出題校にインタビュー!
聖光学院中学校
2017年07月掲載
聖光学院中学校の社会におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。
1.現代社会を学ぶ題材は、現代社会そのもの。教科書ではない。
インタビュー1/3
身近なこととしてとらえてほしかった
まずはこの問題の出題意図からお話いただけますか。
千綿先生 犯罪や刑罰を題材にした意図は、派手な時事問題ではなく、法論理をじっくり考えることができる話題であると思ったためです。学校生活と組み合わせた意図は、難しそうな事柄でも、たいがいは私たちの身のまわりの出来事に置き換えて考えることができます。その一例を示したかったためです。
例えば生徒が学校に禁止物を持ってきていて、没収したときに、うっかり返すことを忘れてしまう教員がいます。「これは憲法29条に違反しているのではないか」そんなふうに、教員にへりくつを言うためであってもかまいません。私が教えている公民を身近なものとして体得してほしいと思っています。そういう本校の生徒に対する思いを、本校を希望してくださる小学生にも聞いてみたいと思いました。このような問題を出題することにより、知識を身につける基礎力と、それをもとに考える応用力、の双方をはかれるのではないかと思い、出題しました。
公民科教諭/千綿 正洋先生
憲法は私たちの生活に不可分なもの
千綿先生 憲法は難しいことではなくて、私たちの生活に不可分なものです。昨今、「憲法が変わるのでは?」と言われています。これについては賛否両論ありますが、現在の憲法がどういうものなのかを知らなければ、賛成も反対もできません。変わったときに、「なぜ変わったのか」「どう変わったのか」も理解することができないと思いますので、そういうことも含めて、憲法を出題しています。
リード文に使ったのは、鐙麻樹さんという方のブログ記事です。本校はカトリックの学校なので、死刑制度などは宗教の時間で扱うことがあります。我々、公民の教員が授業の中で扱うこともあります。死刑問題は子どもたちにとって、自分の意見をもちやすい題材なので、受験生にもそういうものを通して、憲法を身近なこととして意識してもらえるのではないかと考えました。
憲法も学習してほしい
小学生が憲法を学ぶことはまずないですよね。
千綿先生 そうですね。学習するとしても9条、25条。そのほか14条が入るかどうか、という程度だと思います。憲法が103条まであることを知らないお子さんも当然いるでしょう。ですから、毎年、憲法のどこかしらを抜き出して出題しています。
今回、取り上げた37条第1項は、(穴埋め問題の)穴を開ける場所に迷ったのではありませんか。小学生が暗記をしているとは考えにくいので、前後の文脈から考えて、答えを導き出せそうなところを開けたのでしょうか。
千綿先生 そうですね。穴埋めの単語は難しくないものを選ぶようにしています。また、毎年出題することで、塾の先生が、「学習しておいたほうがいいよ」と言ってくださるのではないか、という期待も込めて出しています。
聖光学院中学校 職員室
入試問題は、社会科の総力を結集して作成
公民はもちろん、歴史も地理も、おそらくこういう題材で、生徒に問いかける授業を行っているのだろうなと想像できる入試問題ですよね。
千綿先生 社会科の教員が7名(校長・副校長を含めると9名)しかいないので、各自がもってきた問題をベースに全員で考えて入試問題をつくっています。ですから分野の壁なく、比較的思いは共有されていると思います。そういう意味では、社会科の総力を結集して入試問題をつくっているといえると思います。
素材はどのようにして探すのですか。
千綿先生 公民にも典型的な教材はありますが、生徒は教科書を読めば、おおよそのことは理解できます。ですから日常の「現代社会」の授業では、「現代社会」そのものを題材にしています。日々ブログやツイッターの記事など、素材になるようなものをあまねくチェックしていますので、入試問題の題材も、その中から小学生にも理解できるものを抽出するという感じです。
そのまま聞くのではなく、話題になっていることの裏側や、理屈を考えれば小学生でもわかることを、優しくひも解いて問いかけられるような素材を探しています。そして、小学生が一生懸命勉強してきた内容も混在させながら、自分たちの採点の能力とも相談しながら出題させていただいております。
