シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

横浜雙葉中学校

2017年10月掲載

横浜雙葉中学校の国語におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

2.横浜雙葉が目指している授業は、横浜雙葉が育てたい生徒像と重なる。

インタビュー2/3

AIは入学後もさまざまな教科で触れるテーマ

このようなテーマを貴校ではどのように扱っていますか。

奥村先生 国語科だけでなく、総合学習、社会科、LHR(ロングホームルーム)などで関連づけながら扱っています。国語科では中3で高1の教科書レベルの論説文を扱う時に出てきます。その際はグループワークを取り入れています。そして高1では、総合学習の夏の課題として5枚から10枚の小論文を課しています。そこで少なくとも社会、理科などの多教科の教員がかかわり、小論文のテーマをレクチャーしますので、このようなテーマに触れざるを得ません。また、高2以降は大学受験に向けての問題対応になりますので、論説文の授業では自ずと目にすることになります。

副校長/藤原 恵美先生

副校長/藤原 恵美先生

授業の探求も尽きない

奥村先生 高2のLHRでは、それぞれの教員が必要だと思う学者の方をお招きして講演を行っていただいています。過去には政治学者の藤原帰一さんや哲学者の内山節さんら、いろいろなジャンルの先生がいらっしゃいました。その講演を受けるために、事前授業を国語科などで行い、生徒に考えさせています。このように、国語科のカリキュラムだけでなく、いろいろな科目でアプローチしています。

そういうことは教員研修で話し合われるのですか

奥村先生 そうですね。方針について考えることもあれば、授業のやり方について、若手からベテランまでが、今、求められている授業を考え、学び合っています。

横浜雙葉中学校/校内

横浜雙葉中学校/校内

教材研究に力を尽くす

奥村先生 横浜雙葉が目指している授業は、横浜雙葉が育てたい生徒像と重なるところがあります。例えば、高2の修学旅行は「平和と巡礼」というテーマで行い、広島の原爆ドームや、キリスト教信者殉教の地である長崎の外海などを訪れます。現地に着くまでに国語科ができる平和教育、宗教教育とは何かを考えたとき、文科省の教科書だけでは不足するところがあります。そのために、中学1年次から成長に合わせて、戦争やキリスト教に関する作品などを指定教材として選定して、意識的に触れさせています。例えば、遠藤周作の『ヴェロニカ』や『沈黙』、『アンネの日記』などです。
教材研究も、国語科の教員全員で上記作品を扱った授業実践を行っていて、カトリック信者の教員もそうでない教員も互いの視点から話し合って、それを論文の共同執筆という形で残しています。

入試の素材選びにもこだわりがある

入試の素材もいつもいいですが、いつ、どのように選んでいるのですか。

藤原副校長 それは適当な時期に苦労されていますね。誰かが選ぶということではないと思います。アンテナを張って(中学入試に)ふさわしいものを選んでいると思います。

奥村先生 私たちが大切にしている教材は、すべて学校の方針にそっていますし、研修などで話したことは共有されているので、自ずと入試のために選ぶ作品も、どこかにカラーは出ると思います。
文章の品格や香りにこだわると、ある程度、年月が経ったものになってしまいます。それが悩ましいところです。

横浜雙葉中学校/校内

横浜雙葉中学校/校内

インタビュー2/3

横浜雙葉中学校
横浜雙葉中学校1872(明治5)年、創始者である幼きイエス会(旧サンモール修道会)のマザー・マチルドが来日、横浜で教育活動を開始した。1900年に横浜紅蘭女学校を開校。その後、51(昭和26)年に雙葉、58年に横浜雙葉と校名を変更して現在に至る。2000(平成12)年には創立100周年を迎えた。
「徳においては純真に、義務においては堅実に」を校訓に、一人ひとりが自分を積極的に表現し、他の人と心を開いてかかわり、能力や資質を磨いて社会に役立てようとする「開かれた人」の育成を心がける。そのために「開かれた学校」を目指し、21世紀をたくましく生きるための知性と精神を伸ばす教育が行われている。
横浜港を見下ろす中区山手町のなかでも、最も異国情緒あふれる一角に位置する。隣接の修道院跡地に、聖堂・視聴覚室などを備えた高校校舎と特別教室があるが、03年には図書館やITワークショップなど、最新の情報技術やグローバル教育に対応した新校舎が完成。
45分×7時間授業で、主要教科は、男子の難関進学校なみに内容が濃く、進度が速い。特に英語はテキストの『プログレス』を軸に、中1から少人数の週6時間の授業や、外国人教師による英会話の授業など、非常に意欲的。数学は中1から数量と図形に分ける。中3から英・数は習熟度別編成となる。2期制なので、1年間は42週と公立中学の3学期制・35週より多い。定期テストは年4回だが、「小テスト」は随時各教科で行い、進度が遅れぎみの生徒には指名による補習も行う。高2から文系・理系に分かれ、幅広い選択制で進路に柔軟に対応。毎年東大に合格者を出すほか、難関私大にも多数の合格者を出している。医療系への進学者が多い。中3~高2の希望者にフランス語講座がある。
学校週5日制。年間を通じて朝の祈りやさまざまなミサ、講演会などといった宗教行事も多い。文化祭をはじめ多くの活動が、運営される生徒会を中心に計画される。クラブ活動は、文化部が20、運動部5のほか、聖歌隊、老人ホームなどでボランティアを行うTHE EYESという団体がある。テニス部、新聞部は全国大会にも出場する実績を誇る。しつけに厳しいといわれるが、教師たちは服装や持ち物検査は行わず、生徒たちが自分でけじめをつけて行動するよう求める。制服はジャンパースカート。02年から夏の準制服が登場。ブラウスは白と青、スカートは紺とチェックの2タイプずつで、組み合わせ自在。中3から高2の希望者が韓国、シンガポール、マレーシア、アメリカ、オーストラリアなどを訪れ交流するプログラムが続けられている。