シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

今月の額面広告に掲載されている問題はこれだ!

横浜雙葉中学校

2017年10月掲載

横浜雙葉中学校【国語】

2017年 横浜雙葉中学校入試問題より

次の文章を読んで、後の問いに答えなさい。

(略)

数年前のことですが、NHKの『サイエンスZERO』という番組で、アンドロイド研究の第一人者である大阪大学の石黒浩(ひろし)さんと対談をしたことがあります。途中(とちゅう)までは意気投合してロボットの未来を語り合ったのですが、最後に石黒さんが「そのうち心が生じますから」と言い、私は「ロボットに心はない!」と反論し、大論争になったことがあります。おかげで、数か月後にもう一本、「石黒VS黒崎(くろさき)」の再対決番組を作ることになってしまいました。最終的には、「今後は、人間だけが特別だという人間中心主義は崩(くず)れていく」という点で合意しました。

アンドロイドは人間を理解するために大きな意味を持つ存在でした。ところが、人工知能の進展はめざましく、そろそろ私たち人間の手の届かないところまで進化していきそうです。となると、もはやアンドロイドは人間を理解する道具ではなくなって、人間の知能を大きく超えていく段階に入りつつあるのかもしれません。

「人間の直観力にはかなわないよ」から「だいぶ人間の能力に近づいたね」になり、そのうち、人間を置いてきぼりにして進化してしまい、「人工知能の考えていることは人間には理解できない」ということになるのかもしれない。ここ2、30年の間に事態は大きく変化してきているのです

(略)

(黒崎政男(くろさきまさお)『哲学者クロサキの哲学超(ちょう)入門』〈平凡社〉による)

(問)傍線部「ここ2、30年の間に事態は大きく変化してきているのです」とありますが、人工知能が身近になりつつある社会の中で、あなたはどのようなことを大切にしたいと思いますか。 あなたの考えとその理由を書きなさい。

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには各中学の「こんなチカラを持った子どもを育てたい」というメッセージが込められています。
では、この横浜雙葉中学校の国語の入試問題には、どういうメッセージが込められていたのか、解答・解説と、日能研がこの問題を選んだ理由を見てみましょう。(出題意図とインタビューの公開日については更新情報をご確認ください。)

解答と解説

日能研による解答と解説

解答例

【解答例1】
私は「ロボットも仲間だ」という考えを大切にしたいと思います。なぜなら、人間とロボットが互いの能力を生かして共存していくことが、地球の様々な問題を解決する原動力になると考えるからです。

【解答例2】
「人と人とのふれあい」をこれまで以上に大切にしていきたいと考える。人工知能が身近になっても、生身の人間とのふれあいはなくならないし、他者と感情をやりとりしていくことは自分の成長にもつながると思うからだ。

解説

「人工知能が身近になりつつある社会の中で」とあるので、それによって起こり得る変化(あるいは、それでも変わらないもの)を予測し、その上で自分が大切にしたいと思うことについて理由を添えて書きましょう。

日能研がこの問題を選んだ理由

この問題の文章には、今後生きていく上で人工知能の存在がますます大きくなっていくであろうことが書かれていました。つまり、今後こうした事態と向き合うことが避けられない中、受験生はこの問題に取り組むことで、自分にはどのような影響があるのかを考えたり、改めて自分自身が大切に考えることは何かを見つめ直したりするのではないかと考えました。そして、ここで子どもたちに問われたことは、テストの紙面上だけで完結するものではなく、今後も引き続き考えていく必要のあるテーマだと言えるでしょう。

さらに、この問題は、提示されているテーマを「自分ごと」としてとらえる力や、自分の考えを表現する力など、受験生のさまざまな力や個性を見ることができるのではないかという点にも魅力を感じました。このような理由から、日能研ではこの問題を□○シリーズに選ばせていただきました。

SDGs17のゴールとのつながりについて

  • 18 SUSTAINABLE DEVELOPMENT GOALS
  • 9 産業と技術革新の基盤をつくろう
  • 12 つくる責任 つかう責任

目標9「レジリエントなインフラを整備し、包摂的で持続可能な産業化を推進するとともに、イノベーションの拡大を図る」ために、人工知能(AI)という「技術革新」は、大いに役立つと期待されています。そして、この「技術革新」は、未来に向かってさらに加速度的に進化していくことでしょう。

一方で、AIの進化によって、産業が発達し、私たちの生活や社会が便利になっていく中で、失われたり、損なわれたりしていく“もの”や“こと”とは何なのでしょうか?AIの進化と“私”との関係において、目標12「持続可能な消費と生産のパターンを確保する」という目標を捉え直してみると、「本当の“豊かさ”“人間らしさ”とは何か?」という根源的な問いに向き合うことになるかもしれません。「つくる責任」「使う責任」の関係の中で、“私”は未来に向かってどのような役割を担っていくことができるのでしょうか?

私学とSDGsのつながりについて詳しくはこちらから

日能研は、SDGs をツールとして使い、私学の活動と入試問題に光を当てた冊子をつくりました。
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