今月の額面広告に掲載されている問題はこれだ!
昭和女子大学附属昭和中学校
2017年07月掲載
2017年 昭和女子大学附属昭和中学校入試問題より
- 問題文のテキストを表示する
次の表は、ある週の学校の図書室の利用者数(人)をまとめたものです。
この表について、あとの問いに答えなさい。
中休み(20分) | 昼休み(40分) | 放課後(1.5時間) | |
---|---|---|---|
月曜日 | 3 | 32 | 30 |
火曜日 | 9 | 66 | 37 |
水曜日 | 2 | 30 | 45 |
木曜日 | 3 | 40 | 16 |
金曜日 | 1 | 24 | 40 |
(問)火曜日について、昭子さんは中休みの方が放課後より混んでいると考えましたが、和子さんはそうとは言い切れないと考えました。
あなたはどちらの考えに賛成ですか。
その理由も答えなさい。
中学入試問題は、子どもたちの“未来へ学び進むチカラ”を試しています。
そこには各中学の「こんなチカラを持った子どもを育てたい」というメッセージが込められています。
では、この昭和女子大学附属昭和中学校の算数の入試問題には、どういうメッセージが込められていたのか、解答・解説と、日能研がこの問題を選んだ理由を見てみましょう。(出題意図とインタビューの公開日については更新情報をご確認ください。)
解答と解説
日能研による解答と解説
解答例
【昭子さんの考えに賛成】
1.5時間(=90分)あたりの利用者数にそろえて比べると、中休みは \(9 \times \frac{90}{20} = 40.5\)(人)となり、放課後の37人より多いから。
【和子さんの考えに賛成】
計算上は昭子さんの言う通りだが、現実的に考えると9人全員が中休みの20分間ずっと図書館を利用していたとは限らないから。
解説
昭子さんは、「時間当たりの人数」に着目していると考えられます。解答例のように90分あたりで考えることもできますし、次のように1分あたりで考えることもできます。
$$中休み・・・ 9 \div 20 = \frac{9}{20} = \frac{81}{180}(人/分)$$
$$放課後・・・ 37 \div 90 = \frac{37}{90} = \frac{74}{180}(人/分)$$
以上より、中休みの方が放課後より混んでいると考えられます。
一方、和子さんは、「個々の生徒の動き」に着目していると考えられます。計算で求められるのは「1分あたり」などにならした数値であって、図書室が一定の時間、均等に利用されたと“仮定”したときの数値です。しかし、実際は生徒1人ひとりの滞在時間も違うし、図書室に入退室する時刻も違うでしょう。ですから、和子さんは数値だけを比べても、中休みの方が混んでいる「とは言い切れない」と考えた、といえます。
- 日能研がこの問題を選んだ理由
「絶対数で比較するのか、割合で比較するのか。」
この2つの切り口からの説明を想定した、比較の視点に関する出題は、これまでにも目にする機会はありました。しかし、この問題では、2つの切り口に時間的・空間的な制約が“明示せずに”加えられています。この条件設定の工夫により、受験生は自らの過去の体験などをもとにして、自然に考えを深められます。おそらく、算数の問題として数値による比較をするだけではなく、「図書室にはずっといるのか」とか、「混んでいるとはどのような状態なのか」などと、現実の場面を想像しながら考えることにもなるでしょう。
「学校や塾で学んでいることや学んできたことを、教室での学びに留めずに日常と結び付けて使ってほしい。」
出題された先生のそんな意図を感じます。そして、その意図は、子どもたちに物事を体験的に、自分ごととして学べるようになることを目指す日能研の考えと通じるのではないかと思えます。このような理由から、日能研ではこの問題を□○シリーズに選ぶことに致しました。