シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

立教新座中学校

2017年11月掲載

立教新座中学校の理科におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

3.大学受験にとらわれずじっくり学べる環境

インタビュー3/3

立教学院は小中高大の一貫連携度が高い

久保先生 立教学院では、夏休みに高校生対象の一貫連携教育プログラム「立教大学理学部 実験体験講習会」を開いています。大学での研究に興味を持つ高校生にとって、先端的な研究の一端を知るいいチャンスです。
小学校から中学・高校・大学まで一貫した連携教育を実現しようと、教科ごとにワーキンググループを設けて、各校の教員が集まって研究・研修活動を行っています。
立教学院の理科教員も年3~4回集まって上下の連携を図っています。中高の教員が小学校で出張授業をしたり、大学の講座を受け持っています。逆に、立教大学で教鞭を執っていた方が高校で講義しています。大学の付属校として一貫連携はかなり取れているのではないかと思います。

立教新座中学校 図書館

立教新座中学校 図書館

大学生に教えてわかった中高で必要な力

久保先生 私も立教大学で「生物学序論」の講義を持っています。大学で教えていると、中高でどんな力をつけて送り出せばいいかが見えてきます。大学生を見て一番に感じたのは「書けない」ということです。長々とは書けても要約するのは苦手なようです。
授業では教科書に詳しく書いてあることを、ポイントを押さえてまとめるとこうなるという例を板書します。自分で“小さな教科書”を作るイメージです。

科学的な文章は誰が読んでも同じ解釈をされる

久保先生 中学は知識を整理し活用して考える力を、高校では高度な知識を活用できる記述力、表現力を身につけます。表現力まで要求できるのは、自分の考えが構築される高校生になってから。成長段階に沿った学力を鍛えます。
中学の実験レポートはフォーマット化されていますが、実験操作や結果、考察は自由記述です。模範になるような分かりやすい説明、ユニークな視点の考察はクラスで共有します。

見ているものは同じでも、見方によって「何を」強調するかは違います。科学的な文章は、誰が読んでも同じく解釈されることです。いくつかあるポイントの中で何を強調して伝えたいのか、そのためにどのように表現するのかを、生徒につねに問いかけています。
相手に伝わる文章を書くには、伝えるべきポイントを整理しなければなりません。読み手としては、余計なことが書かれていると非常にストレスを感じます。あれもこれもと欲張って知識を盛り込むと、問題で要求されているのとは違う方向へ論理が進んでしまうことがあります。ですから書く前に自分は何を伝えたいのかを整理しなければなりません。それは「話す」ことにも当てはまります。

立教新座中学校 セントポールズフィールド

立教新座中学校 セントポールズフィールド

表現力の集大成は高3の「卒業研究論文」

久保先生 立教新座では「テーマをもって真理を探究する力」「豊かで的確な日本語の能力」の育成を目指す教育目標の集大成として、高3の「卒業研究論文(卒論)」に取り組みます。
自由選択科目には卒論のための「卒論演習」があります。自由選択科目の中で自分のテーマに合う講座があれば、受講しながら担当教員に指導してもらえるかどうか生徒が自分で交渉します。ときには非常勤の教員にも手伝ってもらい、できるだけ多様なテーマに対応できるようにしています。

生徒は最初に大風呂敷を広げてしまいますが、できることは限られます。自分でできること、やれることと、主張したいことのバランスを取るよう指導します。
評価ポイントは、切り口の独創性や論理の構成力、読み手にわかりやすく言いたいことが伝わる表現力などです。卒論の文字数のめやすは1万2000字ですが上限はありません。ただし長文は内容がかなり洗練されていないと読み手が飽きてしまいます。DNAの二重らせん構造を発見したワトソンとクリックが、わずかA4用紙約1枚の論文でノーベル生理学・医学賞を受賞したことを例に、「量ではなく中身(質)が大事だよ」と話しています。
優秀な作品は小冊子にまとめます。より評価が高い卒論は全文載せ、評価の高さによって論旨だけ、タイトルだけ載せています。

