出題校にインタビュー!
光塩女子学院中等科
2017年10月掲載
光塩女子学院中等科の社会におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。
1.世の中の出来事とどう向き合っているか。その姿勢を問いたい。
インタビュー1/3
共同体というテーマに関連づけて出題
まずは出題意図からお願いします。
西谷先生 本校の社会科の入試問題は、900字程度のリード文を読むことから始まります。今年度のテーマは「共同体」でした。そういうことを問いたいという意識があり、そういえば…という感じで浮かんだのがイギリスの国民投票でした。国民一人ひとりが国のことを考えるのは理想ですが、実感としては「こんなことも起きるんだ」という、驚きのほうが大きかったのではないでしょうか。マスコミもショッキングな出来事として報道していたように思いますが、これは対岸の火事ではありません。日本でも国民が国家的な問題を本気で考えることになったら、どこまで判断できるか、わからないと思いました。
社会科主任/西谷 朋子先生
国民投票で是非を問う。それは日本でも起きること
西谷先生 学校でも生徒(中2)に聞いてみました。「なにも考えずに投票所へ行くことがあるのか」「そんなこと、あるわけないでしょ」というのが大方の反応でした。ただ、国民投票をテーマに話し合い、授業でだいぶ討論をすると、「イギリスは、って言えますか」という問いに、最終的には「言えない」と言っていました。同じようなことを小学生に聞くのはどうかなと思いましたが、問題意識は共有できるのではないかと思いました。
国民投票についてはいろいろな学校で出題されましたが、「EU」「イギリス」を答えさせる問題が多かったように思います。ここまで踏み込んで聞いている問題はありませんでした。
西谷先生 (受験生に)どのようなことができるかまでは求められないと思いましたが、「日本でも同じようなことが起きたらどうしよう」と不安を感じたり、疑問をもったり、考えたりしてほしいと思いました。国民投票で是非を問われる時代が、日本にも必ず来るという意識をもっていてほしかったのです。
自分の1票(主張)を大事にしてほしい
西谷先生 私が中学生と話した時には、「どうせこうなるよね」と投票に行かなかった人の存在も大きいということを投げかけてみました。私が投票しなくても、たかが1票だし(大勢に影響はない)という考え方の積み重ねがこういう結果を生むわけです。「あなたは行ったのですか」「いえ、行ってません」ということが日本でも確実に起きます。「私なんか」という考えがいかに恐いか。それを中学生と話題にしました。投票にかぎらず、普段の生活の中でもしっかり主張したほうがいいということも言いました。
女子校には主張する子もいますが、かなり慮る子もいます。いろいろな主張の仕方があるとは思いますが、「おかしい」「ここはそうじゃない」「私はこうしたい」と思ったら、普段の生活の中でも言ってほしいのです。声高な人の言い分だけが通っていくような風潮がありますよね。それについても意見を聞いて、アメリカのトランプ大統領のツイッターにも話がおよびました。中学生はだいぶ関心を持っており、それがわかったことは収穫でした。
光塩女子学院中高等科/教室
社会の出来事とどう向き合うか、姿勢を問いたい
西谷先生 社会科の問題をつくる時には、自分の事としてとらえているかを問う問題をできるだけ盛り込もうと思っています。北朝鮮のミサイルの件でも、東北の中学生の訓練の報道写真は衝撃でした。Jアラートが鳴ったらこういう行動を取る、という訓練をしていて、「そこまでやっているのか」と思いました。ロケットが日本を跳び越えたとして、もしそこに漁船がいたらどうなっていたか。そういう危機感をもちながら作問をしていきたいと思っています。
(問3)<たとえば日本で国民投票を行う場合、そのテーマとして最も適さないものを1つ選び記号で答えなさい>も、先生方の間で議論をされて、このような出題になったのですか。
西谷先生 そうです。国民投票といえば、本来どういうことがテーマになるべきなのかを考えてほしいと思いました。将来、こういうことが起きるかどうかはわからないですけどね。共同体の中では、他人事ではないという意識をもつことが大切だと思い、出題しました。
本気が伝わった
(掲載した問題は)よくできていましたか。
西谷先生 正答率は7割近くでした。私たちが問うたのは国民投票の課題でしたが、「こうして解決したほうがいい」というところまで書いている答案が目立ちました。たとえば「もっと教育しなければいけない」とか。「そういう人が投票できない仕組みを作らなければならない」とか。そういうところまで書いている受験生が多かったです。
解決策まで書いた場合は減点ですか。
西谷先生 解決策は蛇足なので、満点にはならないですね。「現実問題としてこういうことが起こりうる」ということを書いてもらえれば十分でした。ただ、前半部分(設問に対する答え)が合っていれば加点しました。記述問題に関しては内容を汲み取ることができれば加点で採点しています。
採点をしていて感じたことはありますか。
西谷先生 危機感をもっているということは伝わりました。本気で書いてくれている答案が多かったです。
光塩女子学院中高等科/図書室
答えやすい問題をつくりたい
入試問題をつくるうえで気をつけていることを教えてください。
西谷先生 小学校では5年生、6年生で歴史を勉強しているので、そこをまず問い、地理と公民を問うという順番には気をつけています。また、リード文を含めて答えやすい問題をつくること、あまり難しい言葉を問わないこと。また、「これはあてはまらない」と、気づきやすい選択肢もあえて作っています。
先ほどの(問3)の選択肢もそうでしたね。
西谷先生 そうですね。日本の国全体で取り組んでいくことの中に、あえて豊洲の移転問題を入れました。豊洲は都民の中で扱うべきことだと気づけば答えられる問題です。問題は社会科の教員全員でつくっています。選択肢も答えやすさを考慮し、相談して決めています。
漢字指定の問題も教科書レベルにとどめている
毎年バランスよく出題されているなという印象です。
西谷先生 地歴公民のバランスが取れているかも、気にしているところです。
漢字指定している問題もありますが、比較的できていますか。
西谷先生 今回は、天下統一を成し遂げた人物は誰か。女王が治める国が現れた。これはなんという国か。これらの問題で漢字指定をしましたが、わりに書けていました。総理大臣の名前も、比較的できていました。
覚えなければ答えられない名前は極力出さないようにしています。歴史上の人名も、少なくとも教科書に出ているレベルを問うようにしています。キーワードもよく知られている人名、出来事などを採用し、それがヒントになるような問題づくりを意識しています。
光塩女子学院中高等科/図書室
インタビュー1/3