シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

光塩女子学院中等科

2017年10月掲載

光塩女子学院中等科の社会におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

2.世の中には学ぶ材料がたくさんある。それを生かさない手はない。

インタビュー2/3

リード文のテーマをもとに問題づくりが始まる

リード文のテーマ、今回でいえば「共同体」も、皆さんで案を出しているのですか。

西谷先生 それは私です。ここ数年、私が提案しています。ですから入試問題をつくる際には、まず「どういう問題意識があるか」「ここまでは聞きたい」「これ以上は必要ない」など、そのテーマにもとづいた意見を出してもらい、それを共通認識として問題をつくっています。ですから社会科のどの教員に聞いても、問題づくりのテーマやコンセプトがわかっています。

教頭/烏田 信二先生

教頭/烏田 信二先生

1つのチームで生徒を見る。それが信条

西谷先生 本校では1学年を複数の教員で受け持つ「共同担任制」を導入しています。1つのチームで生徒を見るという基盤があるので、教科においてもチームで進めていくということが当たり前になっています。カリキュラムの変更など、社会科全体にかかわることにもチームで取り組んでいます。学校全体で話し合う時も、教員間にバリアはありません。それが学校の伝統です。ある程度、教員がまとまっていれば、生徒に対して公平、公正に対応できるであろうという考えがベースにあります。
研修があれば、行ける人は皆行きますし、そこで得られた情報はすべて社会科の中で共有して、中高6年間一貫指導に生かしていくという考え方が浸透しています。

授業のやり方なども共有しているのですか。

西谷先生 授業については各自のやり方を尊重しています。学年ごとのカラーもあるので、担当の先生方でやっていただくことを基本とし、もし問題があれば皆で考えて対処していく体制があるということです。授業参観もお互いに行っています。授業を見ていると、その学年を翌年、誰が担当することになっても「ああ、この学年ね」というようにイメージが浮かぶので、素早く対応ができますよね。

日常の情報共有がベースにある

入試問題のリード文のテーマはどのように決めていますか。

西谷先生 なんとなくです。

烏田先生 日頃から新聞に目を通して、いろいろなところから多くの話題を集めているからではないですか。

西谷先生 たしかに「世の中は広いな。こんなことも起きるんだ」と常に驚いたり、感心したり。私だけでなく、他の教員も好奇心旺盛で、毎日のように情報を共有しているので、そういう毎日の積み重ねの中で自然と浮かんでくるような気がします。

社会科の先生は何名いらっしゃるのですか。

西谷先生 私を入れて8名です。30、40代が多いので、問題意識が一致しやすいということは言えると思います。

光塩女子学院中高等科/廊下

光塩女子学院中高等科/廊下

問い方に独特の観点

入試問題では、「こう言われているけれど、こうも言えるよね」という切り口が多いような気がします。

西谷先生 それはそうですね。

2016年入試の「クォーター制を割り当てる」という問題も、「反対の立場で書きなさい」としていました。「女性を活躍させるとしたら」と聞く学校が圧倒的に多い中で、問い方がおもしろいと思いました。

西谷先生 それも社会科の教員の中で、「女性ばかりではおかしくない?」という話が全員から出て、男性や性的少数者の方々ならどうなのかなど話し合いを重ねて、そういう問い方になりました。私たちはクォーター制に関しては「あり」。ヨーロッパで成功したし、それはあっていいのだろうと思いますが、なにか違う意見が必ず出てくるはずだから、それを聞きたいということになったのです。

半歩先にテーマをキャッチする

今年の問題でも「よく知りもしないで投票して、という声がある一方で、本当に笑えるの?」という問いかけが裏に見えます。

西谷先生 これだけ学ぶ材料が世の中に散らばっているのに、私たちは本当に生かしているのか。そういう意識はもっていたい、という思いがあります。

普段から、日々起きている出来事と向き合い、深く考えているから、テーマが自然と浮かぶのですね。

西谷先生 (入試の)テーマとして取り上げると、試験をしたその年に話題になるという傾向はありますね。生徒にも(入試のあとに)「報道されてましたよね」と言われることがよくあります。できるだけその時に脳裏にひっかかった動きをとらえるようにしています。今回「共同体」をとらえたことについては、自分の中にそういう危機感があったのだと思います。学校の中でも、私たちは小さな共同体であるということを、生徒に意識してもらっています。歴代の校長から「共同体」という言葉を聞き続けていて、それが頭に残っていたのかもしれません。

光塩女子学院中等科/新聞ノート資料

光塩女子学院中等科/新聞ノート資料

問題から意図を汲み取ってもらえると嬉しい

リード文も先生が書いているのですか。

西谷先生 はい。だいたい私が書いています。2000年度から理社の入試が始まりましたが、それ以来スタイルを変えていません。社会科の総合的な問題ととらえています。

総合のテストもそういう問題になるのでしょうか。

西谷先生 そうですね。総合の場合は教科をまたいで、ということになります。
全員が対等な立場で意見を出してつくっています。

来年の問題も楽しみです

西谷先生 入試問題は、お子さんたちに向けて作っていますが、大人の方が見てもこちらの意図が伝わるような問題づくりを心がけていますので、大人の方にもそう言っていただけるのが励みです。

インタビュー2/3

光塩女子学院中等科
光塩女子学院中等科1931(昭和6)年、スペインを発祥とするカトリック・メルセス宣教修道女会によって、かけがえのない自分に目覚めた女性を育てることを目的として、光塩高等女学校が設立される。47年に現在の校名に改称、高等科・中等科・初等科を設置。55年、幼稚園を設立した。2001年(平成13)に高校募集停止。
人間はすべて「世の光、地の塩」であるという真理が校名に刻まれているように、かけがえのない「自分」の存在に目覚め、惜しみなく己を他人のために開くことのできる人間に成長することを願う。年に数回個人面談があり、フランクに日頃思っていることを話し合う機会を設けており、教師と生徒、生徒同士、教職員同士の相互の「信頼感」に支えられた温かく密なコミュニケーションの雰囲気がある。生徒の真に主体的で、調和のとれた人格の発達を目指している。
白とレンガ模様を基調とした校舎は、施設拡充を積極的にはかったもの。地下には聖堂、体育館がある。校内は清楚で落ち着いた雰囲気。
1学年5~6名の教師が担当する共同担任制を採用している。一人ひとりの学力を伸ばすことを大切に考え、中学の英・数や、高校の英・数・理などでは習熟度別授業を実施。高2からは授業の5割を選択科目とし、生徒がそれぞれ自分の進路にあわせた時間割を組めるようにしている。小テストがこまめに行われ、漢字とスペリングは月2回、中1・中2の計算小テストは月2~3回ある。英語の教科書は『NEW TREASURE』を使用。4技能(読む・聞く・書く・話す)をバランスよく学び、国際的にも十分通用する英語力の習得を目指す。自分で考え、分析する力の養成も重視し、国語や社会では「書く」機会を多く作り、高2の教養演習ではクリティカル・シンキングも取り入れている。難関大学への実績も好調で、理数系進学者は4割。
高3まで、週1時間、倫理の時間を設けている。クリスマスやミサなど、宗教的な行事のほかに文化祭、林間学校、中・高が合同で行う体育祭、弁論大会などの学校行事があり、すべて学年単位で取り組み、学年ごとの結束が強い。創立当初から奉仕の精神を大切にし、ボランティア活動も盛んで、10月の親睦会はバザーとしての意味あいも強い。クラブ活動は体育系7、文化系11あり、中高合同で活動し、学業と両立できるように、通常の1週間の活動日は2日以内だが、約9割の生徒が参加している。