立教新座中学校 チャペル

立教新座中学校 チャペル

高3の1・2時限目は自分らしく有意義に過ごそう

久保先生 高3に履修する自由選択科目は約80種類あります。本校の教員の専門分野を生かした講座や立教大学の教員による講座も設け、大学での専門研究につながるような多種多様な選択科目を用意しています。
高3の授業はほとんどが選択科目になります。月~金曜日の1・2時限目は自由選択科目なので、曜日によっては3時限目から登校できます。どう過ごすかは生徒の自主性に任せています。
以前に比べると自由選択を取る生徒が増えています。過ごし方がわからず漠然とした不安があり、何かやっていれば安心するのか、必ずしも積極的な選択をしている生徒ばかりではないようです。本校には自分のやりたいことをやれる時間があります。だからこそ、「自由をもてあまさないで」と言いたい。この時間を自分らしく、有意義に活用して自由を楽しんでほしいと思います。

立教新座中学校 パイプオルガン

立教新座中学校 パイプオルガン

枠にはまらない、とらわれないことで可能性が広がる

久保先生 入学当初は思いついたことをそのまま口にしていた生徒が、積み重ねた知識や経験を基に、好き・嫌いとは違う基準で判断できるようになります。高3になると結論を導くまでのプロセスも説明でき、高3のクラス担任として生徒の成長を感じます。
生徒には偏ることなくいろいろなことに興味を持ってほしいですね。興味があれば知識も定着するでしょうし、自分で学び進むことができるでしょう。科学的思考力は多方面に応用が利きます。将来、枠にとらわれずいろいろなことにチャレンジできるように、中高6年間で基礎的な考え方や表現力を身につけさせたいと思っています。

インタビュー3/3

立教新座中学校
立教新座中学校1874(明治7)年に米国聖公会のC.M.ウィリアムズにより東京築地に設立された、英語と聖書を教える「立教学校」が母体。戦後、池袋に新制立教中・高等学校が開設、60(昭和35)年に高校が新座へ移転。2000(平成12)年より新座には中学校が、池袋には高校ができそれぞれ中高一貫校として生まれ変わった。自由な校風のもとで、愛の魂と正義の心を培うという教育の目標は、立教学院に属する小学校から大学まで共通で、さらに小・中・高・大間の「一貫連携教育」の実現を目指す。「キリスト教に基づく人間形成」に主眼をおき、学校生活のすべてに祈りの姿勢をもって臨むことを重視。「強くしなやかな個性と品格をもった生徒」の育成を目標としている。
中高だけでも9万7千m2、大学を含めると20万m2に及ぶ豊かな緑に包まれた広大なキャンパスには、蔵書16万冊を超える図書館(CDやビデオも豊富)や、野球場、陸上競技場、6面のテニスコート、サッカー・フットボール競技場、体育館、50m屋内プールなど贅沢なまでに多彩な運動施設がそろう。
小・中・高・大間の連携による「一貫連携教育」を目指すカリキュラム編成。中・高とも宗教の授業があり、中1では礼拝の時間もある。英語では中1~高1で習熟度別少人数授業を実施し、ネイティブによる英会話の授業にも力を入れる。中高ともに幅広い自由選択科目が特色。高3では立教大学の指定する大学での授業を履修できる。高2から「他大学進学クラス」を設置。立教大には例年卒業生の80%程度が推薦入学するほか、東大、一橋大などの国公立大や早慶上智大、東京理科大などに合格者を出している。
受験第一主義とは一線を画する一貫教育ならではのさまざまな学習機会を用意している。他者・自然などへの深い理解と共感性を育てるために、人間性を磨くオリエンテーションキャンプを実施。社会科や理科の校外学習、芸術鑑賞、夏休み中の自然サマーキャンプ、修学旅行などを通じて、実体験に基づいた幅広い知識・能力を身につける。国際交流も盛んで、中3対象のアメリカへのサマーキャンプや高校生対象のイギリスへのサマースクール、オーストラリアへの短期高校留学がある。海外からの留学生もくる。クラブ活動は、フェンシング、野球、テニス部などやユニークなチャペル・ギルド部もある。