シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

立教新座中学校

2017年11月掲載

立教新座中学校の理科におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

1.段階を踏みながら解き進めていく問題

インタビュー1/3

オジギソウの不思議な動きのしくみを考える

久保先生 オジギソウは触るなど何らかの刺激を感知すると、素早く葉を閉じ、葉柄(ようへい)がおじぎをするように垂れ下がります。まるで“おじぎ”をするような不思議な動きを入試問題で問えないかと、数年前から考えていました。
オジギソウは小学生の夏休みの自由研究でよく使われていると聞きました。研究内容を調べると、熱を与えたり、線香の煙を近づけるなどして刺激の種類を変えて反応の有無を調べるものが多く、動きのしくみについては調べていないようでした。
おじぎのしくみは小学生が学ぶ内容ではありませんが、オジギソウは子どもが知っている身近な植物で、インパクトのある動きが興味を引くと思い、入試問題として出題しました。
本物を見てほしいのですが、原っぱがなくなった都市部では見られなくなりました。インターネットの動画を見て、「実際に見たい!」と思ってくれるといいですね。

理科/久保 裕一郎 先生

理科/久保 裕一郎 先生

オジギソウを知らなくてもリード文を読めばわかる

久保先生 正答率は公にはしていません。この問題の難易度は高くないので、ほとんど間違えないのではないかと思っていましたが、⑤の語群を間違えて選んだ受験生がいました。リード文をきちんと読まなかったのか、慌ててしまったのかもしれません。

男子は「早く問題を解きたい」という思いが強く、リード文を読まずに問題を解こうとする傾向があります。リード文を読む大切さを、この問題を通して気づいてほしいですね。

久保先生 この問題はオジギソウを知らなくても、リード文をきちんと読めば解き進められるように作りました。オジギソウを知らない受験生が、リード文を読んで「実際に見てみたい」と食いついてくれたらうれしいですね。
この問題に限らず、本校の入試問題は、「実験してみたい」「試してみたい」あるいは「本当にそうなるの?」と思わせるような問題づくりを心がけています。

立教新座中学校 校内

立教新座中学校 校内

ステップ・バイ・ステップで問題を解く過程を楽しむ

久保先生 理科の入試問題は、4分野バランスよく出題しています。作問にあたっては物事を理解するプロセスを大切にしています。この問題でも、リード文をしっかり読み解き、必要な情報を整理して、自分で論理を組み立てる力を試しました。
単に知っている・知らないを試す問題は解いていてもつまらないし、それでは記憶力のある受験生だけが優位になります。選択問題でも、いくつかステップを踏みながら正解にたどり着くような、やり甲斐がある問題を意識しています。
この問題に必要な力は、段階を踏んで物事をじっくり考える力です。生物の問題はどちらかというと、瞬発力よりも、読解力や考察力のようなじっくり考える力が求められるように思います。

解答のプロセスを踏みながら解き進む問題は、自分がどこまで理解できていて、どこから先が理解できなかったのか振り返ることができます。作問者も、問題を解くステップを区切ることで子どもがどこまで理解できたか確認できます。

立教新座中学校 校舎

立教新座中学校 校舎

物理の計算問題では「瞬発力」が必要

理科において、どんな問題で「瞬発力」が必要とされるのでしょうか。

久保先生 例えば、物理の計算問題は、比の関係を見つけるなど、一目見て「これだ」とひらめいたら一気に計算を進めるのがいい。逆に、一つひとつ考えていくとかえって行き詰まります。
物理の計算問題は計算ミスが気になります(2017年第1回入試は「電流と発熱」)。出てきた答えから、途中までは合っていることが推測されます。理科の問題では途中式を求めていないので、考え方が合っていても答えが間違えれば得点できません。簡単な計算なのでもったいないですね。
上位層はおそらく瞬発力で解いているのではないかと思います。まともに計算すると少し時間が足りないくらいの問題量です。一通り問題を解いていて正答率も高いということは、大人に近いような思考力ではないかと思います。

インタビュー1/3

立教新座中学校
立教新座中学校1874(明治7)年に米国聖公会のC.M.ウィリアムズにより東京築地に設立された、英語と聖書を教える「立教学校」が母体。戦後、池袋に新制立教中・高等学校が開設、60(昭和35)年に高校が新座へ移転。2000(平成12)年より新座には中学校が、池袋には高校ができそれぞれ中高一貫校として生まれ変わった。自由な校風のもとで、愛の魂と正義の心を培うという教育の目標は、立教学院に属する小学校から大学まで共通で、さらに小・中・高・大間の「一貫連携教育」の実現を目指す。「キリスト教に基づく人間形成」に主眼をおき、学校生活のすべてに祈りの姿勢をもって臨むことを重視。「強くしなやかな個性と品格をもった生徒」の育成を目標としている。
中高だけでも9万7千m2、大学を含めると20万m2に及ぶ豊かな緑に包まれた広大なキャンパスには、蔵書16万冊を超える図書館(CDやビデオも豊富)や、野球場、陸上競技場、6面のテニスコート、サッカー・フットボール競技場、体育館、50m屋内プールなど贅沢なまでに多彩な運動施設がそろう。
小・中・高・大間の連携による「一貫連携教育」を目指すカリキュラム編成。中・高とも宗教の授業があり、中1では礼拝の時間もある。英語では中1~高1で習熟度別少人数授業を実施し、ネイティブによる英会話の授業にも力を入れる。中高ともに幅広い自由選択科目が特色。高3では立教大学の指定する大学での授業を履修できる。高2から「他大学進学クラス」を設置。立教大には例年卒業生の80%程度が推薦入学するほか、東大、一橋大などの国公立大や早慶上智大、東京理科大などに合格者を出している。
受験第一主義とは一線を画する一貫教育ならではのさまざまな学習機会を用意している。他者・自然などへの深い理解と共感性を育てるために、人間性を磨くオリエンテーションキャンプを実施。社会科や理科の校外学習、芸術鑑賞、夏休み中の自然サマーキャンプ、修学旅行などを通じて、実体験に基づいた幅広い知識・能力を身につける。国際交流も盛んで、中3対象のアメリカへのサマーキャンプや高校生対象のイギリスへのサマースクール、オーストラリアへの短期高校留学がある。海外からの留学生もくる。クラブ活動は、フェンシング、野球、テニス部などやユニークなチャペル・ギルド部もある。