シカクいアタマをマルくする。~未来へのチカラ~

中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには「こんなチカラを持った子どもを育てたい」という各中学のメッセージが込められています。
この「シカクいアタマをマルくする。」中学入試問題の新シリーズでは、そんな子どもたちの“未来へのチカラ”を問う入試問題から、その出題意図(アドミッション・ポリシー)と、子どもたちへのメッセージを探っていきたいと思います!

出題校にインタビュー!

昭和女子大学附属昭和中学校

2017年07月掲載

昭和女子大学附属昭和中学校の算数におけるアドミッション・ポリシーを聞いてみました。

2.実感を伴って数字の意味をとらえる

インタビュー2/3

途中式を書かせて問題を解く過程を重視

小西先生 本校の算数は解答用紙に途中式を書かせています。答えだけで判断せずに考える過程を大事にしているからです。計算間違いなどのうっかりミスで答えが間違っていても、考え方が合っていれば途中点をあげています。

今村先生 途中の考え方も見ているので、何とかして解こうとがんばって書いていることが伝わります。特に最近、そうした受験生が増えています。

小西先生 ただし、入学してからは答えが合っていても途中式に間違いがあれば正解にしません。計算途中のプラス・マイナスや不等号の向きが違っても答えが偶然合うことがありますが、これは本当にわかっているとはいえません。

数学科長/今村 量生先生

数学科長/今村 量生先生

現実にあり得る設定で数字を処理する力を試す

今村先生 この問題がそうですが、「割合」の問題はよく出題しています。割合は実生活でもよく出てくるので、小学生は取り組みやすいのではないかと思います。
そのためにも、問題の状況や答えは現実にあり得る数字を設定しています。問題のための問題にならないように、数字の感覚や処理する力を試す問題づくりを心がけています。

九九の「7の段」が苦手な子どもが増えている

及川先生 小学校で習う基礎知識や計算力も身につけておいてほしいので、その力を確認する問題も出題しています。

小西先生 私は今、中1を教えていますが、九九の計算、特に7の段が苦手な生徒が増えていると感じます。例えば「7×8=56」と即答できません。「しちいちがしち…」と最初から数えてようやく答えます。受験生の答案の途中式を見ると、九九の間違いがよく見られます。

及川先生 小数点のずれも多いですね。実生活であまり使わないのか、苦手にしている生徒が少なくありません。円周率3.14を使って計算する図形問題の途中式を見ると小数点がずれています。
計算間違いはもったいないので、繰り返し練習するようにしましょう。

昭和女子大学附属昭和中学校/掲示物

昭和女子大学附属昭和中学校/掲示物

実感が伴わないとあり得ない解答に気づかない

小西先生 生徒の解答を見ると、現実にはありえない数字なことがありますね。

及川先生 答えがとんでもない数字になっても間違いに気づかないのは、数字に実感が伴っていないからでしょう。
中3の関数の単元で「平均の速さ」という用語が出てきます。「考え方は時速や分速などと変わらない」と言うのですが、生徒の反応はいまひとつです。
例えば、「時速40km」とは、「1時間で、ここから40km先の場所に到着している」ということです。問題は解けるけれど、「時速40km」の意味をつかめていない生徒が増えていると感じます。
体育の授業の始めに、1000mを5分で走っています。これは平均すると200mを1分で走る計算になります。このペースで走れば「分速200m」を体感できます。授業ではできるだけ実感が伴うように、実生活と結びつけるように心がけています。
実感が伴えば数字のとらえ方も違ってきます。もし、答えが非現実的な数字になったら間違いに気づけると思います。

実際にやってみると「そうか!」とわかることがある

今村先生 数字の実感が伴っていない理由の1つは、子どもが外で遊ばなくなったことも関係あるのではないでしょうか。遊びの中に算数や数学が結構あります。折り紙のように平面から立体を作る経験が圧倒的に少なくなっています。

小西先生 中2のボストン研修で鶴を折ってみせると現地の人に大変喜ばれます。以前はみんな当たり前のように作れていましたが、最近の生徒を見ると折り紙で遊んだ経験が乏しいように感じます。

及川先生 小学校の授業で「三角形の内角の和は180度」を習ったとき、実際に紙にかいた三角形の3つの角を切って並べて180度になることを、授業で見せられた生徒はとても少ないですね。実感が伴う経験があると、「そういうことか」と理解の助けになると思います。

立方体の展開図など、見た目でわかることがたくさんあります。例えば1ℓがどれくらいの体積か、実際に1辺10cmの立方体を作ると体積の感覚がつかめると思います。

昭和女子大学附属昭和中学校/展示物

昭和女子大学附属昭和中学校/展示物

インタビュー2/3

昭和女子大学附属昭和中学校
昭和女子大学附属昭和中学校1920(大正9)年に人見圓吉が創設した、日本女子高等学院が前身。建学の精神である「世の光となろう」のもと、「清き気品、篤き至誠、高き識見」の言葉を掲げ、人格と能力を兼ね備えた、社会に貢献する人材の育成をめざしています。
都心に位置しながら、豊かな緑に恵まれた広々とした構内には、式典・講演会のみならず、外部の利用からも高い評価を得ている人見記念講堂、人工芝グラウンド、可動式スタンドを備えた新体育館、年間を通して利用できる温水プール、54万冊もの蔵書を有する大学図書館、日本文化の授業や音楽・国語の授業で使用される茶室があります。
昭和女子独自の中高一貫積み上げ教育を実践し、高2年で高校課程を修了。その後は、高校に籍を置いて併設大学で学ぶ「五修生制度」や、併設大学への被推薦権を得たまま他大学受験も可。併設大学への内部進学率は低下していて、2016年は30%でした。
週6日制で授業時間を確保し、多様な進路に対応できるカリキュラム”SHOWA NEXT”を展開。朝読書、3~4分間のスピーチを行う「感話」、個人研究の「私の研究」、クラス研究の「昭和祭研究」があります。また、中学校の生徒全員が3年間にわたって行う「ザ・ボストンミッション」は、中学1年~2年で準備研究、中学2年の終わりにアメリカキャンパス「昭和ボストン」で12日間の海外研修を経験。帰国後、その成果を英語で発表します。アメリカの歴史や文化を学びながら、現地の生徒とも交流し、国際感覚や英語運用能力を養っていきます。さらに、キャンパス内にあるブリティッシュ・スクールとの交流もあり、文化の違いを体験しながら、コミュニケーション力や協調性を養っていきます。
「ユネスコスクールプログラム」では、思考力・応用力・表現力を磨く取り組みが行われています。高校3年では、第2外国語(6カ国語)を選択することができます。
上級生と下級生が一緒に清掃や作業を行うことで、思いやりや協調性を育てる「朋友班活動」、企画から運営まですべて生徒たち自身で行う「感謝音楽祭」、中学1年~高校2年生が学年ごとに学校所有の宿泊施設で3泊4日の共同生活を送る「学寮研修」など、昭和ならではの独自の取り組みがあります。
木曜日の必修クラブのほかに、課外クラブ活動もあり、放送部が全国大会、水泳、書道、陸上部なども大活躍。珍しいドッジボールもあります。