出題校にインタビュー!
洗足学園中学校
2017年12月掲載
洗足学園中学校の理科におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。
1.社会での出来事が学校での学びに結びつく、そこを大事にしたい。
インタビュー1/3
作問は高校生の授業がきっかけ
この問題の出題意図から教えてください。
田村先生 題材となったニュースは2年前くらいから耳に入っていました。「バナナはクローンである」というところから、「同じ病気が流行るのは当然」と思っていました。そんな話を、たまたま高校生の授業でしました。クローンを扱っている時に「バナナがなくなっちゃうかもしれないよ」と。すると生徒たちが「えっ」「なんで」と食いついてくれたので、これを小学生にも聞いてみたいと思いました。
私もバナナが好きなんです。園子ちゃんは自分のような感覚でこの問題を作りました。文章の誘導が長いので、受験生がどう取り組んでくれるか、不安な部分もありましたが、文章を読む力や考える力も問える問題になったと思います。
問題を持ち込んだ時の、理科の先生の反応はいかがでしたか。
田村先生 「おもしろいね」と言っていました。常日頃から、こういう問題を作りたいなと思っていても、なかなか良いネタがなかったり、ネタはあってもなかなか形にできなかったり。誘導が長過ぎてしまったり、あるいは小学生レベルの知識では対応ができなかったりと、難航することが多いので、今回はこっそりと自分の中でも「いい問題ができたな」と思っています。
理科主任/田村 江舟先生
誘導の文章からも興味を広げてほしい
小学生が解ける問題にする上で苦労したことがあれば教えてください。
田村先生 小学生に「クローン」という言葉は使えません。「では、どう表現しよう」というように、小学生がわかる言葉で説明するところが難しかったです。同じ遺伝子をもっているということは、同じ病気に対して弱いのか、強いのか。そういうところに思いが至るよう誘導したいけれども、答えになってしまってはいけないので、そういうところを配慮しながら作らせていただきました。
誘導の文章には必要のない言葉も入っています。それはおうちに帰ってから、「■■」って何だろうと調べてもらえればうれしいですね。入試なので、振り返りはしてもらえないかもしれませんが、バナナのほかにも、アーモンドなど収穫量が大幅に減少して、「いずれ、なくなるかもしれない」と言われているものがあります。花粉を運ぶハチが少なくなっているのが原因ですが、そういうところに思いを馳せていただき、「ハチが少なくなっているのか。なぜだろう」と掘りさげてくださると世界が広がると思います。ハチの減少については、まだ原因が明らかになっていませんが、普段みんなが食べているものは、実は危うい状況にあるんですよね。そういうことも知ってほしいという思いがあります。
洗足学園中学校 中高校舎
因果関係を踏まえて書けている受験生が多かった
子どもたちは「バナナがなくなっちゃうの?」と、衝撃を受けた問題だったのではないかと思います。反応はいかがでしたか。
田村先生 受験生の答案を見るかぎり、ただ単に知識をもっているだけでなく、きちんと文章を読み取る力もあると感じました。また、その場で考えて、こういうことだからこうなんだと、因果関係を踏まえて書けている受験生が半分くらいいたので、これはすごいことだと思いました。そういうお子さんが入学してくだされば、もっと伸びていくのだろうなと思いました。
印象に残っている解答はありましたか。
田村先生 正解している子は、こちらが求めているどおりの答えでした。正解できなかった子は、少し的外れな答えが多かったです。たとえば「カビだから」(病気に弱いから)というように、もう少し掘りさげないと正解にしてあげられないような答えが見られました。誘導する文章があったので、きちんと書けている子と、二極化している印象でした。
入学後は新聞記事の要約で読解力や表現力を磨く
リード文のボリュームは悩ましいところですね。
田村先生 増え過ぎないように気をつけています。試験当日は緊張されていると思うので、緊張していながらも読み解いて、考えられるように配慮しています。
文章の中から必要な情報を読み取る力というのは、とても重要だと思います。
