シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

頌栄女子学院中学校

2017年12月掲載

頌栄女子学院中学校の国語におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

3. 勉強も学校行事も部活動も全力投球!

インタビュー3/3

小論文は「相手に読んでいただく」ことを意識

金田先生 高校の小論文指導では、設問の要求にきちんと応えることを大切にしています。大学側は視点のユニークさなど高いレベルを要求しますが、適切な具体例が思い浮かばないこともあります。それでも「要求されたことに応える」「文字をていねいに書く」、この2点がきちんとできれば合格水準に届きます。小論文は、論述の組み立てなどコツを教えれば、生徒はたちまち整った大人の文章を書けるようになります。
また、答案は志望校の教員に「読んでいただく」ものです。読んでいただく意識で答案を作成すれば、できないことはないと生徒に指導しています。

頌栄女子学院中学校/図書館

頌栄女子学院中学校/図書館

「課題図書」と「推薦図書」で読む習慣をつける

金田先生 国語科では「ぜひ読ませたい」書籍として「課題図書」を設定しています。課題図書はカリキュラムに組み込んで定期考査にも出すので、生徒は考査の都度、課題図書を1冊読みます。
「推薦図書」は国語科をはじめとする各教科教員と司書教諭が協力して設けます。中学生用、高校生用に、生徒が興味を持つような新作なども選びます。自分が物事を知らないこと、国語力が不足していると自覚している生徒は、推薦図書に飛びつきます。
司書教諭は図書委員と一緒に「図書館だより」を発行して、新入荷などのおすすめ書籍を紹介したり、推薦図書の冊子を作ったりしています。何を読もうか迷ったら、推薦図書を手に取れば“外れ”はありません。
最終的には大人が読むような文章、大学の教材を読めるだけの力を身につけさせたいと思っています。

文章の解釈をペアワークやグループワークで話し合う

国語の授業ではどんなことを大切にされていますか。

金田先生 授業はいま過渡期にあります。最近は専ら読解に重点を置いています。教員の講義を聞いている受け身の授業ではなく、文章の解釈について話し合うなどペアワークやグループワークも増えました。
最近は積極的な発言が少なくなったと感じます。そこでまずは隣同士で“おしゃべり”するように話し合う機会を与えています。
一方、会話中心の英語の授業はいつも賑やかです。外部のスピーチコンテストなどにも積極的に参加しています。第11回全日本高校模擬国連大会において、本校の模擬国連部のペアが優秀賞を受賞し、2018年5月にニューヨークの国連本部で開催される世界大会に、日本代表として派遣されることになります。
英語のスピーキング力を国語やほかの教科の発表でも生かすことができればと思います。

頌栄女子学院中学校/図書館

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自己表現豊かな帰国生の影響力は絶大

金田先生 中1から高1の英語の少人数授業は、一般生・帰国生別に行うため、クラス編成は、1学年5クラスを、一般生と帰国生が約半々の混合クラスを3クラス、一般生のみを2クラスとしています。1学年50名の帰国生を3クラスに振り分けると、だいたいクラスの半数になります。
中学は毎年クラス替えをし、一般生は3年間のうち少なくとも1年間は混合クラスに入ります。混合クラスは一般生だけのクラスとは雰囲気が異なります。帰国生は学年が上がるにしたがい明るさ、活発さといった本領を発揮するようになります。自分の意見をどんどん発言するし、「まずやってみよう」と前へ踏み出す勇気があります。帰国生は全体の約2割ですが、失敗を恐れずにチャレンジする姿に、一般生は大いに刺激を受けています。

帰国生は日常会話を通して日本語を身につける

金田先生 一時期、国語の授業も帰国生と一般生を分けましたが、帰国生は一般生を見て国語力を身につけることがわかってからは一緒にしています。その代わり、帰国生対象に、週1~2回、放課後に国語の補講を行っています。「文字のていねいさ」など帰国生に身につけてほしいことは一般生にも必ず確認しています。帰国生は英語以外はできないことだらけですが、一般生があれこれ世話をやくため、一般生と一緒に過ごす中で急激に力を伸ばしていきます。

