シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

頌栄女子学院中学校

2017年12月掲載

頌栄女子学院中学校の国語におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

1. 自由作文で頌栄への思いの強さを測る

インタビュー1/3

答案は「解答欄を埋める」「字をていねいに書く」

金田先生 ここ数年、この問題のような自由作文問題を意識して出題しています。作文を書かせると受験生の考え方、感じ方がわかります。こうした問題は、「頌栄に入りたい!」という受験生の「熱意」を大切にしています。入試問題全体でも「頌栄に入りたい!」受験生が入学できるような作問を心がけています。
相談会等で強調しているのは、「解答欄をすべて埋めましょう」「字をていねいに書きましょう」ということです。もちろん、この問題にも当てはまります。文章記述でも、「字をていねいに書く」努力を惜しまず、あきらめずに「何とかして解答欄を埋める」姿勢を、表してほしいと思います

国語科/金田 教昭 先生

国語科/金田 教昭 先生

第一志望で入学した生徒はのびしろがある

金田先生 入学時の偏差値には結構、開きがあります。本校は慶應義塾大学への進学者が、学年約200名中30名以上、合格者はその2倍以上です。彼女たちの中学入試の成績は上位ばかりではありません。
やっと合格したレベルでも、6年間で学力を伸ばすのは「頌栄が第一志望」の生徒が目立ちます。中学・高校の学校生活をまるごと楽しんでいるためか、成績上位なだけでなく、学校行事や部活動でリーダーとして学校を引っ張る存在に成長しています。

「頌栄に入りたい!」思いが伝わる答案に満足

この問題は、本文の内容と、貴校が中学入試で求めている子ども像が合致していて、貴校のアドミッションポリシーがよく表れていますね。どのような解答がありましたか。

金田先生 解答の条件は、失敗から学んだ具体例を挙げることです。視点がユニークな、こちらが驚くような答案はありませんでした。鉄棒や跳び箱といった学校の課題、ピアノやバレエなどの習いごとへの取り組みについて、「最初はイヤイヤだったけれど、あきらめないでがんばったらできるようになった」というような、予想していたとおりの内容でした。
自分の経験ではなく、先生のこと、お父さんのことなど身近な他者の話を取り上げた受験生は若干いましたが、本から引用した受験生はいませんでした。
それにしても、受験生はよくぞ解答欄を埋めてくれました。自由作文は字数指定なしの自由記述です。150字程度を想定した解答欄に、小さい字でびっしり書いてきた受験生が多かったです。「頌栄に入りたい!」という思いが伝わる答案がかなり多く見られ、その点は満足しています。

頌栄女子学院中学校/校舎

頌栄女子学院中学校/校舎

文章記述は「書いた者勝ち」。書かない手はない

金田先生 出来具合は、前年度の自由作文と比べるとはるかによく書けていましたし、満点をつけた受験生も多かったです。
満点を取れた受験生は、内容よりも、具体的な自分の経験を挙げて設問の要求に応えていたこと、文章のねじれなく読み手に伝わる文章で、誤字・脱字なくていねいに書けていた点を評価しました。

この問題に当てはまる経験が思い浮かばなかった受験生もいたのではないでしょうか。まさに、あきらめない姿勢が試されますね。

金田先生 それでも何とかして解答欄を埋めようと、今現在の受験の心境を書いた受験生もいたと記憶しています。「算数が苦手で合格できる自信はないけれど、何とかやり抜きたい」といったようなことが書かれていて、必死さが伝わってきました。本校の文章記述は、まずは「書く」ことが大切です。

受験生の努力に報いるよう、ていねいに採点

金田先生 文章記述の採点は、少なくとも3人の教員が担当して、文章をていねいに読み込みます。採点中は点数をつける・つけないを巡ってしばしば侃々諤々の議論が始まります。点数をつける際は、恣意的にならないように、ほかの採点者が納得できるよう説明するのがルールです。
杓子定規な評価はしません。例えば、採点基準は満たしていても、「シロ」と答えるべき結論を「クロ」とした答案は、「0点」にはせず部分点をあげます。がんばって書いた受験生の努力に報いるように採点しているつもりです。

