シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

駒場東邦中学校

2017年11月掲載

駒場東邦中学校の算数におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

3.自分の興味関心で進路を開拓。なかには数学の道を選ぶ人もいる。

インタビュー3/3

数学の道に進む人もいる

数学ができる生徒さんの進路はやはり理系ですか。

佐藤先生 そうですね。理数系に進む生徒が多いです。中には、数学だけでなく、全教科できる生徒がいます。そういう生徒は自分の興味で進路を選びます。

そういう生徒は、おそらく理的思考力を生まれもっているのでしょうね。

佐藤先生 そうだと思います。私が受け持った生徒の中に数学や物理がすごくできる生徒がいました。ただ、国語、英語が苦手だったので東大か東工大で悩んでいました。でも結局は東大を受験すると自分で決めて進学しました。今は大学院に進み数学の研究をしています。卒業生にも数学の教授になっている人がいます。その他、工学、医学など、いろいろな道に進んでいます。

自分の興味関心から進路選択へ

進路は入学当初から決めている生徒さんが多いですか。それとも入学後に紆余曲折のなかで決めていくのでしょうか。

佐藤先生 入学当初から決めている生徒は少ないと思います。

千田先生 中学生で決まっている生徒は多くないですね。

佐藤先生 高校では、研究者や業界の人に講演会をしていただく、あるいは卒業生の話を聞く機会を設けています。いろいろな話を聞くなかで、自分の興味関心はどこにあるのかと自分で探すことが進路選択につながっていると思います。

塾の印象では保護者に医者が多く、子どもはそれほど思っていなくても、「医者にしたい」という保護者の思いが強いような気がしますが。

佐藤先生 昔はそうだったかもしれませんが、ここ最近は変わってきたと思います。そういうご家庭は少なくなっていると思います。逆に、保護者が医者ではない家庭で育った子どもが自分自身で医者という職業を選び、受験しているケースが増えているように感じます。

数学でつまずいたら指名制の夏期講習でフォローする

優秀な生徒さんばかり。その集団でも上位層にいられる生徒さんと、そうではない生徒さんが出てくると思いますが、そのあたりはいかがでしょうか。

千田先生 中1の1学期は、自分がどのあたりにいるのかを非常に気にしています。それはよく感じます。夏休みが終わった頃にいろいろわかってくるというか。自分の立ち位置が落ち着いてくるような気がします。

佐藤先生 定期試験では明確な順位は出しません。分布表くらいなので、自分の点数を見て、いいか悪いかは判断できます。

千田先生 点数が取れなかった生徒については、指名制の夏期講習などでフォローしています。

佐藤先生 順位がわかるのは、3学期の最初に実施している校内実力試験です。この試験では順位を出しているので、自分がどのあたりにいるのかが明確になります。

駒場東邦中学校 生徒が作った立体模型

駒場東邦中学校 生徒が作った立体模型

数学は積み重ねが大切

6年間かけて、下位から上位へ上がるケースはありますか。

佐藤先生 あると思います。大学入試を意識するなどなにかしらでスイッチが入り、奮起すると、それまで低迷していた子が急に頭角を現すということが起こります。

そういう生徒さんは、入試を突破してホッとしてしまったのか、入学時には余力がなかったのか。

佐藤先生 数学は積み重ねが大切なので、最低限のことをやって進んでくれれば大丈夫ですが、そうではないと、積み重ねができなくなった地点に戻らなければいけません。ですから、最低限の積み重ねについては注意を促しています。

よく考え、考えた道筋を言葉にする力をつけよう

最後に、小学生にアドバイスをお願いします。

佐藤先生 どんな問題も真剣に取り組み、試行錯誤をしてほしいです。算数から数学に変わると、答えを出すだけでなく、そこに至る過程も大事になるので、受験勉強のなかでも式を書いたり、言葉を補ったりする練習をしてきてほしいと思います。答えを出すことだけが数学ではないので、そういう学習の仕方が数学を学ぶうえで生きてくると思います。

千田先生 先日、ある生徒を指名して、自分の解き方を黒板に書かせて、説明をさせたらうまく説明できないということがありました。クラスの中でその子だけが答えにたどりついていたので指名したのですが、自分の考えた道筋を説明できないのです。自分なりの根拠はあると思います。ただ、細かいことを伝えられないので、そこをもう少しできるようになってほしいという思いがあります。学校の勉強にしても受験勉強にしても、自分の考えを人に伝える、表現できる力がつくような勉強の仕方をしてきてほしいと思います。

駒場東邦中学校 正門

駒場東邦中学校 正門

インタビュー3/3

駒場東邦中学校
駒場東邦中学校1957(昭和32)年4月、東邦大学の理事長であった額田豊博士が、当時の名門・都立日比谷高校校長の菊地龍道先生を招き、公立校ではできなかった夢を実現させるため、現在地に中・高を開校。71年に高校募集を停止し、完全中高一貫教育の体制が確立した。2017(平成29)年に創立60周年を迎えた。
神奈川、東京のどちらからも通学至便で、東大教養学部にも程近い都内有数の文教地区に位置。300名収容の講堂、6万9千冊の蔵書を誇る図書室、9室の理科実験室、室内温水プール、トレーニング室、柔道場、剣道場、CALL教室など申し分ない環境が整っている。職員室前のロビーには生徒が気軽に質問や相談をできるよう、机やイスを設置している。
先生、生徒、父母の三者相互の理解と信頼に基づく教育を軸に、知・徳・体の調和のとれた、科学的精神と自主独立の精神をもった時代のリーダーを育てることを目指す。年間を通じて行事も多く、とくにスポーツ行事などでは、先輩が後輩の面倒をよく見る「駒東気質」を培う。中1では柔道・剣道の両方を、中2・中3はどちらかを履修することになっている。
2004年から中学校では1クラス40名、6クラス編成に。「自ら考え、自ら行動する」習慣を身につけながら、各教科でバランスのとれた能力を身につけることが目標。英・数・理では特に少人数教育による理解の徹底と実習の充実をはかっている。中1・中2の英語と理科実験は分割授業。数学は中2(TT)・中3(習熟度別分割)・高1と高2(均等分割)の少人数制授業を行う。英語は、深い読解力をつけるために中3~高3までサイドリーダーの時間を導入。さらに高3ではネイティブ指導のもと自分の考えを英語で表現するコンプリヘンシブ・クラスなど独特の指導も展開している。文系・理系に分かれるのは高3になってから。中学生は指名制、高校生は希望制の夏期講習を実施する。
濃紺の前ホック型詰襟は、いまや駒東のトレードマーク。伝統的に先輩・後輩の仲がよく、5月中旬の体育祭では全校生徒が4色の組に分かれ、各色、高3生の指導の下、一丸となって競い合う。9月の文化祭は、多くの参加団体と高校生約200名で構成される文化祭実行委員会によって、一年かけて準備される。中学では林間学校、鎌倉見学、奈良、京都研究旅と探究活動が充実しており、高校の修学旅行は生徒によって毎年行き先が決められる。クラブは文化部16、体育部16、同好会15があり、兼部している生徒も多い。中学サッカー部・軟式野球部・アーチェリー部・囲碁部・陸上部・化学部・模擬国連同好会などは関東大会や全国大会に出場。アメリカ・台湾への短期交換留学制度もある。