翌年に高等学校を設立し、76年、洗足学園大学附属中・高となる。2000(平成12)年、中高の総合校舎が完成。幼稚園から大学までの総合学園だが、02年に現校名に変更。
新約聖書にあるキリストの言葉が校名の由来。ここから「謙虚」で慈愛の心を育むことを建学の理念とする。国際社会の到来を早くから予測し、他国の文化や社会を理解できる素養を英語教育に求め、10人のESL(外国人に英語を教える資格を持つ)教員がいるほか、海外帰国生教育を積極的に実施。
クイーンエリザベスⅡ世号と親しみをこめて呼ばれる校舎は、機能性豊かな生活空間キャンパス。バリアフリーの校内、大小の講堂と体育館、学習意欲をかき立てる図書館など、申し分ない快適さと充実度。広めの普通教室は特注の木製机を使用している。カフェテリアではパンや軽食の販売もある。大学の温水プールを授業で使用。
シラバスを導入し、授業の進行状況を明確化している。特に英語は目標が高く、テキストは『ニュートレジャー』を使用。ESL外国人教師によるレッスンは、語学力はもちろん、豊かな国際感覚を養う。国語は中1から百人一首を教材に古典の総合学習を行い、中2で漢文も取り入れる。数学は反復練習を必要とする部分は徹底してこだわり、基礎固めを確実にする。英語は少人数制の授業を実施。放課後は、進学講習、TOEFL(留学用)やスピーチコミュニケーション・ドラマコースなどESLの多彩な講座など自由選択コースを設置。
帰国生ともHRは一緒。それぞれの良いところを認め合い、刺激しあえるよい関係が築かれている。海外研修・留学は複数あり、長期サンフランシスコで1年間の寮生活、短期はロサンゼルスに4~7カ月間ホームステイ。中2以上の希望者には、アメリカまたはイギリス、セブ、マルタ、ニュージーランドへの語学研修もある。クラブ活動は運動部15、文化部13のクラブがあり、中1・中2は90%以上が参加。中学のクラス対抗合唱コンクールでは、クラスが団結し盛り上がる。修学旅行は中学が九州方面、高校が関西方面。在校生の父親によるキャリア・プログラム、牧師による中学講話、大学の施設で好きな音楽を鑑賞する音楽鑑賞会などもある。全員が生涯親しめる楽器をもてるようにと、楽器演奏指導もスタートした。