シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

聖光学院中学校

2017年07月掲載

聖光学院中学校の社会におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

3.なぜ、そうなったのかを、事実をもとに考える力をつけよう

インタビュー3/3

学外での武者修行を歓迎

聖光学院の特色を教えてください。

千綿先生 校長の受け売りですが、聖光はあまり学校に縛らない学校だと思います。例えば、ある生徒が「暗算選手権に出たいので、欠席します」と言いに来たら、個人的なことであっても公欠扱いにします。多くの学校は、中体連、高体連、高文連などから正式な書類が来ないと公欠にしないと思います。大会のバックボーンを見て、認めないケースも多々あると思いますが、本校は、本人の成長につながるものであれば、学外での武者修行を歓迎しています。ですから、留学を希望する生徒も少なくありません。

学校によっては、翌年、もとの学年に戻れないケースもあると思いますが、本校では本人の希望を聞いて、要望を受け入れます。もとの学年に戻ることもできるので、高2の秋から高3の夏までアメリカ留学し、帰ってきて、大学受験する生徒もいます。教員が制御できないくらい、いろいろなイベントが紹介されて、「それに出たいから部活を休む」と言っても、快く「行っておいで」という風土です。「練習をさぼっていいはずがない」という考え方はまったくないです。

聖光学院中学校 ルーフガーデン

聖光学院中学校 ルーフガーデン

生徒は主体的に進路を拓いている

一昔前は『面倒見のいい学校』と言われていましたが、これからは外へ出る力が肝心ということなのでしょうか。

千綿先生 東大合格者を増やしていた時期とは違います。生徒も教員も、そこまで東大にこだわりをもっていません。一橋大学に受かっても浪人する生徒がいます。東大にこだわっているのかというとそうではなくて、人生は長いし、東大に受かるかどうかを一度試してみたいというような、軽い気持ちで浪人するのです。翌年、東大ではなく、私大の理工学部などに入学したとしても、腐るどころか「縁がなかっただけ」と切り替えられる。それがいいとか、悪いとかではなくて、主体的に進路を拓く力はついていると思います。

多面的なものの見方を意識しよう

生徒さんに対して感じていらっしゃることがあれば教えてください。

千綿先生 入学する生徒は、とてつもなく理解力が高くて優秀だと感じています。しかし、優秀すぎる故に、自信が過剰気味で謙虚さのようなものを忘れ気味になっていることも時々あるようです。

入学をめざしている小学生には、どのような力をつけてきてほしいですか。

千綿先生 しっかり考え、一面的でなく、多面的なものの見方ができ、自分と違うものでも認め合うことの大切さを認識していてほしいと思います。

具体的に、どのように学習すればいいのでしょうか。

千綿先生 ただ覚えるのではなく、「覚えたことをどう使うのか」「なぜ覚えたのか」「大人はどう考えているのか」など、保護者の方や先生に質問をするなどして、学んだことをさらに深めてほしいと思います。また、普段から親子でさまざまな問題について話し合い、決めつけるのではなく、いろいろな立場にたって多面的なものの見方を意識してほしいと思います。

聖光学院中学校

聖光学院中学校

質問力をつけることが大切

千綿先生 個別相談会で聞かれたときには、「特に質問力をつけることが大切だ」とお話しています。学校や塾では、先生が困るくらい「なんで?」と聞いてほしいですし、ご家庭では、保護者の方々はお忙しいと思いますが、子どもの「なんで?」につきあってほしいとお願いしています。

たとえば、1600年に関ヶ原の戦い、1603年に江戸幕府を開く。それは知っていても、その間の1601年や1602年になにが起きたかを子どもたちに聞くと、困る子が多いのです。関ヶ原の戦いで徳川が勝って江戸幕府を開いた、というロジックで覚えているので、その間に豊臣と徳川との間でどのようなせめぎ合いがあったのか。諸大名はどのような動きをとっていたか。そういうことまではわかっていないのです。最近はたまたま大河ドラマが戦国時代を取り上げているので、そういうものを見て、興味関心を広げてもらうのもいいと思います。質問力を養う素材としては年表が一番いいと思っています。

聖光学院中学校

聖光学院中学校

歴史を素材に質問力の素地をつくろう

最初は、こちらから質問を投げかけて、答えを引き出すということでしょうか。

千綿先生 相手をするには準備をしておかなければいけないので、少し大変かもしれないですが……。そういうことを意識して繰り返していると、そのうち、他の教科でも質問できるようになるのではないかと思います。

授業でも、実践していらっしゃるのですか。

千綿先生 疑問がわきやすい素材をいくつか用意し、それを使って授業をしています。生徒があたりまえのように説明したときは、「本当にそれでいいのか」と聞くこともあります。そうすると気づきます。世の中がワンサイドに傾いていることほど素材になりやすいです。歴史も画一的な教え方が存在します。だからこそ、歴史は素材にしやすいのではないかと思うので、年表を使って、質問力の素地をつくっていただきたいと思います。

インタビュー3/3

聖光学院中学校
聖光学院中学校1958(昭和33)年、学校法人・聖マリア学園により設立。同学園は“生涯を青少年の教育に捧げる”ことを目的とした、カトリック・キリスト教教育修士会(1817年フランスに設立、現在本部はローマ)を基盤とする。同学園は世界各国に276の学校を設置・経営しており、静岡聖光学院は兄弟校だ。
「カトリック的世界観にのっとり、人類普遍の価値を尊重する人格の形成、あわせて、高尚かつ、有能なる社会の成員を育成する」ことを建学の精神とし、「人の役に立つ人間になれ」「紳士であれ」という姿勢を貫く。難関大への高い現役合格率は、学校のきめ細かい進学指導と生徒一人ひとりの自覚と自律による。教師と生徒は尊敬と信頼の絆によって結ばれていて、自由な雰囲気の学校である。
山手地区に連なる丘陵の一画、文教風致地区にあり、背後が根岸森林公園という抜群の環境。マルチメディア教室や階段教室のある校舎や、聖堂、ラ・ムネ・ホール(講堂)、ザビエルホール(多目的ホール)、食堂、グラウンド、体育館など施設は充実。20時まで使用できる高2・高3用の自習室もある。プールは屋外。猪苗代湖畔にキャンプ場「聖光ボーイランド」もある。
面倒見の良さは折り紙つき。英語は首都圏屈指のレベルで、中1は週7時間。中2・中3・高1の英会話の授業を1クラス2分割で実施。帰国生対象の英会話補習もあり、希望すれば一般生も受講できる。高2から文系・理系に分かれ、高3は演習中心。平常時(中1~中3まで指名制)、夏期(中1~高1は英・数・国中心で成績不振者の指名制、中2~高3は希望者対象で各教科)、冬期(高3のセンター試験対策)、特別(高校高学年の英・数ハイレベル特講)など、親身の補習で「予備校いらず」といわれる。東大・早慶上智大への現役合格率は首都圏トップクラス。
クラブ活動では、特にバスケットボールや吹奏楽部などが盛ん。カトリックの宗教行事が多く、週1回中1は聖書研究会に所属、入学・卒業の祝福ミサ、クリスマスなどがある。ほかの行事ではスキー教室、芸術鑑賞会、文化祭などがあるが、なかでも福島県猪苗代湖畔にある「聖光ボーイズランド」での夏期キャンプは、忘れられない思い出になるようだ。カナダ、ニュージーランド、イギリスなどでのホームステイも実施。また、豊かな感性を育むため、毎週土曜日には中2の選択芸術講座が開かれる。夏休みの数日を使って、体験学習重視の「聖光塾」(中1~高3、自由参加)も開講。ボランティア活動は日常的に行われている。