シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

渋谷教育学園渋谷中学校

2017年08月掲載

渋谷教育学園渋谷中学校の理科におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

2.入試問題の入口は広く、内容は深く

インタビュー2/3

文章記述は根拠を隠さず明示してこそ伝わる

理科の文章記述力として、受験生にはどのようなことを求めていますか。

田中先生 小学生の段階では書き手の意図が読み取れる文章であればいいと思っています。
主観で書いた文章は伝わらないことが多く、その典型が主語がない文章です。学校説明会では、自分が書いた文章を他者に読んでもらうことを勧めています。「わからない」と言われたら、なぜ伝わらなかったのか、どうすれば伝わるか自分なりに考えましょう。
根拠をきちんと説明することも重要です。「以心伝心」はありません。単純な文章記述ほど「当たり前だから」と根拠を省略して結論だけを書く傾向が見られます。この点は、小学生は練習しないと難しいかなと思います。

例えば、選択問題でなぜこの選択肢を選んだのか根拠を説明するようにすると、筋道を立てて説明する訓練になるかもしれません。

田中先生 授業でも、選択問題は生徒にその選択肢を選んだ理由を聞くようにしています。

渋谷教育学園渋谷中学校/校舎

渋谷教育学園渋谷中学校/校舎

タネ明かしはちょっとだけの方が好奇心を刺激する

問1・問2を含む生物分野の大問は、リード文でウミガメの生態だけでなく保護活動についても触れていて、受験生に考えさせる、興味・関心が広がる問題だと感じました。

田中先生 入試問題では自然界の不思議をちょっとだけ説明しています。そこで芽生えた好奇心を推進力にして、どんどん学び進んでくれたらうれしいですね。
授業でもそうですが、私は一から十まで説明しません。生徒が興味を引くような“エサ”を与えて、食いついてきたらその先にもっと“おいしいエサ”を示すようにしています。

渋谷教育学園渋谷中学校/理科実験室

渋谷教育学園渋谷中学校/理科実験室

保護活動はよいことばかりとは限らない

田中先生 子ガメの放流会は保護活動としてわかりやすく人気がありますが、実はよいことばかりではありません。私も知り合いのウミガメの研究者から聞いて知りましたが、そのことを子どもたちに少しでも伝えられたらと思いました。
保護活動はよかれと思ってやっていることですが、人間の“ひとりよがり”にならないように、生き物の生態をきちんと把握したうえで行わなければ真の保護につながりません。

身近な題材を取り上げて初見の内容で驚かせる

貴校の入試問題は、この問題のように、小学生にとって初見のデータを提示して興味を引く問題が多いように思います。

田中先生 題材は小学生にとって身近なもの、見聞きしたことがあるものを選んで取り組みやすくして、内容は、小学生が見聞きしたことがないものを取り上げるようにしています。
初見の事柄については、リード文でしっかり説明して必要な情報を提示します。リード文からくみ取った情報と、小学生が習う知識を組み合わせれば解けるような問題作りを心がけています。
大問の最後の問いは、作問者が一番考えてほしい問題です。そこに至るまでに段階を踏んで考えてもらおうとすると問題数が多くなってしまうのですが、最後まで解いたときに、「なるほど」と思ってもらえるような、おもいしろい問題作りを目指しています。

渋谷教育学園渋谷中学校/カメの飼育

渋谷教育学園渋谷中学校/カメの飼育

少し背伸びする文章に触れることで成長できる

リード文は読み応えがある内容です。

田中先生 小学生にとってはやや硬派な文章かもしれませんが、読んでわからない内容ではないと思います。少し背伸びした文章を読むことで多くのことを学んで成長できると思っています。
理科における読解力は文中にある情報をくみ取る力だと思います。理科のリード文は長めですが、きちんと読めば文中にヒントがあります。30分という短い試験時間ですが、きちんと読んでほしいですね。

インタビュー2/3

渋谷教育学園渋谷中学校
渋谷教育学園渋谷中学校地上9階・地下1階の校舎は、地域との調和と快適な環境をコンセプトとして設計されており、都市工学の先端技術が駆使されています。これからの新世代にふさわしい、充実した学校生活を提供されています。教育目標は、21世紀の国際社会で活躍できる人間を育成するため「自調自考」の力を伸ばすことを根幹に、国際人としての資質を養う、高い倫理感を育てる、という3つです。
学習面における「自調自考」を達成するために、シラバス(学習設計図)が活用されています。シラバスは、教科ごとに1年間で学習する内容と計画が細かく書かれたもので、家づくりにたとえるならば設計図にあたるものです。シラバスをもとに、生徒自身が「いま何を学んでいるのか」「いま学んでいることは何につながるのか」ということを常に確認し、自ら目標を設定することで学習効果が上がるように指導されます。「何を学び、学んでいることは何につながるのか、全体のどのあたりを勉強しているのか」を確認しながら、授業に目標を持ち積極的に参加して、毎日の学習に取り組むことができます。外国人教師による少人数英語教育が実践され、さらに、中学3年生から、希望者は英語以外にもうひとつの言語を学ぶチャンスがあります。ネイティブの教師と一緒に自分の世界を広げてみましょう。開講講座は、中国語、フランス語、ドイツ語、スペイン語です。海外研修は希望者を対象に、中学のオーストラリア研修、高校のアメリカ・イギリス・シンガポール・ベトナム研修があります。研修の目的は若者交流です。異文化理解や語学研修など、さまざまな経験を通して交流の輪が広がります。海外からの帰国生も多数在籍しており、留学生も受け入れています。
自分を律する心を養い、一人ひとりの人生をより豊かにし、人のために役に立ちたいと思う人間を育むため、生徒の発達段階に合わせたテーマで、6年間で30回にわたる「学園長講話」が行われています。