頌栄女子学院中学校/図書館

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帰国生に憧れて一般生は英語力を磨く

金田先生 一般生には英語を自由に操る帰国生がカッコよく見えるようです。「自分もあんなふうに英語を話したい!」と、昔から英語学習は中1から熱心です。卒業時には胸を張れるだけの英語力が身についていると思っています。
将来国際的な活躍を目指して国際学部などに進学するのは、むしろ一般生の方が多い。実際に海外で活躍している卒業生も多くいます。「将来海外で仕事をして、帰国したら娘を頌栄に入れたい」と言うほどです。帰国生の存在があったから自分はここまで成長できたという思いがあるからでしょう。一般生と帰国生の相乗効果は本校の特色の一つです。

頌栄らしく、高3の秋まで学校行事を思いきり楽しむ

金田先生 本校の生徒を見ると、本格的な大学受験の勉強は半年間程度、長い生徒でも9カ月です。高3になっても行事参加に手を抜かないのが頌栄らしさでもあります。
高3に上がると、6月の「全校合唱コンクール」に向けて、休み時間には歌声が聞こえてきます。9月の「研究発表会(文化祭)」は、高3は有志参加のはずがほとんど「全員参加」しています。夏休みは学校に来て勉強だけでなく文化祭の準備もしています。10月の運動会はクラス対抗です。最高学年として全体をリードするために、下級生以上に張り切ります。結局、11月の全校ハイキングまで高3は行事にことさら熱心に参加します。
大学受験を最後まで走りきれるのは、行事参加でストレスを発散しているからかもしれません。本校は、中学生、高校生ですべきことをすべて経験することに重きを置いており、高3でも芸術、聖書、礼法の指導に力を入れるなど、いわゆる進学校とは違うスタンスを取っています。
のびやかに学校生活を過ごす中で、気遣いができる、困っている人に自ら手を差しのべられる、自分の意見を発信できるような、「社会のために貢献奉仕できる女性」を育てたいと考えています。

頌栄女子学院中学校/図書館

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インタビュー3/3

頌栄女子学院中学校
頌栄女子学院中学校岡見清致の信仰に基づく教育事業として、頌栄学校を1884(明治17)年に開校。1947(昭和22)年に中学・高校となり、64年に頌栄女子学院と改称。94(平成6)年から高校募集停止、中学・高校6年間を通した教育をおこなっている。併設校に英国学校法人のウィンチェスター頌栄カレッジ(大学)がある。
プロテスタント系キリスト教主義の学校で、聖書の教えを徳育の基礎におく。女性にふさわしい教養を身につけることが方針で、高雅な品位や豊かな国際感覚を備え、社会に奉仕貢献できる人間形成を志す。校名の「頌栄」は神の栄光をほめたたえるという意味。自慢の制服も同校の教育方針に沿い、国際感覚にマッチするものとした。言動、身だしなみについては日常きめ細かく指導している。帰国生との交流により、多様な価値観をも育んでいる。
区の保護樹林に指定される木々に囲まれた運動場など緑にあふれる校内には有名な建築家ライトの高弟の設計による記念堂をはじめ、礼拝堂と講堂をかねるグローリアホールなど施設も完備。ホワイトハウスと呼ばれる校舎や新体育館も近代的。南志賀高原と軽井沢に山荘をもつ。食堂は高校生から利用可(テイクアウトは中学生も利用可)。パン類の販売あり。
中学では英・数の多くがクラス分割などの少人数制授業。このなかでは高校で学ぶ内容も取り入れられている。英・数は時間数も標準より多い。聖書の授業も週1時間組み込まれている。中3の数学では習熟度別授業を導入。中3では卒業論文を制作、夏休み前から準備し、6000字以上でまとめる。高2からは文科と理科、さらに高3では理科コースが2つに分かれる。進路に応じた選択科目も多数用意されている。中学では主要教科を中心に昼休み・放課後に補習を実施、高校では長期休暇中にも受験講習を行っている。ICU、青学、早慶などに推薦枠があるのも大きな魅力だ。
2期制で、土曜日は休日としている。1日は礼拝で始まり、中学・高校とも週1回の合同礼拝もある。高校では礼法の授業がありしつけにも厳しい。タータンチェックのスカートの制服はあまりにも有名。校内にはイギリスの学校の雰囲気が漂い、生活スタイルも校舎内で革靴を履いたまま過ごす欧米流。クラブ活動ではハンドベルクワイヤーや弓道部が知られている。花の日礼拝、イースター、クリスマスなど礼拝形式の行事が多く、そのほかキャンプ、コ・ラーナーズ・デイ(研究発表会)、頌栄フィールド・デイ(運動会)、カナダとイギリスの語学研修など盛りだくさん。奉仕活動にも力を入れている。