シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

立教新座中学校

2017年11月掲載

立教新座中学校の理科におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

2.豊富な実験を通して科学的思考力を養う

インタビュー2/3

実験は中学だけでなく高校でも頻繁に実施

久保先生 実験は中学はもちろん、高校でも数多く行っています。実験室は全部で6つ、物理・化学・生物専用の他に、理科実験室・理科階段教室・理科講義室があります。分野によって差はありますが、化学は多いときで2回に1回実験をします。高校でもこれだけ実験できるのは、受験にとらわれない付属校ならではでしょう。
生物はできる限り本物に触れるようにしています。例えば中学ではブタの目やニワトリの心臓の解剖をします。高3の自由選択科目にはひたすら解剖だけを行う講座があります。

立教新座中学校 理科実験室

立教新座中学校 理科実験室

文理によらずどの教科もまんべんなく学ぶ環境

久保先生 高校の実験は文系・理系にかかわらず取り組みます。本校は、高1で生物基礎と化学基礎を、高2で物理基礎が全員必修です。さらに必修選択でも理科のいずれかの科目を取らなければなりません。土台の理科授業としては多い方でしょう。これだけの授業数を割くのは、論理的な思考力・表現力を身につけるのに理科の授業の重要性を理解しているからです。

貴校は文系でも数学をしっかり学ぶ環境にありますね。中高でまんべんなく学べる環境にあるのは、子どもにとって将来どんな道に進むにしてもプラスになるでしょう。

久保先生 経済に関心のある生徒にとって数学は必須です。大学からも「本校の生徒は数字に強い」と言われます。まんべんなく学ぶことで「引き出し」を増やせると思います。

自ら調べ、考える中学の「理科校外学習」

久保先生 中1~中3は学年ごとにテーマを設けた「理科校外学習」を実施しています。「本物に触れる」「自ら確かめる」「結果について考察する」こと基本に、テーマに沿って調査・観察しレポートをまとめます。

中1は、今年度から宇宙航空研究開発機構(JAXA)など筑波研究学園都市の研究施設などを見学するコースに変更しました。昨年度までは葛西臨海水族館または日本科学未来館の選択でしたが、多くが小学生のときに見学しているため、新しい体験を提供することにしました。新コースは概ね好評でした。

「自ら学ぶ」がテーマの中3は、興味のある科学館や博物館を自分で選んで見学します。中1・中2は配布したワークシートに書き込みますが、中3にはレポートの書き方の手順書を渡し、それに沿ってレポートを作成します。評価が高い生徒は、オープンキャンパスや文化祭で口頭発表します。

例えば、どんなテーマに取り組んでいるのですか。

久保先生 ペットボトルで水時計を作り、より正確に時間を計るための工夫を研究したり、海外の博物館で見学したことを体験記としてまとめたり、さまざまです。

立教新座中学校 理科講義室

立教新座中学校 理科講義室

授業内にグループで調べ学習から発表までを行う

久保先生 今年度から中2の生物の「進化」の単元で、図書館を利用して、グループで調べ学習をしてポスター発表する授業を始めました。
チームとして機能するように、発表原稿を作る、ポスターに要点をまとめるなど、各自が得意なことで力を発揮できるように役割分担しました。4~5人の小グループだったこともあり、他人任せにする生徒はいませんでした。
教科書に載っていないことを調べてもらったことで生徒の興味を刺激し、主体的な姿勢が見られ、効果が高いと感じました。同じテーマを与えても、グループによって切り口や表現に違いが見られ、生徒は別の視点を獲得できたと思います。
このように、授業では大勢が集まる学校だからできることに取り組んでいきたいと思っています。

立教新座中学校 理科掲示板

立教新座中学校 理科掲示板

授業はみんなが集まる場だからできることをしよう

久保先生 中学生には「君はどう考える?」と投げかけて発言を促します。「知らない」と答える生徒が多いので、「知っているかどうかではなく、『どのように』考えるのかを聞いているんだよ」と言って考えさせます。
学ぶ内容は教科書に詳しく書いてあるので、本校の生徒なら読めば理解できます。だから「授業は頭を使って考えることを楽しもう」というのが本校のスタンスです。授業では教科書の内容をなぞるのではなく、自分の考えを表現したり、仲間の考えを聞いてさらに考える場にしたいと思っています。
学んだことが定着するように、なるべくいろいろな分野のつながりをその都度意識させるようにしています。理科は分野が分かれていますが、サイエンスとして有機的に結びついています。つねに全体を見わたせる視点を養いたいと思っています。

インタビュー2/3

立教新座中学校
立教新座中学校1874(明治7)年に米国聖公会のC.M.ウィリアムズにより東京築地に設立された、英語と聖書を教える「立教学校」が母体。戦後、池袋に新制立教中・高等学校が開設、60(昭和35)年に高校が新座へ移転。2000(平成12)年より新座には中学校が、池袋には高校ができそれぞれ中高一貫校として生まれ変わった。自由な校風のもとで、愛の魂と正義の心を培うという教育の目標は、立教学院に属する小学校から大学まで共通で、さらに小・中・高・大間の「一貫連携教育」の実現を目指す。「キリスト教に基づく人間形成」に主眼をおき、学校生活のすべてに祈りの姿勢をもって臨むことを重視。「強くしなやかな個性と品格をもった生徒」の育成を目標としている。
中高だけでも9万7千m2、大学を含めると20万m2に及ぶ豊かな緑に包まれた広大なキャンパスには、蔵書16万冊を超える図書館(CDやビデオも豊富)や、野球場、陸上競技場、6面のテニスコート、サッカー・フットボール競技場、体育館、50m屋内プールなど贅沢なまでに多彩な運動施設がそろう。
小・中・高・大間の連携による「一貫連携教育」を目指すカリキュラム編成。中・高とも宗教の授業があり、中1では礼拝の時間もある。英語では中1~高1で習熟度別少人数授業を実施し、ネイティブによる英会話の授業にも力を入れる。中高ともに幅広い自由選択科目が特色。高3では立教大学の指定する大学での授業を履修できる。高2から「他大学進学クラス」を設置。立教大には例年卒業生の80%程度が推薦入学するほか、東大、一橋大などの国公立大や早慶上智大、東京理科大などに合格者を出している。
受験第一主義とは一線を画する一貫教育ならではのさまざまな学習機会を用意している。他者・自然などへの深い理解と共感性を育てるために、人間性を磨くオリエンテーションキャンプを実施。社会科や理科の校外学習、芸術鑑賞、夏休み中の自然サマーキャンプ、修学旅行などを通じて、実体験に基づいた幅広い知識・能力を身につける。国際交流も盛んで、中3対象のアメリカへのサマーキャンプや高校生対象のイギリスへのサマースクール、オーストラリアへの短期高校留学がある。海外からの留学生もくる。クラブ活動は、フェンシング、野球、テニス部などやユニークなチャペル・ギルド部もある。