シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

横浜雙葉中学校

2017年10月掲載

横浜雙葉中学校の国語におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

3.出身が気になるのは最初だけ。中学生のうちに全員が横浜雙葉生になる。

インタビュー3/3

横浜雙葉小学校から入学する生徒は読書量が豊富

中学校から入学する生徒さんと、横浜雙葉小学校から入学する生徒さんとのかかわりについて教えてください。

奥村先生 横浜雙葉小からの生徒は、受験勉強がない分、読書量が多いです。書くことにも長けていて、内容にしても分量にしても、申し分ありません。そういう状況ではあるのですが、中学校から入学した生徒も、本に親しみ、読書量を積めるように指導しています。
本を読んだ感想を「読書カード」に書いてスクラップしていきます。最初は横浜雙葉小の生徒が、「月に数冊読むのは当たり前」というようなことを言うので、中学校から入学した生徒は驚いていますが、中1から少しずつ読み始めて、読むことが楽しくなった生徒は、中2から少し難しい本にも挑戦して、中3になると、読む本も読書カードの文章量も変わっていきます。ここにある読書ノートの持ち主も、「本が苦手」「文章を書くことが苦手」と言い続けていた生徒でした。

横浜雙葉中学校/校舎

横浜雙葉中学校/校舎

読書ノートは育ちの記録

奥村先生 読書ノートは生徒一人ひとりの育ちの記録。いつの間にか成長していきます。

本はどのように選ぶのですか。

奥村先生 こちらが指定したものの中から生徒が選びます。自由度の高い中で進めていくので、次第に横浜雙葉小の生徒か、受験で入ってきた生徒か、その区別がつかなくなります。
今見ていただいているノートは、高1が3年間かけてスクラップしてきたものですが、今年の中1は別の教員が少し形を変えて、スタンプラリー形式で行っています。本を読むと色を塗ることができるので楽しいようです。短編から始めるなどハードルを低くして取り組んでいるので、先生の言うことを聞いてやっているうちに、いつの間にか同じように育っていくと思います。

横浜雙葉中学校/聖堂

横浜雙葉中学校/聖堂

中学校時代に文学作品をじっくり味わってほしい

奥村先生 中3あたりから読書傾向が変わってくるので、「文学作品をじっくり読むなら中学時代よ」と言いました。その言葉を信じてくれて、その生徒は低学年ならではの本の読み方をしてきたと思います。定期的にチェックしていますが、(本を好きになれずに)読書カードが少ない生徒もいます。

藤原副校長 読書ノートは国語科の取り組みですが、すべての教科でこのような振り返りをしています。音楽も鑑賞したら書くというように、全教科の振り返りを各先生がまとめておいてくだされば、相当の量を書いていると思います。
B5版1枚くらいはあっという間に書きます。なにかあれば書くということが習慣づいています。

グループ学習や電子黒板を使っての発表に意欲的

藤原副校長 2020年の入試改革で記述力が求められると言われていますが、本校では書くことは日常茶飯事です。日直は学級日誌(B5の大学ノート)にすべての授業の要点を書きます。担任によっては、その日の感想や考えたことを「1ページは書きなさい」と言っています。年間3、4回は回ってきます。

奥村先生 それから、低学年の授業で始めているのが、小説の図式化です。高校生は論説文の構造図をささっと書きます。そこで、中学生にも挑戦してほしいと思い、小説を読んで構造図を書くという作業をグループ学習でさせています。生徒同士でああでもないこうでもないと言いながらやると、能力に関係なくみんなが参加できる授業になります。自分の意見がそこに入ると笑顔になります。電子黒板を使って発表することも楽しいようです。そのような授業を年に数回入れています。

横浜雙葉中学校/自習室

横浜雙葉中学校/自習室

2020大学入試改革に向けて高学年の内容を低学年へ

奥村先生 横浜雙葉小から入学した生徒は小学生時代に緻密な読解の授業を受けていますが、中学校から入学した生徒も同じ土俵に立つと、自分の意見をいくらでも言えます。その授業に他の学年の教員が入って、(生徒に)声をかけると参加意欲が高まり、よりよい授業ができています。
2020年大学入試改革に合わせて変えるというよりも、分析して読み解く力や表現力をより深く定着させるために、高校生がやっていたことを、中2あたりに前倒しにするなどマイナーチェンジをしています。

