今月の額面広告に掲載されている問題はこれだ!
洗足学園中学校
2017年12月掲載
2017年 洗足学園中学校入試問題より
- 問題文のテキストを表示する
ある日、園子ちゃんは大好きなバナナが食べられなくなる日が来るかもしれないというニュースを聞き、調べてみることにしました。分かったことをまとめると次のようになりました。
①バナナがなるのは「木」だといわれることが多いが、じつは「草」である。
図はバナナの「草」を模式的に示したものである。「木」の幹のように見える部分は、葉が重なったもので仮茎(かけい)といい、本当の茎は地面の中にある。葉が30枚ほど育つと、仮茎の根元に吸芽(きゅうが)と呼ばれる子株が出てくる。②野生のバナナは種子で増える。野生のバナナは受粉すると、果実が成長する。ところが、ある時受粉をしなくても果実が成長するバナナが現れた。このバナナは吸芽を切り取り、別の場所に植えることで増やすことができる。種子を作らないバナナは人間にとって食べやすく、このバナナを人間は栽培(さいばい)するようになった。
③あるカビによる病気が世界中で栽培されているバナナの間で流行し、バナナの「草」が次々と枯(か)れてしまっている。
下線部から、人間が栽培しているバナナは親株のからだの一部が子株になるため、どちらも同じ遺伝子をもっているということになります。遺伝子とは親の体の形や性質などを子孫に伝えるものです。
(問1)このような関係にあるものを、次より1つ選び、記号で答えなさい。
- (ア)キュウリのめ花とその花にできる種子
- (イ)ジャガイモのイモとそのイモから出る芽
- (ウ)トウモロコシについている、となりあった粒
- (エ)タンポポのわた毛と種子
- (オ)同じ房(ふさ)についているブドウの種子
(問2)病気が流行したときに、その病気にかかりやすい人とかかりにくい人がいます。これは、人によって持っている遺伝子が異なるために、病気へのかかりやすさが異なることも一つの要因だと言われています。将来、世界中で栽培されているバナナがあるカビの病気によって枯れてなくなってしまうかもしれないと言われているのは、なぜだと考えられますか。
中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには各中学の「こんなチカラを持った子どもを育てたい」というメッセージが込められています。
では、この洗足学園中学校の理科の入試問題には、どういうメッセージが込められていたのか、解答・解説と、日能研がこの問題を選んだ理由を見てみましょう。(出題意図とインタビューの公開日については更新情報をご確認ください。)
解答と解説
日能研による解答と解説
解答
(問1)(イ)
(問2)すべてのバナナが同じ遺伝子を持っているため、同じ病気にかかりやすいから。
解説
(問1)「人間が栽培しているバナナは親株のからだの一部が子株になるため、どちらも同じ遺伝子をもっている」という関係が成り立っている組み合わせをさがすと、(イ)のジャガイモのイモ(親株)とそのイモから出る芽(子株)になります。
(問2)「人間が栽培しているバナナは親株のからだの一部が子株になるため、どちらも同じ遺伝子をもっている」ということと、「持っている遺伝子が異なるために、病気へのかかりやすさが異なる」ということをもとにすると、人間が栽培しているバナナは、同じ病気にかかりやすいということがいえます。したがって、いったんバナナを枯らせてしまうような病気が出現すると、すべてのバナナが同じ病気によって枯れてしまい、結果的にすべてのバナナがなくなってしまう可能性があることがわかります。
- 日能研がこの問題を選んだ理由
バナナがある病気によって枯れてなくなってしまうかもしれないと言われている理由を、図と文章から読み取った情報をもとに、筋道立てて推測する問題です。
バナナは、私たちにとって大変身近な食べ物です。しかし、バナナを育ち方や仲間の増やし方など、植物としての側面からじっくり考えた経験がある人は、多くないでしょう。入試当日に、この問題に取り組んだ子どもたちの中にも、「バナナ?!」と驚いた子どもがいたのではないでしょうか。
この問題では、栽培されているバナナが仲間を増やすしくみや、病気のかかりやすさと遺伝子の関係などの複数の情報に目を向け、結びつきをとらえることによって、バナナが病気によってかれてなくなってしまうかもしれない理由を明らかにしていきます。
この問題は、子どもたちが日常生活の中で何か不思議に思うことに出あったとき、いろいろな情報をもとに、状況を筋道立てて推測することができることに気づくきっかけになるでしょう。
このような理由から、日能研では、この問題を□○シリーズに選ぶことにいたしました。
SDGs17のゴールとのつながりについて
「大好きなバナナが食べられなくなる日が来るかもしれない!?」――そんな衝撃の投げかけから、この問題は始まります。「えっ、なぜ??」という子どもの叫び声が聞こえてきそうです。“遺伝子”についての専門的な知識ではなく、この問題から読み取れる知識と情報を入り口として、「なぜ遺伝子の多様性を守らなければならないのか」を子ども自らが主体的に考えていくことが求められています。同一性だけでなく、異質性や多様性にも目を向けること。それが、目標15「陸上生態系の保護、回復および持続可能な利用の推進、森林の持続可能な管理、砂漠化への対処、土地劣化の阻止および逆転、ならびに生物多様性損失の阻止を図る」ためのひとつのカギになりそうです。そんな視点を持った子ども達は、さらに「遺伝子の組み換え」や「外来種との交配」など、さまざまなテーマについても、多角的に思考できるチカラを身につけていきます。
私学とSDGsのつながりについて詳しくはこちらから
日能研は、SDGs をツールとして使い、私学の活動と入試問題に光を当てた冊子をつくりました。
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