シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

光塩女子学院中等科

2017年10月掲載

光塩女子学院中等科の社会におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

3.「自分ができることはしたい」と思ってくれる子を増やしたい。

インタビュー3/3

新聞ノート作りが社会へ目を向けるきっかけに

生徒さんが主体的に学習に取り組む活動として行っている「新聞ノート作り」について教えてください。

西谷先生 中2から高3まで、5年間通して行っている取り組みです。各自が新聞に目を通し、気になる記事をスクラップ。それを切り口に「新聞社ではこんなことを報道しているよ」と、記事をみんなで共有し、学習につなげています。1週間に1日程度、「すごく大きなニュースが出たときにやればいいんだよ」と言っていますが、ほぼ毎日やって来る子がいます。
眞子様のご婚約の時は「あの方は結婚したらどうなるのですか」という質問が出ました。「どうなると思う?」と聞くと、「一般人になる?」。「そう。一般人になると、今までできなかったことができるようになるんだよ」と言うと、「えー」という声が挙がりました。本校では中2で公民を学びます。日本国憲法を学習する時に、「天皇は主権者ではない。皇族の方々も…」という話をするのですが、そこで先ほどの眞子様の話を取り上げるわけです。「眞子様ができなかったことって何?」「たとえば(結婚後は)選挙にも行ける」と言うと、「そういうことなのか」ということをみんなが納得してくれます。

光塩女子学院中高等科/3号館ホール

光塩女子学院中高等科/3号館ホール

新聞記事をもとにさまざまな意見が飛び交う

西谷先生 新聞の一面にも、眞子様の生活がこう変わられるということも出ていて、生徒は関心を示していました。新聞記事に注目していると切り口が自然と広がっていきます。そのうち世の中のことは自分と無関係ではない、という意識が身につきます。自分は18歳になれば投票権をもつけれど、皇族の方々はそうではないんだという意識もそのひとつです。
皇族の方々の活動について、「どう思いますか」と聞くと、外国へのイメージや、オリンピック・パラリンピックが行われるときに、「意義がありますよね」という意見が出てきます。一方で「税金がかかる」などのシビアな話も出てきます。いろいろな意見が出るので、新聞ノートは少しずつでもやっていければいいと思っています。

光塩女子学院中高等科/校舎内

光塩女子学院中高等科/校舎内

今年度から主権者教育を高1で実施

主権者教育についても教えていただけますか。

西谷先生 一度、私が希望者を対象に主権者教育の講座を開きました。その時に、「全員が主権者になるので、希望者対象ではいけない」と思いました。そこで今年度から高1全員を対象に総合学習の時間を使い、主権者教育を実施しています。新聞社の方をお招きし、新聞の読み方に始まり、取材する側のお話や、選挙に際して有権者が見極めるポイントなどについても説明していただきました。
主権者になるということは、納税者になるということです。今後は税務署の方をお招きし、納税の義務についてもお話をいただく予定です。納税には公共のサービスを受ける対価という意味合いがありますよね。定期的にゴミの収集をしてくれる、下水道が問題なく使えるなど、あたりまえに感じていることも、納税があって成り立っていることがわかると、社会を構成している一員という意識をもてるのではないかと思います。そういう意識をもって高2になってほしいですし、家庭であれ、社会であれ、支える存在になっていくという意識を育てていきたいと考えています。

社会参加を促す授業を心がければ生徒は変わる

教科書だけの授業ではない、というのがよくわかります。

西谷先生 中学生は、なにを勉強すればいいのかわからなくなるといけないので、教科書を基準にしています。ただ、今は話題に事欠かないので、授業が始まる前にはいろいろ話しています。(女子は)雑談が好きですからね。授業の内容につながる雑談ができると、授業への意識が非常に高まります。家に帰ってから、(授業で聞いた、話したことを)親御さんと話すこともよくあるようです。ありがたいことです。
昨年の都知事選挙の時も、私が授業を担当している高3の生徒から「誕生日が来てなくて残念」「都民じゃないから残念」という声が多く挙がりました。みんな選挙に行きたかったのです。選挙に向けては、政党に偏りが出ないよう注意して各政党の主張などをまとめて廊下に貼りました。投票権のある子は熱心に読んでいました。

本当に、なんでも題材になりますね。

西谷先生 小池都知事が遊説で高円寺駅前に来たこともありました。駅を利用しようと向かったら生徒がいて、本来なら帰っていなければいけない時間だったので理由を聞くと、「街頭演説を聞く」と言います。「そういうことならどうぞ」と言いました。
20歳から18歳に拡大しても選挙に行かない人は行かない、投票率は上がらないという声もありますが、確実に変わっていると思います。私たち教員が授業を工夫したり、語りかけをしたりしていけば、自分ができることはしたいと思ってくれる子が増えると思います。本校では、政治経済の授業は高2、高3ともに必修なので、理系の子も受けます。今年の高3は理系が多いのですが、(受験科目ではない分)肩の力を抜いて参加できるからか、わりと自由に意見を言ってくれます。卒業生から政治家になる子が出てくれれば、直接参加ですからとても嬉しいです。

光塩女子学院中等科/聖母マリア像

光塩女子学院中等科/聖母マリア像

インタビュー3/3

光塩女子学院中等科
光塩女子学院中等科1931(昭和6)年、スペインを発祥とするカトリック・メルセス宣教修道女会によって、かけがえのない自分に目覚めた女性を育てることを目的として、光塩高等女学校が設立される。47年に現在の校名に改称、高等科・中等科・初等科を設置。55年、幼稚園を設立した。2001年(平成13)に高校募集停止。
人間はすべて「世の光、地の塩」であるという真理が校名に刻まれているように、かけがえのない「自分」の存在に目覚め、惜しみなく己を他人のために開くことのできる人間に成長することを願う。年に数回個人面談があり、フランクに日頃思っていることを話し合う機会を設けており、教師と生徒、生徒同士、教職員同士の相互の「信頼感」に支えられた温かく密なコミュニケーションの雰囲気がある。生徒の真に主体的で、調和のとれた人格の発達を目指している。
白とレンガ模様を基調とした校舎は、施設拡充を積極的にはかったもの。地下には聖堂、体育館がある。校内は清楚で落ち着いた雰囲気。
1学年5~6名の教師が担当する共同担任制を採用している。一人ひとりの学力を伸ばすことを大切に考え、中学の英・数や、高校の英・数・理などでは習熟度別授業を実施。高2からは授業の5割を選択科目とし、生徒がそれぞれ自分の進路にあわせた時間割を組めるようにしている。小テストがこまめに行われ、漢字とスペリングは月2回、中1・中2の計算小テストは月2~3回ある。英語の教科書は『NEW TREASURE』を使用。4技能(読む・聞く・書く・話す)をバランスよく学び、国際的にも十分通用する英語力の習得を目指す。自分で考え、分析する力の養成も重視し、国語や社会では「書く」機会を多く作り、高2の教養演習ではクリティカル・シンキングも取り入れている。難関大学への実績も好調で、理数系進学者は4割。
高3まで、週1時間、倫理の時間を設けている。クリスマスやミサなど、宗教的な行事のほかに文化祭、林間学校、中・高が合同で行う体育祭、弁論大会などの学校行事があり、すべて学年単位で取り組み、学年ごとの結束が強い。創立当初から奉仕の精神を大切にし、ボランティア活動も盛んで、10月の親睦会はバザーとしての意味あいも強い。クラブ活動は体育系7、文化系11あり、中高合同で活動し、学業と両立できるように、通常の1週間の活動日は2日以内だが、約9割の生徒が参加している。