頌栄女子学院中学校/敷地内

頌栄女子学院中学校/敷地内

本文を読んで「チャレンジする意義」を感じてほしい

金田先生 本文は、国際ビジネスの最前線で活躍する著者が、自らの体験をもとに若い世代へ語るメッセージです。「チャレンジする意義」は小学生にも心に響く内容だと思い、入試問題に取り上げました。評論文は、岩波新書は高校生でもいきなりは手を出しにくいので、岩波ジュニア新書(中高生対象)を勧めています。この文章も岩波ジュニア新書の掲載です。
入試の素材文は、いまの子どもたちが共感できる、子どもが喜んで読んでくれる作品を取り上げるようにしています。2011年度の第1回入試で取り上げた石井睦美・作『卵と小麦粉 それからマドレーヌ』は、中学受験で私立の女子校に入学した主人公が、学校生活でいろいろな出来事を経験していくストーリーです。課題図書として中1に読ませたところ、とても好評でした。

インタビュー1/3

頌栄女子学院中学校
頌栄女子学院中学校岡見清致の信仰に基づく教育事業として、頌栄学校を1884(明治17)年に開校。1947(昭和22)年に中学・高校となり、64年に頌栄女子学院と改称。94(平成6)年から高校募集停止、中学・高校6年間を通した教育をおこなっている。併設校に英国学校法人のウィンチェスター頌栄カレッジ(大学)がある。
プロテスタント系キリスト教主義の学校で、聖書の教えを徳育の基礎におく。女性にふさわしい教養を身につけることが方針で、高雅な品位や豊かな国際感覚を備え、社会に奉仕貢献できる人間形成を志す。校名の「頌栄」は神の栄光をほめたたえるという意味。自慢の制服も同校の教育方針に沿い、国際感覚にマッチするものとした。言動、身だしなみについては日常きめ細かく指導している。帰国生との交流により、多様な価値観をも育んでいる。
区の保護樹林に指定される木々に囲まれた運動場など緑にあふれる校内には有名な建築家ライトの高弟の設計による記念堂をはじめ、礼拝堂と講堂をかねるグローリアホールなど施設も完備。ホワイトハウスと呼ばれる校舎や新体育館も近代的。南志賀高原と軽井沢に山荘をもつ。食堂は高校生から利用可(テイクアウトは中学生も利用可)。パン類の販売あり。
中学では英・数の多くがクラス分割などの少人数制授業。このなかでは高校で学ぶ内容も取り入れられている。英・数は時間数も標準より多い。聖書の授業も週1時間組み込まれている。中3の数学では習熟度別授業を導入。中3では卒業論文を制作、夏休み前から準備し、6000字以上でまとめる。高2からは文科と理科、さらに高3では理科コースが2つに分かれる。進路に応じた選択科目も多数用意されている。中学では主要教科を中心に昼休み・放課後に補習を実施、高校では長期休暇中にも受験講習を行っている。ICU、青学、早慶などに推薦枠があるのも大きな魅力だ。
2期制で、土曜日は休日としている。1日は礼拝で始まり、中学・高校とも週1回の合同礼拝もある。高校では礼法の授業がありしつけにも厳しい。タータンチェックのスカートの制服はあまりにも有名。校内にはイギリスの学校の雰囲気が漂い、生活スタイルも校舎内で革靴を履いたまま過ごす欧米流。クラブ活動ではハンドベルクワイヤーや弓道部が知られている。花の日礼拝、イースター、クリスマスなど礼拝形式の行事が多く、そのほかキャンプ、コ・ラーナーズ・デイ(研究発表会)、頌栄フィールド・デイ(運動会)、カナダとイギリスの語学研修など盛りだくさん。奉仕活動にも力を入れている。