正答率は高かった
この問題はよく出来ていましたか。
千綿先生 正式なパーセンテージは収集していないため不明ですが、採点の感触では、正答率は高かったと記憶しています。
受験生の解答の中には驚きがありますか。
千綿先生 本大設問は短答式のため、解答が印象に残るということは特段ありませんでした。ただ他の大設問の解答を拝見すると、受験生が必死に問題に取り組み、何とか合格したいという思いを感じることは多々あります。受験生がどのような思いを込めて解答を作成したのか、しっかり読み込んで採点しています。
記述問題は、まとめるのが難しいボリュームだと思います。
千綿先生 本校の記述問題は、比較的短文での解答を求めるものが主となっています。短文解答は要点を絞る必要があるため、100字を超える論術問題よりも難しいと思います。問題により字数が異なるのは、いろいろなことを考えて条件の設定をしているからです。教員が模範解答をいくつもつくって、適当な文字量を検討します。
聖光学院中学校
入試問題づくりは教員にとっても自己研鑽的な作業
空欄は少ないですか。
千綿先生 40分で解くには厳しい量なので、空欄は結構あります。特に地理が難しいと思います。以前は、地理、日本史、公民、という順番で出題していましたが、今は地理を最後にもっていき、日本史、公民、地理という順番で出題しています。
今後もこの形式は続くのでしょうか。
千綿先生 問題意識の中で、変えていくということはあると思います。以前は地理、歴史、公民、それ以外、という4つの大問で構成していましたが、ここ何年かは、4大問が崩れています。日本史と地理を融合させたり、公民と地理融合させたりしていますが、それは奇をてらうということではなく、よりよい問題をつくりたいという思いから試行錯誤している部分でもあります。
本校では、それぞれの科目に深みを持たせるために、教員の専門分野しか教えません。私のように法学部出身で公民を専門に教えている教員が、日本史や地理を教えることはないのです。つまり歴史の教員は、憲法の条文などはあまり知らないので、そういう観点から問題を批評してくれることが入試問題づくりでは役立ちます。公民の教員が当たり前だと思っていること、簡単だと思っていることに対して、「違うのではないか」と言われることもあります。そういうやりとりの中で、各教員の考え方や教え方を感じ取ることもあります。入試問題づくりは、私たち教員にとっても自己研鑽的な作業であるため、できるだけいい問題を出すことにこだわりをもっています。
選択肢にも意味を持たせている
以前と比べると、暗記中心の難問から、その場で考えさせる問題が増えているように思います。
千綿先生 そうですね。資料の中に、解答を導き出すヒントがある問題が増えています。選択肢をつくるときも、正解ではない選択肢にも、考えるヒントを持たせるなど、意味をもたせるように工夫しています。「正解はアだけど、イはこういうことなんだよ」と、塾の先生が生徒に解説できるような問題をつくりたいと思っています。入試問題は受験生の合否を分ける重要な意味を持つとともに、社会に対する学校の自己表現としての意味合いもあると考えています。
変わるきっかけがあったのですか。
千綿先生 採点をしたり、問題をつくったりしていく中で気づくことが多いです。例えば、我々がまったく意図していない答えを書く受験生もいるので、そのときの驚きをその場で共有して、「来年の入試まで、覚えておこう」という話をします。
文章選択肢が多いですが、こだわりがあるのでしょうか。
千綿先生 教員全員が大学受験指導をしているので、大学の入試問題に触発されるところもあります。例えば東大の入試問題を小学生でも解けるようなかたちにするとしたら、どんな問題になるだろうと考えます。
もうすぐなくなりますが、センター試験の問題はとても優れています。1年かけてつくっているので、予備校がつくる模試の問題とは比較になりません。それにも影響を受けているというのが、文章選択肢が増えている理由かもしれません。
聖光学院中学校
インタビュー1/3
聖光学院の設立母体であるキリスト教教育修士会(カトリックの男子修道会)は、1819年、ジャン・マリー・ローベル・ド・ラ・ムネ神父により、フランスに創設される。