田村先生 本校に入学していただくと、中1、中2の間は新聞のスクラップを行います。最近は新聞配達を必要としないご家庭もあるので、負担になってしまっているところもありますが、新聞を読んで興味のある記事をスクラップし、その内容を要約したものを定期的に提出してもらっています。ここ数年、生徒のレベルがどんどん上がっていて、読む力、表現する力がついていると感じています。新聞記事に載っていることだけでなく、記事を読む中で「これ何だろう?」と思ったことを調べて、それも書いてくれる生徒が増えているので、これからがもっともっと楽しみだなと思っています。
洗足学園中学校 エントランス
有志がチャリティーマラソンを実施
玉木先生 たしかに、世界的に横たわっている問題に対して自分たちは第一歩として何を考えるのか、という社会的視点は育っていると思います。
6年くらい前になりますが、当時の高2が、チャリティーマラソンを企画しました。5名の有志が、なぜ自発的にそのようなことを行ったかというと、高1(帰国生)の英語の授業がきっかけでした。授業の中で「あなたたちが世界を変えるためにできることはなにか」と尋ねると、答えが出なかったのです。「女子高生では無理だ」という結論に達してしまったんですね。その時のことが、魚の小骨がのどにささったように、どこかに残っていたのでしょう。高2になって、「今しかできない」と企画・実行したのがチャリティーマラソンでした。ただ単に、マラソン大会でお金を集めて赤十字に寄付しましょう、という発想ではなく、彼女たちは自分たちが(世界を変えるために)もっともやりたいことを考え、それを実現してくれる団体を選び、そこに少しでも多くのお金を送れるよう行動しました。日本は恵まれすぎていて勉強ができるのが当たり前です。でも世界ではそうではない。そこを視点に学習ができない子どもたちのために、募金を使うことができる団体を探し、チャリティーマラソンを実施したのです。
高校生ができることを精一杯やった
玉木先生 マラソン大会を実施するにはいろいろな準備が必要です。たとえばお医者さんに来てもらわないとマラソン大会はできません。でも、お医者さんにお金を払うと募金できる金額が減ってしまうので、いかにお金をかけずにお医者さんを呼ぶか。「それを頼めるのは自分たちの親だ」ということで保護者に呼びかけをしました。「参加者に飲み物を提供したい」ということで企業と交渉。断られ続ける中で、どうしたらスポンサー契約が取れるのかを考えて、キリンビバレッジにご協力をいただきました。
チャリティーマラソンを行ったのはどういう生徒さんですか。
玉木先生 通常なら生徒会ですよね。肩書きがその子に使命を与えます。本校の生徒会でも拉致問題などを扱っていますが、このチャリティーマラソンは、なんの肩書きもない、自然発生的な有志(5人)でした。彼女らは「ハイファイブフォーキッズ ~子どものための我々5人~」と名乗っていました。だから僕らの印象にもすごく残っているのです。
洗足学園中学校 エントランス
大学入試だけでなく、その先を見据えた人生設計が可能に
玉木先生 チャリティーマラソンに集まった参加者数は100人以上。保護者の方、卒業生、退職された先生、現役の先生、生徒……、ある意味オール洗足です。こうした活動を通して、主催した生徒の視野が広がったことは間違いありません。社会に対して貢献する実感も得られたと思います。それが国連やユニセフなど世界的な動きと連動し、彼女たちのキャリアの組み方も変わってくるでしょう。大学入試だけなく、もっと広い視野で人生設計ができるようになるはずです。私たちが望むのもそういう教育なので、こうした活動があちこちで生まれるように、工夫をしていかなければいけないと考えています。週5日制に変えて、土曜日に教養講座を入れたのは、社会的事象との結びつきを意識してのことです。理化学研究所やJAXAかなどから先生をお呼びして、そういう授業を行っています。
インタビュー1/3
前田若尾により1924(大正13)年、平塚裁縫女学校設立。30(昭和5)年、洗足高等女学校として設立。46(昭和21)年に戦災のため現在地に移転。47年に中学校、翌年に高等学校を設立し、76年、洗足学園大学附属中・高となる。2000(平成12)年、中高の総合校舎が完成。幼稚園から大学までの総合学園だが、02年に現校名に変更。