充実した小学校生活を送ってきてほしい

受験生にはどのような小学生生活を送ってきてほしいですか。

奥村先生 けんかをしてもいいので、しっかり友だちと向き合って、充実した小学校生活を送ってきてほしいですね。友だちとのつきあいの中で、こういうことをすると相手を傷つけるし自分も嫌な思いをするということを経験から学んできてほしいと思っています。
学習面では、論説文でキーワードは拾えても文脈が取れない、物語文で登場人物の感情がわからない。そういう状態では中学校に入ってから大変なので、受験勉強は大変だと思いますが、まずは運動会や合唱祭など小学校の行事にしっかり参加して、体験を積んできてほしいと思います。

藤原副校長 今しかできない経験をたくさんしてきてほしいですね。

奥村先生 充実とは汗をかくこと、毎日みんなで練習することだと思います。入学後に求められる能力も、要領よく乗り越えることではなく、多少遠回りになっても考え続ける、書き続ける姿勢なので、学校生活が国語力につながっていると考えて、しっかりと小学校生活を過ごしてきてください。

横浜雙葉中学校/校内

横浜雙葉中学校/校内

インタビュー3/3

横浜雙葉中学校
横浜雙葉中学校1872(明治5)年、創始者である幼きイエス会(旧サンモール修道会)のマザー・マチルドが来日、横浜で教育活動を開始した。1900年に横浜紅蘭女学校を開校。その後、51(昭和26)年に雙葉、58年に横浜雙葉と校名を変更して現在に至る。2000(平成12)年には創立100周年を迎えた。
「徳においては純真に、義務においては堅実に」を校訓に、一人ひとりが自分を積極的に表現し、他の人と心を開いてかかわり、能力や資質を磨いて社会に役立てようとする「開かれた人」の育成を心がける。そのために「開かれた学校」を目指し、21世紀をたくましく生きるための知性と精神を伸ばす教育が行われている。
横浜港を見下ろす中区山手町のなかでも、最も異国情緒あふれる一角に位置する。隣接の修道院跡地に、聖堂・視聴覚室などを備えた高校校舎と特別教室があるが、03年には図書館やITワークショップなど、最新の情報技術やグローバル教育に対応した新校舎が完成。
45分×7時間授業で、主要教科は、男子の難関進学校なみに内容が濃く、進度が速い。特に英語はテキストの『プログレス』を軸に、中1から少人数の週6時間の授業や、外国人教師による英会話の授業など、非常に意欲的。数学は中1から数量と図形に分ける。中3から英・数は習熟度別編成となる。2期制なので、1年間は42週と公立中学の3学期制・35週より多い。定期テストは年4回だが、「小テスト」は随時各教科で行い、進度が遅れぎみの生徒には指名による補習も行う。高2から文系・理系に分かれ、幅広い選択制で進路に柔軟に対応。毎年東大に合格者を出すほか、難関私大にも多数の合格者を出している。医療系への進学者が多い。中3~高2の希望者にフランス語講座がある。
学校週5日制。年間を通じて朝の祈りやさまざまなミサ、講演会などといった宗教行事も多い。文化祭をはじめ多くの活動が、運営される生徒会を中心に計画される。クラブ活動は、文化部が20、運動部5のほか、聖歌隊、老人ホームなどでボランティアを行うTHE EYESという団体がある。テニス部、新聞部は全国大会にも出場する実績を誇る。しつけに厳しいといわれるが、教師たちは服装や持ち物検査は行わず、生徒たちが自分でけじめをつけて行動するよう求める。制服はジャンパースカート。02年から夏の準制服が登場。ブラウスは白と青、スカートは紺とチェックの2タイプずつで、組み合わせ自在。中3から高2の希望者が韓国、シンガポール、マレーシア、アメリカ、オーストラリアなどを訪れ交流するプログラムが続けられている。