今月の額面広告に掲載されている問題はこれだ!
光塩女子学院中等科
2017年10月掲載
2017年 光塩女子学院中等科入試問題より
- 問題文のテキストを表示する
20世紀の世界は政治的・経済的な連帯を求め続けてきました。具体例の一つに欧州連合(おうしゅうれんごう)が挙げられますが、この壮大(そうだい)な試みは21世紀になって曲がり角にさしかかっています。
下線部について、次の問いに答えなさい。
(問1)2016年6月に、「欧州連合」に残留するか離脱(りだつ)するかを決める国民投票が行われた国の名前を答えなさい。
(問2)問1の投票結果は「離脱」が「残留」を上回りました。結果が明らかになった直後に、インターネット上には、投票を終えた有権者たちによる「“欧州連合”って何?」、「“欧州連合”を離脱するとどうなるの?」という書き込みがあふれたそうです。このことが示す、国民投票の課題を述べなさい。
中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには各中学の「こんなチカラを持った子どもを育てたい」というメッセージが込められています。
では、この光塩女子学院中等科の社会の入試問題には、どういうメッセージが込められていたのか、解答・解説と、日能研がこの問題を選んだ理由を見てみましょう。(出題意図とインタビューの公開日については更新情報をご確認ください。)
解答と解説
日能研による解答と解説
解答例
(問1)イギリス
(問2)
【例】国の将来を左右するようなテーマについて判断しなければならないときに、その内容をあまりよく理解せずに有権者が投票してしまうおそれがある。
解説
(問2)の設問文には、結果が明らかになった直後に「“欧州連合”って何?」「“欧州連合”を離脱するとどうなるの?」という書き込みがあふれたということが書かれており、この部分が手がかりになります。これらの書き込みからは、「よく理解しないまま投票した人が多くいた」可能性や、「投票には行っておらず、結果が出てはじめて興味をもった人がいた」可能性などを考えることができます。
- 日能研がこの問題を選んだ理由
2016年は、イギリスでEUに残留するか離脱するかを問う国民投票が行われたことが、世界的に話題となりました。この大きなニュースを受け、中学入試でも、イギリスのEU離脱に関する出題が数多くありました。イギリスという国名を問う、新首相であるメイ氏の名を問う、EUの加盟国数を問うなど、さまざまな切り口の問題がある中で、光塩女子学院中等科の問題は「自分のこと、自国(日本)のことにひきよせて考える」という、他にはないアプローチが目を引きました。
入試当日この問題に取り組んだ受験生は、(問1)で国名を答えた後、(問2)ではイギリスの具体例を通して、「国民投票」の課題を説明しました。そして、広告ではスペースの都合上載せることができませんでしたが、(問3)で、日本で国民投票を行う場合にテーマとなりうるのは何かを考えました。この一連の流れによって、受験生は、イギリスの国民投票を「遠くはなれたヨーロッパの国のできごと」としてとらえるのではなく、「同じような状況になったとき日本ではどうなるだろう?自分はどのような行動ができるだろうか?」を考えたのではないでしょうか。
「知識として知っているか」を問うことにとどまらず、受験生が「自分のこと」として考えるきっかけを提供しているという点、それが子どもたちの今後の学び、さらに日本や世界の未来につながっているという点から、日能研ではこの問題を□○シリーズに選ぶことにしました。