シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

学習院女子中等科

2017年09月掲載

学習院女子中等科の社会におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

2.時事問題は話し合う中で考えを深めていく

インタビュー2/3

時事問題は「なぜ?」を繰り返し、考えを掘り下げる

先生 時事問題については、学校説明会で、「準備する(覚える)」というより、普段からご家庭で話題にしてくださいとお伝えしています。家庭で話し合ったことがまさに自由意見の文章記述ににじみ出ます。
内容はよくわからないながらも、「大人はなぜこんなに騒いでいるんだろう?」と疑問に思ったり、問題意識を持てるお子さんは、親御さんに「どうして?」と聞くと思います。そこで親子で会話する中で、お子さんの考えも深まっていくと思います。
ご家庭での話し合いは「どうして?」「なぜ?」をどんどん掘り下げることができます。すると、お子さんが「そうか!」と納得できるところまでたどり着けるのではないでしょうか。
ときどきでいいですから、時事問題を話題にできる雰囲気をつくっていただきたいですね。

廊下に設けられた個人用ロッカー

廊下に設けられた個人用ロッカー

時事問題について親子で“キャッチボール”しよう

先生 お子さんに「どうして?」と聞かれると、親御さんは「立派なことを言わなければ」と思われるかもしれませんが、専門家のような答え、中立的な意見を答えなくても構いません。「首相の靖国参拝はなぜダメなのか」と聞かれたら、「参拝はけしからん!」「いや、参拝してもいいと思うよ」と、親御さん自身の意見をお子さんに伝えましょう。支持する・支持しないだけでなく理由にも触れると、お子さんの印象に残りやすいと思います。
理由を考えるとき、その出来事について知りたくなると思います。考えを深掘りするにはある程度の知識が必要だとわかれば、暗記も少し前向きになれるのではないでしょうか。

「説明しなさい」の文章記述でいろいろな力を試す

文章記述問題は「説明しなさい」といっても、いろいろな力を試していますね。

先生 2017年度のA入試では、「大政奉還について、中心になった人物をあげてその内容を説明しなさい」「原爆ドームが『負の世界遺産』と呼ばれる理由を説明しなさい」といった問題を出しました。前者は知識を正確に身につけているか、後者は理由まで押さえているかを試す問題です。
文章記述は差がつきやすい問題です。文章で説明すると、知っているだけでなく、その背景や関連性まで理解しているかどうかがわかります。

中3道徳 学習院女子部の歴史

中3道徳 学習院女子部の歴史

一文を短くまとめて「意味のぶれ」をなくす

社会科の記述力として、小学生にどんな力を求めていらっしゃいますか。

先生 読み手に伝わる文章を書いてほしいですね。複数のとらえ方ができる、肯定にも否定にも受け取れる文章では自分の考えが相手に伝わりません。日本語は主語を省略してもある程度通じますが、省略すべきでない大事な主語を省くと分かりにくくなります。目的語も省略しないで書きましょう。
理想は、誰が読んでも結論が揺れない文章です。一文が長い文章は意味がぶれやすくなります。文章を書くのが得意でない人ほど、挿入句がやたら入っていたり、接続助詞を多用したり、長くなる傾向があります。
一文が短いとくどい印象も受けますが、確実に伝わる文章を優先して、普段から一文を短くまとめることを意識して書きましょう。

歴史は因果関係を、地理は知識の活用力を試す

歴史分野は例年できごとを古いものから年代順に並べ替える問題を出していますね。

先生 単純な暗記では出来事が「点」として散在したままですが、因果関係をつかむことができれば、歴史の流れを「線」でとらえられます。並べ替えの問題は、原因と結果を押さえて勉強しているかどうかがわかります。並べ替える内容は基礎的知識ですから、丁寧に学習していれば解けると思います。

地理分野は知識の活用力を試す問題を出していますね。

先生 主な農産物について、都道県別農業産出額とその内訳(%)のデータを示して、あてはまる都道県を選択肢群の中から選びます。受験生が苦手にしているタイプの問題です。
筆記試験後の面接で社会科の問題について聞くと、このタイプを出題した年度は「地理が難しかった」という回答が多いように思います。

中2歴史発表

中2歴史発表

用語記述は「漢字」で書くのが基本

地名や人名などの用語記述は、「ひらがなでもよい」という指定がなければ、漢字の間違いは不正解になりますよね。

先生 用語記述はひらがなではなく「基本は漢字」と思ってください。ふりがなや二重解答は受け付けません。
もちろん、小学生に無理な漢字は書かせません。特に地名は難しい漢字が多いので、2017年A入試では、「阿蘇山」や「球磨川」はひらがなでもよしとしました。

インタビュー2/3

学習院女子中等科
学習院女子中等科1847(弘化4)年、京都で開講された公家の学習所がその起源。1885(明治18)年に華族女学校開校、創立130年を越える。1906年学習院と合併し、学習院女学部となる。1918(大正7)年に学習院から女学部が分離して女子学習院となる。1947(昭和22)年、宮内省の所管を離れ、私学として現校名に。1999(平成11)年から高校募集停止。
重要文化財でもある鉄製の正門を入ると、四季折々の自然が望める6万6千m2の広大な敷地に女子中・高等科と女子大学の校舎がある。理科・芸術科・家庭科は科目ごとの専用教室があり、コンピュータ室や、2つの体育館、温水プール、テニスコートなど施設も充実。沼津游泳場など校外施設もある。官立から普通の私立として再発足してから70年を越える歴史をもつ。「広い視野、たくましい創造力、豊かな感受性」を教育目標とし、世界的視野に立って、広く国際社会に貢献できる積極的な女性の育成をめざす。同窓会には皇族妃殿下が名を連ねるが、校内は気取らず明るく活発な雰囲気。
実験や実習を多く取り入れた授業を展開。特に創造性に富む表現力、情報を的確に伝える論理的構成力を育てるため、国語の作文、理科や社会のレポート作成などに力を入れる。中1の国語(古文・表現)、中1の数学(数量)・中2の数学(図形)・高1の数学Ⅰ、中1の技術家庭では1クラスを2分割。中1・中2の保健体育(水泳)、中2の技術家庭、中3の社会(公民)では1クラスに2人の教員が入るT.T.の形をとっている。また、英語はすべての学年で少人数制の授業。帰国生を除き、中1・2では均等分割をして基礎力を強化し、中3からは習熟度別授業を行う。高等科ではドイツ語・フランス語も履修できる。高2で文系・理系のコース制を導入。高3では卒業レポートを作成。60%程度が学習院大学・学習院女子大学へ推薦入学するが、最近は国公立大や早慶上智大への合格者も伸びている。海外の大学への進学者も増えている。
校長を科長、ホームルーム担任を主管と呼び、あいさつは、常に「ごきげんよう」である。「ことば」の尊重とともに芸術教育も盛ん。道徳の時間には、正式な作法教育も取り入れている。林間・臨海学校、運動会、文化祭、学芸会、スキー教室など行事も多い。クラブは文化部20、運動部11、同好会3と活発。特にテニス、ブロックフレーテ・アンサンブルは好成績を収める。運動部1と文化部1、または文化部2の合計2つまで入部可。オーストラリアの姉妹校メソディスト・レディーズ・カレッジで英語を学ぶ研修旅行や中3・高2希望者対象のイギリス・イートン校でのサマースクールがある。