シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

今月の額面広告に掲載されている問題はこれだ!

学習院女子中等科

2017年09月掲載

学習院女子中等科【社会】

2017年 学習院女子中等科入試問題より

昨年の5月に開かれた伊勢志摩サミットの際に、オバマ前大統領が広島の平和記念公園を訪れたことが国内外で注目されました。
現職のアメリカの大統領としては初めてのことで、「核保有国は、勇気をもって恐怖の論理からのがれ、核兵器なき世界を追求しなければなりません」とスピーチを行いました。

(中略)

人類をほろぼしてしまう核兵器の廃絶(はいぜつ)を世界の人々が望んでいることは確かです。しかし、一部の国ではさまざまな目的で大量に保有されていることも現実です。「核なき世界」はどのようにすれば実現できるでしょうか。

(問)「核なき世界」を平和的に実現するためには、どのようにすればよいとあなたは考えますか。
あなたのアイディアを1つあげなさい。

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには各中学の「こんなチカラを持った子どもを育てたい」というメッセージが込められています。
では、この学習院女子中等科の社会の入試問題には、どういうメッセージが込められていたのか、解答・解説と、日能研がこの問題を選んだ理由を見てみましょう。(出題意図とインタビューの公開日については更新情報をご確認ください。)

解答と解説

日能研による解答と解説

解答例

広島や長崎にいる被爆者の体験談を記録し、それを複数の言語に訳してインターネットで配信する。

解説

「核なき世界」を平和的に実現するためにはどのようにすればよいかを考え、表現します。核なき世界に論理的につながる内容であればよく、解答が1つに決まらない問題です。自分なりのアイディアを、時間内に表現できるかがカギになります。また、平和的にということは、武力で脅して強制的に廃棄させる、経済制裁によって核開発をやめさせるなど、さらなる対立を生むようなアイディアは求められていないこともわかります。

日能研がこの問題を選んだ理由

2016年に現職大統領として初めて広島を訪れたオバマ大統領の演説を題材とする問題です。この問題には、考えるための手がかりが複数しめされています。1つめは、核問題には「恐怖の論理(抑止力の論理)」があり、核があることで平和が保たれていると考える人がいるということ。2つめは、核によって戦争を終わらせた歴史があることから、核保有を正しいとする意見があるということ。3つめは、自国の主張や利益を押し通すために核を保有し、それをアピールする国があるということ。こうした、核を正当化するさまざまな立場をしめすことで、受験生がアイディアをあげる手だすけをしてくれています。そういう意味で、これは「情報を読み取り、複数の手がかりをふまえて筋道立てて意見を組み立てる力を見る」問題だといえます。

ところで、「核なき世界」はどのようにすれば実現できるのか。この問いに対する、唯一の正しい答えなどないことは誰の目にも明らかです。そして、小学生に核問題の解決策を考えさせるのは無理なのではという意見もあるでしょう。もちろん、まだ12歳ですから、国際政治の専門家が考えるような解決策を提示することは無理でしょう。しかし、12歳は12歳なりの発想でよいから、世界の平和のために、どのような方法がとれるのかを考えてみてほしい、できることならば中学校に入ってからも考え続けてほしい、というのが学習院女子中等科の先生方のメッセージではないでしょうか。

複数の情報をもとに論理的に思考し、表現する力を問う問題であるとともに、未来に生きる子どもたちへのメッセージが明確であることから、日能研ではこの問題を□○シリーズに選ぶことに致しました。

SDGs17のゴールとのつながりについて

  • 18 SUSTAINABLE DEVELOPMENT GOALS
  • 16 平和と公正をすべての人に

2016年5月、オバマ大統領(当時)は、現職のアメリカ大統領として初めて被爆地・広島を訪問しました。オバマ氏は、平和記念公園で行われたスピーチの中で、核兵器が人類にもたらす脅威について語り、核兵器のない世界を実現するために、人類はその知恵を役立てるべきだと語りました。「核なき世界」の実現は、目標16「持続可能な開発に向けて平和で包摂的な社会を推進し、すべての人々に司法へのアクセスを提供するとともに、あらゆるレベルにおいて効果的で責任ある包摂的な制度を構築する」とつながっていると言えるでしょう。今、まさに「核なき世界」実現のために、私たち一人ひとりがどのように「知恵を役立て」ればいいかが問われています。

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日能研は、SDGs をツールとして使い、私学の活動と入試問題に光を当てた冊子をつくりました。
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